シャーウ
あのときすごく必死に謝ってきたよね。おもしろかったなぁ。
シャーウは戦っている間何か考えていたようで、突然昔のことを言う。
テヘル
テメェ…マジでどんだけ神経逆撫でしたら気が済むんだよ!!
テヘル
アイツは俺の…唯一無二の存在なんだ!
シャーウ
…唯一無二なんてすごいねぇ。僕には使い捨てのゴミしかないのに!
テヘル
ミュールたちのことかよ?そんなふうにしか考えられねえなんて可哀想なやつだな
シャーウ
…ハッ、そういうところ…本当に気持ちが悪い
シャーウ
お前は愚かすぎるんだよ、見ててイライラする
テヘル
…見知ったやつに、そんなふうに面と向かって悪口言われたのは初めてだ
シャーウ
そう。おめでとう。
シャーウ
僕はあの日変わったんだ。僕の心の底にある不快な感じは、おかしいことなんかじゃない
シャーウ
それでいいんだ。情なんて捨ててしまえば!!みんなを…ただ、不幸にしたい!
テヘル
…証拠は────何で消えたんだ?
シャーウ
国。
シャーウ
国が消したに決まってんだろ。馬鹿なの?だからviperに入った
シャーウ
君の罪を全て消すから、殺しをしろ、なんて言われてね。
シャーウ
つか…君は人の気持ちが分かるようで、何1つ分かってなんかない
シャーウ
恵まれた対人スキルとその環境に"生かされている"だけ。
シャーウ
そうやってただ"運が良かった"だけで全部手に入れて
シャーウ
毎日毎日幸せそうに、皆に慈悲を与える
シャーウ
純粋無垢できれいな心…?ゔ───ん…ほんといいよね、唆る
テヘル
…?どういう、ことだよ?褒めてんじゃん
シャーウ
…そうかもね
テヘル
(運がいい…か)
テヘル
(まあ…そうじゃないとは言い切れないし、実際そういう部分もある)
テヘル
(別に…ムカつくようなこと、何も言われてねえ)
テヘル
(コイツは何が言いたいんだ?)
シャーウ
だから…汚したくなるんだよ。
テヘル
…っ、?
テヘルはシャーウのその言葉に、得体の知れない不気味さを感じる
シャーウ
君の苦労する顔。必死な顔。絶望する姿。
シャーウ
それが見たくて…アイザックを、殺そうとした。
テヘル
………そうかよ。
シャーウ
人を殺めることは、何も苦しいことでも楽しいことでもなんでもないけど
シャーウ
今はもう、殺しをせずにはいられない
シャーウ
人が不幸になる瞬間が…この世で最も美しい
シャーウ
そして何かの薬のように…僕の心の渇きはまた殺しを求めるんだ
シャーウ
だから僕は、殺しという"作業"をする。なーんも知らないバカのアホ面拝むためだけにね
シャーウ
僕と君との違いは、生まれた環境だけでしょ?なのに…
シャーウ
君は心から幸せを感じ、僕は人の好意を受け入れられない
シャーウ
こんなのはおかしいね
テヘル
…そっか。
シャーウはその意図が分からず、咄嗟にテヘルに向かって銃を撃った
シャーウ
もう、最後の手段だ
シャーウ
お前がそうやって、どうしても光の当たる道を歩むのなら
シャーウ
僕はそんなお前の未来を…奪う。
テヘル
お前の助けを求める手段が…それだったんだな
シャーウ
あ?
テヘル
不幸になってほしかった
テヘル
同じ気持ちになってほしかった
テヘル
…そうやって共感者を求めたんだろ?
シャーウ
いらないんだもう!!言葉は!!!!
シャーウ
…人に教えてる気になってんなよ
シャーウ
お前はそんなふうに簡単に人を救おうとして…そして
シャーウ
そのあとの責任は取らないんだろ
シャーウ
知ってるんだ。ライトフロンで暮らす人々は確かに幸せだったけど───
シャーウ
テヘル、お前は助けた人間のことなんてもう忘れてるでしょ
テヘル
忘れてない。
テヘル
お前は知んないかもしれねえけど、俺はいつも
テヘル
ライトフロンを見回って、ばあちゃんに話を聞いたり
テヘル
お兄さんに街の相談をされたり
テヘル
…悩んで、生きてきた!全部さらっとこなせたわけじゃない!
テヘル
今だって俺は!
テヘルは素早くシャーウの手の甲を踵で蹴り、銃を落とす
テヘル
まだお前を視てる!!!
シャーウ
ほんっとに…クソ頭が悪い低脳だな…
シャーウ
甘いんだよお前は。僕を生かして、僕が次に誰かを殺したらどうする?
シャーウ
後のリスクを考えられてない!結局ただビビってるだけ!
シャーウ
人がみんな…簡単に変わるわけじゃない
シャーウ
だいたい…犯罪者をも救うって、被害者の気持ちは捨てるのかよ、お前は
テヘル
…お前───
と、テヘルは唐突に短剣を掴み、シャーウの腕に突き刺した
テヘル
どっから勘違いしてんだ?
シャーウ
!?
テヘル
誰がテメェを救うなんて言ったよ
テヘル
はは…っ
テヘル
めでてえやつ!!はははっ!ははっ!!!
テヘル
そりゃ…お前がどうあったって俺はお前を忘れないし
テヘル
ライトフロンのやつらだって、今まで出会った旅のやつらだって…
テヘル
俺は誰も、忘れねえよ?
テヘル
最期まで──視る。途中で半端に捨てたりしない。
テヘル
でもさぁ…ふっ
テヘル
アイクどころか俺の仲間みんなに手を出して…
テヘル
友達だったアイツらまで巻き込んで
テヘル
ミュールを…俺の仲間を、侮辱した
そしてもう一本短剣を取り、スーッとシャーウに沿わせる
シャーウ
っ、っ!
シャーウが咄嗟に後ずさると、テヘルはシャーウを睨み、口端を吊り上げる
テヘル
俺がお前を視るのはもう、お前のためなんかじゃねーよバァカ
テヘル
お前みたいな"悪いお兄さん"には…お仕置きしなくちゃなんないだろ?
シャーウ
なっ…!お前は優しいくていいやつ、なんじゃ────
テヘル
人はよくそう言うよ、俺を…優しいって?
テヘル
それは…ソイツにとって、だろ?
テヘル
俺のこれは優しさなんかじゃない
テヘル
全部…自分がそうしたいからなんだよ!!
テヘル
俺は今や…街だけじゃねえ、国を変えようとしてんだぜ?
テヘル
お前のことは…強制的にでも変えてみせるよ
テヘル
お前の言う"バカなやつら"が…毎日バカやって笑ってられる
テヘル
そんな世の中以外は認めねえって言ってんだ!!