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nagA

師匠は大丈夫かなぁ…

hiuchi

大丈夫でしょ

nagA

なんでそう言い切れるんだよ

hiuchi

紫雲は無謀なことはしない

hiuchi

今回だって予測していたことの一つだ

hiuchi

思ってた形とはちょっと違うけど

nagA

……まぁな

hiuchi

だから大丈夫さ

hiuchi

それよりオレたちは任されたことを

hiuchi

ちゃんとやり遂げないと

nagA

わかってるよ

nagA

んで?準備は?

hiuchi

こっちはいつでも始められるよ

hiuchi

あとは三嶋の動き次第だね

nagA

……っていうかさ

nagA

日内さんも物好きだよな

hiuchi

まだそれ言ってんの?

nagA

だって日内さん

nagA

完全に外野じゃん

hiuchi

それ言うならナーガだって同じだろ?

nagA

俺は師匠の手伝いがしたいんだよ

nagA

でも、日内さんと師匠は

nagA

職場が同じってだけ

nagA

命かけてまで協力することじゃない

hiuchi

えぇ~!

hiuchi

命がけなのがいいんじゃん!

nagA

はい?

hiuchi

こんな平凡な日常の中で

hiuchi

命がけでデカい組織を壊す、なんて

hiuchi

考えただけでワクワクする!!

nagA

師匠が変わった人だって言ってたけど

nagA

こういうことだったのか…

hiuchi

何か言った?

nagA

何も

nagA

あ、三嶋が動き出した

hiuchi

思ったより早いね

nagA

んじゃ、作戦通り

nagA

こっから反撃といきますか

nagA

ライブ配信スタート!

ナーガの明るい声とは裏腹に、

パソコンの画面に映ったのは、

青白い顔をした

男の姿だった───。

【都内某所】

部下A

”芝田”さん!大変です!

”芝田”

なんだよ、うるせぇな

部下A

これ!これ見て下さい!

”芝田”

あ?

部下が差し出したスマホの画面を見ると、

そこに見たことある顔が映っていた。

”芝田”

”佐藤”じゃないか

”芝田”

これがなんだよ

部下A

あいつ、暴露動画を配信してるんです!!

”芝田”

はぁぁ!?

”芝田”

見せろ!!

”芝田”はスマホを奪い取った。

真っ暗な部屋の中、

”佐藤”は震えた声で語る。

”佐藤 太郎”

オ、オレは……

”佐藤 太郎”

”豊潤を愛でる会”…の…

”佐藤 太郎”

末端、会員…です

落ち着かない様子で、

目がずっと泳いでいる。

”佐藤 太郎”

”豊潤を愛でる会”とは

”佐藤 太郎”

都市伝説サイトなんかで語られている

”佐藤 太郎”

乱交を楽しむ集団なんかじゃない

”佐藤 太郎”

…未成年を唆し

”佐藤 太郎”

誘拐し

”佐藤 太郎”

無理矢理犯す

”佐藤 太郎”

それも

”佐藤 太郎”

会が製造した脱法ドラッグを使って

”佐藤 太郎”

その脱法ドラッグは

”佐藤 太郎”

痛みや苦痛を取り除き

”佐藤 太郎”

快楽だけ残す

”佐藤 太郎”

血塗れになった女たちは

”佐藤 太郎”

笑いながら死んで逝く

”佐藤 太郎”

そして…

”佐藤 太郎”

死んだ女たちは

”佐藤 太郎”

山に捨てられたり

”佐藤 太郎”

会が運営している

”佐藤 太郎”

ゴミ焼却場で処分される

”佐藤 太郎”

オレは……

”佐藤 太郎”

上の指示で

”佐藤 太郎”

何人もの子を……

彼は震える手で

己の顔に触れる。

”佐藤 太郎”

うぅ…

”佐藤 太郎”

捨てた子たちの姿が

”佐藤 太郎”

今も頭から離れない

顔に爪が食い込み、

皮膚を抉る。

”佐藤 太郎”

オレは…

”佐藤 太郎”

オレは耐えられなかった

”佐藤 太郎”

だから

”佐藤 太郎”

オレも薬を飲んだ

”佐藤 太郎”

全てを忘れたかったから…

絞り出すような声で言い、

手で顔を覆う。

”佐藤 太郎”

オレはそれでも

”佐藤 太郎”

たくさんの女の子とヤれて…

”佐藤 太郎”

ひひひっ…

”佐藤 太郎”

楽しかった

”佐藤 太郎”

楽しかったよぉ

”佐藤 太郎”

あっ…

”佐藤 太郎”

あああ!!

”佐藤 太郎”

違う違う違う!!

”佐藤”は頭を横に振る。

”佐藤 太郎”

そうじゃない!

”佐藤 太郎”

気持ちよかったけど

”佐藤 太郎”

無理矢理って興奮したけど

”佐藤 太郎”

オレは

”佐藤 太郎”

オレは!!

”佐藤 太郎”

殺したくなかった!!

”佐藤”は目を見開き、

自分の顔を何度も引っ掻いた。

”佐藤 太郎”

あああああ!!!

”佐藤 太郎”

ああああ…

”佐藤 太郎”

……

ふと、その手が止まる。

血走った目が、

じっとカメラの向こうにいる

誰かを睨みつける。

”佐藤 太郎”

オ、オレは

”佐藤 太郎”

”芝田”と呼ばれる人の指示で

”佐藤 太郎”

ずっと動いていた

”佐藤 太郎”

女の子は”芝田”が準備してた

”佐藤 太郎”

アイドルになれなかった子を

”佐藤 太郎”

オレたちは犯した

”佐藤 太郎”

生きてた子も

”佐藤 太郎”

死んだ子も

”佐藤 太郎”

そのあと

”佐藤 太郎”

”芝田”の指示で

”佐藤 太郎”

死体処理もした

”佐藤 太郎”

オレは”芝田”に逆らえなかった

”佐藤 太郎”

あいつは

”佐藤 太郎”

”芝田”は…

”佐藤 太郎”

芸能事務所のサン・キュアラの

”佐藤 太郎”

進藤俊春(しんどう としはる)

”佐藤 太郎”

”芝田”という偽名を使って

”佐藤 太郎”

事務所にいる子を

”佐藤 太郎”

何人も連れてきて……

”佐藤 太郎”

みんなで楽しんだ……

”佐藤 太郎”

は、ははっ…

”佐藤 太郎”

あはははっ!

”佐藤 太郎”

げほっ!げほっ!

”佐藤 太郎”

はぁ……

”佐藤 太郎”

この暴露は

”佐藤 太郎”

せめてもの

”佐藤 太郎”

罪滅ぼしだ……

そう言っておもむろに

ポケットから小瓶を取り出した。

”佐藤 太郎”

これが…

”佐藤 太郎”

会が作ってる脱法ドラッグ

”佐藤 太郎”

”DL”

”佐藤 太郎”

Die Lustの略らしい

震える手で何とか瓶を開けると、

中身を全部手のひらに出した。

十錠以上はあるだろうか。

”佐藤 太郎”

……そして

”佐藤 太郎”

オレはここで……

覚悟を決めたように

”佐藤”は全ての錠剤を口に入れ、

大量の水を飲み、

”佐藤 太郎”

んぐっ……

一気に流し込んだ。

恐怖や不安は消え、

幸福感が押し寄せ、

恍惚の表情を浮かべる。

が、

すぐに異変は起きた。

眼球が揺れ、錯乱し、

意味不明な言葉を叫ぶ。

発汗、嘔吐、けいれんを起こし、

口から泡を吹くと、

白目をむいて

倒れた。

───ゴンッ

という鈍い音のあとに、

静寂が広がった。

”芝田”

あのバカ!!

”芝田”

おい!!

”芝田”

上に連絡してこのライブ配信を

そう言った瞬間、

”芝田”のスマホがけたたましく鳴り響く。

”芝田”

!!

”芝田”

待て待て待て

”芝田”

なんだよこの通知の量は!!

部下A

”芝田”さん…

部下A

会社にも大量のメールが……

”芝田”

……

開かれたパソコンの画面には、

得意先やスポンサー企業、

上司に留まらず、

次から次へと

動画に関するメールが届いていた。

それを見た”芝田”の顔から

一気に血の気が引いていった。

部下A

ど、どうしましょう…

同じように青ざめた顔で

部下が尋ねる。

”芝田”

ど、どうするもこうするも…

”芝田”

み…三嶋だ!

”芝田”

早く三嶋に連絡しろ!!

部下A

は、はい!!

大きく頷き電話をかける。

”芝田”

…”佐藤”の奴…

”芝田”

行方不明じゃなかったのかよ

”芝田”は通知の止まらないスマホを

苛立ったように見つめる。

”芝田”

…まぁ…あの量の薬を飲めば

”芝田”

死ぬのは確実だ

”芝田”

問題は配信の内容だ…

部下A

”芝田”さん!

部下A

三嶋さん、電話に出ません!

”芝田”

ったく!何やってんだよ!

”芝田”

貸せ!!

部下からスマホを奪い取り、

電話をかけるが

結果は同じだった。

”芝田”

くそっ!!

”芝田”

なんで出ねぇんだ!!

部下A

もしかして

”芝田”

なんだよ

部下A

見捨てられたんですかね…

”芝田”

何を…

部下A

だってこれ

部下A

もうどうしようも無いじゃないですか

”芝田”

だ、黙れ!!

”芝田”

そんなこと……

しかし、

スマホの通知も

会社へのメールも止まらない。

”芸能事務所サン・キュアラ、トレンド入りおめでとうございます!”

”進藤俊春さん!事務所の中で一番の有名人になっちゃいましたね!”

そんなメッセージを目の当たりにして、

”芝田”は

”芝田”

ふざけんな!!

と叫んで部下のスマホを床に叩きつけた。

”芝田”

どいつもこいつもバカにしやがって!!

”芝田”

”佐藤”も三嶋も許さ……

そこでふと、

”芝田”は気が付いた。

”芝田”

(”佐藤”が何か問題を起こして)

”芝田”

(紫雲を呼んだところまではわかってた)

”芝田”

(ってことは”佐藤”を拉致ったのは…)

”芝田”

(紫雲かぎりか!!)

”芝田”

(じゃあ、このライブ配信も……)

”芝田”

おい!!

部下A

……

部下は床に叩きつけられ

画面が割れた己のスマホを

茫然と見つめていた。

”芝田”

紫雲のところに行くぞ!

部下A

…手遅れですよ

”芝田”

スマホなら弁償してやるから

部下A

そういう意味じゃありません

”芝田”

じゃあ、どういう意味だよ

部下A

まもなく警察が来ます

”芝田”

…え?

部下A

こうなった場合どうするのか

部下A

”芝田”さんがよくご存知ですよね?

”芝田”

ま、待て待て!

”芝田”

そんな!!

部下A

”芝田”さん

部下A

自ら命を絶つか

部下A

殺されるか

部下A

どっちがいいですか?

部下はいつもと変わらぬトーンで

尋ねてきた。

”芝田”

くっ……

”芝田”

こんなところでくたばってたまるか!!

”芝田”は部下を押し飛ばし、

部屋を飛び出した。

部下A

やれやれ……

部下A

最期まで手のかかる人だ…

部下は重いため息をこぼして、

ゆっくりと立ち上がった。

真っ赤に染まった部屋の中、

これは夢なのか、

現実なのか、

滝津にはわからず、

ただただ、

恐怖に震えていた。

滝津 七星

(怖い…)

滝津 七星

(何も見たくない…)

目を閉じ、

耳を塞ぐ。

 

ちゃんと見てよ

滝津 七星

え?

耳は塞いでいるはずなのに、

女性の声が聞こえた。

 

見て楽しいもんじゃないから

 

見たくないかもしんないけど

 

あんたしか見てないこともあるんだよ?

滝津 七星

……だ、誰?

滝津 七星

誰なの?

しかし、

怖くて目を開けられない。

 

誰だっていいでしょ

 

あんたは”まだ生きてんだから”

 

ちょっとぐらいは”かぎりん”の役に立ちなよ

滝津 七星

かぎ、りん?

 

そう

 

”かぎりん”はずっと

 

ずーっと

 

あんたのためだけに

 

頑張ってきたんだから

 

だから

 

あんたも頑張って思い出してよ

 

あの日

 

あの場に誰がいたのか

滝津 七星

……

それでも、

目を開けることはできなかった。

 

今の”かぎりん”を助けることができるのは

 

悔しいけど

 

あんたしかいないの

滝津 七星

……

 

思い出して…

 

あんたの大切な人はさ

 

ちゃんとあの場にいたんだよ?

滝津 七星

え……

あれほど目を開けるのが怖かったのに、

驚くほど自然と

目が

開いた。

自分のすぐ側

血だまりの中、

鳴谷蓮が倒れていた。

滝津 七星

蓮先輩…

 

”かぎりん”、倒れてるね

滝津 七星

……部屋に充満してた

滝津 七星

脱法ドラッグのせいだと思う

 

マジか、最悪じゃん

 

で?こいつは?

鳴谷の横には…。

滝津 七星

三嶋先生…

 

先生がなんでこんなとこにいんの?

 

助けるため?

滝津 七星

ううん…

滝津 七星

違う…

視線を落としかけて、

滝津は首を横に振る。

滝津 七星

三嶋先生は…

滝津 七星

助けてくれなかった

 

マジで?

滝津 七星

私がどんなに助けてって言っても

滝津 七星

先生は楽しそうに

滝津 七星

笑ってるだけだった…

 

……

顔を上げ、

薄ら笑みを浮かべる

三嶋の手元を見る。

 

包丁持ってんじゃん、アイツ

滝津 七星

うん…

滝津 七星

あれで…

滝津 七星

蓮先輩が”殺せなかった”あの子を

滝津 七星

三嶋先生は……

記憶の中で、

三嶋は楽しそうに

加藤沙耶に包丁を

振り下ろした。

彼女の断末魔が

部屋に響き渡る。

 

うわっ……

そのあと、

ヘラヘラと笑っている、

男たちにも包丁を振り下ろした。

 

え?アイツ何やってんの?

 

脱法ドラッグのせいでおかしくなったとか?

滝津 七星

……確か

滝津 七星

裏切り者を処分するって言ってた

 

ふぅん…

 

でも、これではっきりしたね

滝津 七星

うん…

滝津 七星

すべての元凶は

滝津 七星

三嶋先生だった……

『報復』 END

便利屋・紫雲かぎり〜サクリファイスの花〜

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