な、なんで、一ノ瀬先輩が学園に!?
瑞樹
彼方
彼方
やっぱり、生徒会の人達が言ってた 通りだったのかな……
冬真
冬真
冬真
ふと、先輩の違和感に気づく
いつもの黒髪のはずなのに、何故か、 水色の髪の毛のようなものが 先輩の制服に付いていた
彼方
ボクに言われて気づいたのか、 不思議そうな顔をした一ノ瀬先輩
彼方
彼方
冬真
水色髪と言ったら、 思い浮かぶのは空喰姉弟だけ
生徒会長の方は、普段は出歩かない から、すれ違うことはまずないはず
だとしたら、空喰カナタさんの方?
それなら、すれ違っていても おかしくはない
……でも、もし一ノ瀬先輩が、 空喰カナタさんなんだとしたら……
彼方
付いていた髪の毛を手で払って、 歩き出した一ノ瀬先輩
冬真
ドタドタドタッ
突然、背後から 走っているような足音がする
彼方
あっ、一ノ瀬先輩にぶつかった……!
生徒
それだけ言い残して、 去って行った男子生徒
一ノ瀬先輩は、ぶつかられてその場で 尻餅をついてしまっていた
冬真
冬真
彼方
当の本人は気づいていないのか、 驚いているボクらを見て戸惑っている
翔太
彼方
転んだ拍子に取れたのか、 床には黒髪のウィッグが落ちていた
そして……
見覚えのある、 一ノ瀬先輩の水色髪
彼方?
長い前髪が視界に映ったらしく、 先輩の表情が固まった
彼方?
本人も分かっていない……?
彼方?
彼方?
冬真
混乱していたと思ったら、 突然立ち上がって、廊下の先へ 走って行ってしまった
瑞樹
〜彼方 side〜
彼方?
自分でも訳の分からないまま、 得体の知れないナニカから 逃げるように、ひたすら廊下を走る
視界に映った、あの水色の髪
俺の髪色は黒のはず。 色なんてないはずなんだ
彼方?
彼方?
体力がなくなってきて、 その場にへたり込む
おかしい、おかしい、おかしい
俺は『一ノ瀬彼方』で、 誕生日は11月3日、歳は『17』、 百花王学園の2年華組の生徒で……
とにかく『自分』に関することを 思い出そうとして、必死に脳内で 思考を巡らせる
同じクラスの瑞樹と、 専属家畜になった冬真と、 その友達の翔太と……
愛華凛
彼方?
突然頭上から降ってきた、 生徒会長の……“姉”の声
見上げると、悠々とした笑みを保った まま、蹲っている俺を見下ろしていた
愛華凛
彼方?
……声が、出ない
冬真
瑞樹
背後から、激しい足音と共に、 冬真達の声が聞こえて来た
翔太
愛華凛
愛華凛
それから、俺の目線までしゃがんで、 行こうと促される
彼方?
体が無意識に動いて、立ち上がった
冬真
それから、一歩、また一歩、 姉のいる方へ歩いて行く
冬真
彼方?
冬真に名前を呼ばれて、はっとした
俺は今、何を……?
愛華凛
彼方?
今度は会長に呼ばれて、 また意識がおかしくなる
冬真
右腕を後ろから掴まれて、 それ以上前に進めなくなった
冬真
ずっと名前を呼ばれ続けて、 段々と意識が戻ってくる
彼方?
やっとのことで出せた声も、 しっかりと言葉になっていない
冬真
縋り付くように、冬真が俺の腕を 両手で強く掴んできた
愛華凛
愛華凛
捨て台詞の様にそう言って、 会長が去ろうとする
彼方?
彼方?
愛華凛
俺がそう呼ぶと、 一瞬だけ歩みを止めた会長
けどまた歩き出して、 早々と去ってしまった
翔太
瑞樹
その直後、翔太と瑞樹も 俺のそばに来る
彼方?
途切れる意識の中、必死に伸ばした 左手は、虚空を掴んだまま降ろされた
その勢いのままに、自分の身体が 前に傾き始める
自分が誰なのかも分からないまま、 周りの声に身を委ねて──
意識が、途絶えた
そよよ
そよよ
そよよ
そよよ
そよよ
そよよ
そよよ
そよよ
そよよ
そよよ
そよよ
コメント
5件
うわぁぁぁぁぁぁぁぁ! めちゃくちゃ面白い展開! そよよさん天才!? そらるさあああぁぁぁん…! 生徒会長…そらるさんのことを なんか…操ってる……?? 黒髪のそらるさんもかっこよかったけど 水色髪のそらるさんもかっこいい〜! 続き楽しみにしてます!