類
…好きだ、司くん
司
…へっ?
司
お、オレのこと…?
類
ああ
司
…類の気持ちは嬉しいよ
司
…けど、すまん
類
…分かった、ありがとう
類
僕の方こそ、いきなりすまなかったね
司
い、いや…
司
オレも、ごめん
司
少し、驚いてしまって…
類
…ううん、大丈夫だよ
類
…でも、ひとつお願いしたいんだ
司
お願い?
類
…これからも、今まで通り仲良くしてくれるかい?
司
…もちろんだ
類
うん、ありがとう
司
…
司
ごめんな、類
類
もういいんだよ(笑)
類
けど、ありがとう
数日後
司
…類ー?ちょっと遅くないか?
類
――あ…司くん…!!
――ブーッ!
僕より先に目の前を歩いていた司くんは、振り向く暇もなく
大きなクラクションと共に大型トラックに跳ねられた
通行人
オイ、人が倒れてるぞ!!
通行人
えっ、何?事故?
通行人
早く!救急車だ!!
通行人
ひいた車はどこなんだ!?
通行人
ねぇひき逃げじゃないの?
類
あ…
類
つ、司くん…
類
え、えっ…?
通行人
そこの君、大丈夫か!?
類
え…
類
僕…
通行人
後ろ歩いてただろ?怪我は?
類
…前を歩いていた彼が、僕の分も…全部…
通行人
知り合いなのか!?
類
…はい
通行人
…もう救急車を呼んであるから、大丈夫だよ
類
…はい
通行人
君も念の為、病院に行ってきなさい
類
…僕は、大丈夫なんです
類
けど…けど彼が…
類
息、してますか…??
類
…生きて、いますよね?
通行人
…
通行人
俺には分からないよ
通行人
…けど、君があの子の友達なら
通行人
信じてあげて
類
…!
類
…ごめんなさい
類
こんなこと…
類
どうしようもないです、本当に…
類
今すぐにでも駆け寄って、救急車が来るまでそばにいてあげたい…
類
…けど、足が動かないんです
類
震えて、動かなくて…そばにすら行ってやれない
通行人
…当たり前だよ、普通でいられる方がすごいんだ
通行人
…それに、きっと君の友達は分かってくれているよ
通行人
って、初対面の俺に言われる筋合いなんかないよな
通行人
勝手なこと、ごめんな
類
…いえ
類
……ありがとうございます
事故から数週間後
ガラッ
類
司くん
司
!
司
類!
司
来てくれたのか!?
類
ああ、もちろんさ
今の司くんは、記憶を失っている
覚えているのは、 自分の名前と家族のことだけ
…僕のフラれた告白も、 今の司くんは何も覚えていないんだ
類
(…僕は、君が言ってくれた素敵な人間なんかじゃないんだ)
類
(…そんな人間とは、ほど離れたひどくて、どうしようもない人間だ)
司
類?どうかしたのか?
類
えっ?ああ、いや…
類
なんでもないよ、大丈夫
類
それより司くん、体の調子は?
司
うーん…ふつう、かな
類
良くなっていなくとも、悪化していないのなら何よりだ
司
類はオレが、早く良くなって欲しいと思ってる?
類
もちろんだよ…!
類
…あの日、君が事故にあったのは僕のせいでもあるし
司
へっ?
類
ううん、なんでもないんだ…!
そうだ、僕があの日、君と出かけたいだなんて言わなければ
類
(言わなければ…司くんはこんなことに…)
司
類、学校行ってきたんだろ!どうだったんだ?
類
ああ、良かったよ
うそ
司
ほんとか!?よく分からないが…類が楽しいと、オレも嬉しい!
司
良かったよ!
類
もう…本当に君って人は(笑)
うそだよ
君のいない学校も、帰り道も、休日も、ステージだって
君が居ないと、何もかもが霞んで見える
司
そういえば類はショーをやっているのだろう!?
司
オレもショーは大好きなんだ!
司
幼い頃に観てから…好きになって、憧れてたんだ
類
…そうなんだね
ここで君は、今は僕たちの座長をしてステージに立ってショーをしているのだよ
って…そんなことを言ってみたら司くん、一体どんな反応をするのだろう
類
今度、ミュージカルのDVDを持ってきてあげようか?
司
えっ…いいのか!?
類
ああ、もちろんだよ
類
君が好きそうなものを、いくつかね
司
とっても楽しみだ…!!
司
類はオレのこと、なんでも知ってくれているのだな!
類
…!
類
…ううん、知らない事の方が多いよ、僕は
司
?
司
そうなのか?
類
ああ
類
…そうだ
類
司くん、退院出来たら僕たちのショーを観に来ないかい?
司
えっ!?いいのか!?
類
もちろんだとも
類
それに、君に観て欲しいんだ
司
ああ!観たい!オレも類と、えむや寧々たちのショーを観てみたい!
類
フフ、君が観に来てくれるとなると、きっと寧々たちも喜ぶ
司
あははっ、そうか?
司
けど…そうなら早く退院しないとなっ!
司
類!オレ、早く良くなるから!
類
ああ、応援してるからね
司
ありがとう!類に応援して貰えると元気が出るな
司
嬉しいよ!
類
…ありがとう
君の愛おしくてまばゆい笑顔
そんな君の笑顔を守れなかった僕が、 このまま君のとなりで…
君のとなりで君を、 支えてやってもいいのだろうか
類
…ごめんね司くん
類
僕はそろそろ帰るよ
司
…分かった
司
来てくれてありがとう、類!
類
うん、また来るから
司
…うん、待ってるな
逃げるように病室を出ていった僕には
やっぱり君の、隣にいてやれる資格なんてないのかもしれない
類
(…でももう、2度と君に辛い思いなんてさせないから)







