それからの数週間は、あっという間だった。
咲は大学の入学準備に追われながら、 哲汰は、事務所のレッスンや撮影で 忙しくしながら、引越しをした。
引っ越し初日。 まだ段ボールが積みあがる部屋の真ん中で、 咲と哲汰は床に座って、 カップラーメンをすすった。
哲汰
これが、新生活最初の
晩ごはんかぁ
晩ごはんかぁ
咲
いいじゃん、最高だよ。
……私さ、すごく今、
幸せかも、
……私さ、すごく今、
幸せかも、
哲汰
“かも”じゃなくて、
幸せって言ってよ笑
幸せって言ってよ笑
咲
……うん、幸せ
そう答えた咲の横で、哲汰はにこっと笑いながら肩を寄せた。
哲汰
これから、
きっといろんなことあるよ。
喧嘩もするかもしれない。
すれ違うことも。でも、
咲ちゃんとなら、
大丈夫って思える
きっといろんなことあるよ。
喧嘩もするかもしれない。
すれ違うことも。でも、
咲ちゃんとなら、
大丈夫って思える
咲
私も。……一緒なら、
怖くないって思えるよ
怖くないって思えるよ
その夜、 ふたりはベッドの中で、 小さく灯った常夜灯の下、 手をつないだまま眠りについた。
静かな呼吸が重なって、 部屋の中には安心とぬくもりが満ちていた。
始まったばかりのふたりの同棲生活。 そこにはまだ不慣れなこともたくさんあるけど、 “ただいま”と“おかえり”を交わせる日々が あるだけで、世界は少しだけ優しく見えた。







