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正しい不倫

第3話 - 正しい不倫第3話

236

2021年05月21日

#ドラマ

#ドロドロ

#不倫

#女子高生

望月くらげ

茜

（真っ白な天井…）

茜

（私は…どうしてこんなところにいるの？）

茜

う…

医者

松田さん？気が付いたかな？

茜

お医者…さん…？

茜

わ…たし…

茜

（いったい、何がどうなってるの？）

茜の母

茜！

茜

お母さん！それにお父さんも！

茜の母

よかった…本当に、よかった

茜

お母さん、苦しいよ。それに恥ずかしい

茜

（17歳にもなって人前で母親に抱きしめられるのはちょっと…）

茜

（って、あれ？）

茜

お母さん、だよね？

茜

（うん、確かにお母さんだ）

茜

（でも私の知っているお母さんじゃ…ない）

茜の母

…老けたって言いたいんでしょ？

茜

ま、まあ

茜の母

…当たり前よ、あれから10年も経ってるんだから

茜

は？

茜

10…年？

茜

何言って…

茜の母

信じられないのも無理はないわ

茜の母

でも、事実なの

茜の母

あなたが眠りについた日から、10年の年月が経ったのよ

茜の母

茜、あなたは…

バタバタバタ

直人

茜！！

茜

嫌！誰！？

突然抱きついてきたその人の身体を私は慌てて押し返した。

茜

やめてください！

直人

茜！

茜

（なんで私の名前を…）

直人

俺だよ！直人だよ！

茜

直…人？

茜

（そんなわけない！）

茜

嘘よ！だって直人は私と同い年で…

直人

茜…

茜

その…仕草…

直人

え？

茜

困ったときに拳を口に当てるの…

茜

直人も…よくしてた…

茜

（そんなわけない）

茜

（でも…）

茜

まさか本当に…直人？

直人

ああ！茜！

直人は私の身体をギュッと抱きしめた。

茜

直人、なの？

直人

ああ、俺だよ。茜…会いたかった

茜

（直人…）

茜

（大人の姿の直人）

茜

（老けた両親の姿…）

茜

（じゃあ私は…本当に…）

茜の母

直人くん、仕事は…？

直人

茜が起きたって聞いて慌てて早退してきました

茜の母

でも…

茜の母

ううん、いいわ

茜の母

私たちは少し今後のことで先生と話があるの

茜の母

その間、茜のことを頼んでもいいかしら

茜

本当に直人、なんだよね

直人

ああ

茜

大人に、なっちゃったんだ

直人

まあな…

茜

10年ってことは…

直人

今、27歳

茜

そっか…

茜

（直人は27歳）

茜

（でも…）

茜

…私だけ17歳、なんだね

直人

茜…

茜

（本当は今も全部嘘なんじゃないかって思う）

茜

（でも、こんなふうに大人になった直人を見せられたら…）

直人

茜、大丈夫か？

茜

…うん

茜

ねえ、何があったのか教えてもらってもいい？

直人

あ、ああ

直人

10年前のあの日、事故に遭ったのは覚えてるか？

茜

えっと、うん

茜

（忘れ物をして学校に戻った直人を待ってて、それで…）

直人

そのあと、病院に運び込まれて一度は意識が戻ったんだ

直人

でも、もう一度倒れて…もう二度と目を覚まさなかった

直人

医者が言うには『脳の機能が一部機能していない』せいだって

直人

でも10年前の医学じゃどうにもできなかったんだ

直人

それで…

茜

それで？

直人

いつか医学が進歩して治せるように…茜の身体を眠らせることにしたんだ

茜

眠らせる？

直人

治療法が見つかるまで茜は17歳のまま眠りについた

直人

10年経って…やっと…

直人

やっと…

茜

（直人の声…震えてる…）

茜

そう…なんだ

茜

だから私だけこの姿、なんだね

直人

でも、あのときはそれしか方法がなかったんだ！

直人

だから…

茜

そ…っか

直人

ショック、だよな

茜

（私より、直人の方が苦しそうな顔、してる）

茜

（きっとずっと苦しんでたんだろうな）

茜

（あのとき、自分が忘れ物を取りに戻らなければって）

茜

（…仕方、ないなぁ）

茜

まあ、ね

茜

ショックを受けてないって言ったら嘘になるかな

直人

だよ…な

茜

…そっかー、私だけ17歳かー

茜

（直人が気にしないように、できるだけ明るい声で）

茜

随分と年の差ができちゃったね

直人

え？

茜

彼女が17歳ってヤバいよね

茜

直人、ロリコン扱いされちゃうんじゃない？

直人

それ、は

茜

（あれ？）

茜

（なんか、直人の反応が…）

茜

直人？

直人

…………

茜

（どうして、目をそらすの？）

茜

ねえ

茜

直人

私は直人の指に自分の手を絡めた。

そして気づいてしまった。

茜

（なに…これ）

茜

（薬指に、指輪なんて…）

茜

（まさか）

茜

（ううん、でもそんなことない）

茜

（そんなこと、あるわけ…ないよね…？）

茜

ねえ、直人

茜

（声が…震える…）

茜

なに、これ？

直人

あっ…

茜

嘘、だよね

直人

…ごめん

茜

なんで謝るの

茜

ねえ、直人

直人

…………

茜

誰、と

直人

え？

茜

誰となの？

直人

…………

茜

直人

…美春

茜

嘘…でしょ…

茜

なんで

茜

どうして、よりにもよって…

茜

（だって美春は私の友達で）

直人

ごめん

茜

（直人のことが好きで）

直人

本当に、ごめん

茜

（ああ、そうだ。思い出した）

直人

茜？

茜

ふふ…はは…は…

直人

ど、どうしたんだよ？

茜

…なんでもない

茜

ちょっと疲れちゃったから休むね

直人

あ、ああ

直人

じゃあ俺、何か飲み物でも買ってくるよ

茜

ありがと

茜

最低！最低！最低！さいってー！！

誰もいなくなった病室で私は叫んだ。

枕を手に取ると何度も何度も布団に叩きつける。

茜

よりにもよって美春って！

茜

あり得なさ過ぎて笑えてくるわ！

茜

はあ…はあ…

茜

ねえ、直人。知ってた？

茜

全部その女のせいなんだよ

茜

直人が結婚したその女のせいで私はこうなったんだよ！

茜

あは…あはははは

茜

はは…はは…は…

思いっきり投げつけた枕は病室の壁にぶち当たった。

茜

…許さない

美春。あんただけは

絶対に、許さないんだから

直人

茜？ジュース買ってきたけど…

直人

大丈夫か？

茜

うん…

茜

ねえ直人

茜

（美春、あんたがそのつもりなら）

茜

私…急に色々なことが変わってて…怖い…

直人

そう…だよな…

茜

直人…！

私は直人の身体に抱きついた。

茜

私にとってはまだ、直人は…

茜

私の彼氏、なんだよ

直人

でも…俺は…

直人

んっ…

突然のキスに、直人は少し驚いた表情を浮かべていた。

茜

お願い…今だけ…

茜

私のそばにいて…

直人

茜…

直人の手が遠慮がちに背中に回される。

茜

…直人は私のこと、もう好きじゃない？

直人

そんなこと…ない

茜

直人…

茜

好き…大好き…

茜

今までも、これからも

直人

俺も…茜が好きだよ…

正しい不倫

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望月くらげ

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