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これは

僕らの青春の

青くて暗く

それでいて暖かい物語だ。

雨乃

瀬尾くん

璃雨

はい

雨乃

好きです

璃雨

あー…

本当は気づいてた

辻村さんが俺のこと好きだって

璃雨

ごめん

璃雨

俺恋愛には疎くて…

いっつもこれを言い訳にしてるけど

本当は心が揺らがないだけなんだ

好きって気持ちが分からない

雨乃

そっか

雨乃

これからも普通に友達として話してね

トモダチ

本当に?

俺らは、それほどに仲が良かったのかな

璃雨

うん

おはよー!

璃雨

よっす

コイツは怜

俺の大のトモダチ

コイツは女好きで

すごく恋愛経験も豊富

うっわお前また告られたんかよ

モテすぎなw

璃雨

うっせぇ

湊都

どしたんどしたんっっ

湊都

まぁた告られたの?璃雨

璃雨

うん…

この藤沢という人は

この高校ですごく可愛いと有名らしい

最近よく怜といるのを見るけど

怜のことが好きな感じではない

俺はあまり得意じゃない

湊都

璃雨ってあんま感情出さないしよくわかんないのにねぇ(笑)

湊都

うちらは嫌いじゃないけどね?

おう

そういうとこが好きだぜ!

璃雨

え、キモい

うわぁぁあ璃雨に振られたぁあ!!

いつも通りの日々を過ごしていた

陰は見ないようにして

都合のいいとこばっか見て

楽しいなんて思ってた

そして今

スルーできない状況に陥っている

璃雨

…どうしたの

雨乃

あっ…ごめん

璃雨

(て言うか、部屋隣だったのか)

マンションの自室と見られる場所で踞っていた辻村さんには

いつもの明るい笑顔は携われていなかった。

璃雨

病院…行ったら

雨乃

大丈夫…っ

雨乃

いつものことだから…!

璃雨

璃雨

いつも?

どうやらなにかあるらしい

そのまま行くのも流石にダメだと思った俺は

ほぼ無理矢理というように病院へ連れた

あれ、雨乃じゃん

もしかして…?

雨乃

う、うん…ちょっと

雨乃

薬切れてるから…貰えるかな?

璃雨

薬…

なにか、始めて辻村さんの闇が見えたような気がした

翌日学校に行こうとしたとき

辻村さんに引き留められた

雨乃

昨日はごめんね

雨乃

もう大丈夫だから

璃雨

うん

璃雨

病気…だったんだな

知らなかった事実に驚愕したが

このあと更に驚いた

雨乃

そうなの

雨乃

みんなには内緒にしてほしいんだけど

雨乃

あたし…っ

雨乃

あと半年で死んじゃうんだぁっ!

泣いてるようにも見える

そんな悲しげな笑顔

辻村さんの表情が揺れる

璃雨

どうして笑うの?

璃雨

…辛いなら吐けばいい

自分でもほぼ自動的に出た言葉に

辻村さんはすごく驚いた

雨乃

瀬尾くんは優しいね

雨乃

でもね

雨乃

自分のこと好きな人にそういうコトしちゃダメだよ

璃雨

…あっそ

璃雨

別に死ぬまで一緒にいてやるくらいできるけど

璃雨

知っちゃったし

雨乃

え…

辻村さんの顔がパッと明るくなった

そう、別に恋愛する予定もないし

病人を労るくらいの気持ちだった。

璃雨

おはよ

あれえ?女子と2人で登校なんてアツいねぇ?

璃雨

あんま冷やかすなって

え?

…マジなの!?

湊都

(…え?)

それから辻村さんとたくさん話した

辻村さんが言うには、病気のことを知ってる人といると楽だそうだ。

雨乃

ごめんね

雨乃

あたしなんかと付き合ってるなんて思われたら嫌だよね

璃雨

んなことねーよ

璃雨

辻村さんはもう少し人を頼れ

雨乃

ありがとう

どうして君は死ぬ運命なんだろう

僕らの恋は、名前の通りに雨模様だ

怜を交えて遊びにいったこともあった

辻村チャンて意外と可愛いね

璃雨

意外とって失礼だな

雨乃

ははっ!谷崎くんも意外と優しいとこあんじゃーん?

病気なんて感じさせない明るさ

誰とでも仲良くできて

すごくいいコで…

そんな辻村さんに俺はどんどんハマっていったんだと思う

璃雨

帰るぞー

雨乃

わー待って待って

雨乃

ここ好きなんだよねぇ…

璃雨

もー…

璃雨

璃雨

あーまーのっ!

雨乃

…え?

璃雨

行くぞバーカ

雨乃

いっ今雨乃って…!

璃雨

いーじゃん

璃雨

仮でもカップルだし

俺は怜に聞こえないようにこそっと言った

赤くなっているのがいとおしかった。

ずっと動かなかった心が

凍っていた心が

揺らいだ

雨乃がいる夏は

すごく早かった

もう木々も紅く色づいてきたころ

俺は雨乃の大親友である水菜さんに呼び出された

あのさ

雨乃のこと遊びならやめてくんない

璃雨

…なにが

別に瀬尾がそんな人と思ってる訳じゃないけど

雨乃を傷つけるなら許さないからね

璃雨

…そうだね

あとから

雨乃が傷つくなら

そうなるくらいなら──。

そう思うと

うまく雨乃と話せなくなった

そんなある日、見てしまう

湊都

ねえ、あんたさぁ

湊都

なに璃雨に近づいてんの?

心春

それなぁ?似合ってないから(笑)

紗羅

璃雨くんと釣り合うのは湊都ちゃんだけだからあ

湊都

自惚れんじゃねーよ

湊都

ブスが

感情に身を任せて

藤沢さんが振り上げた手を掴む

璃雨

お前こそ自惚れんじゃねぇよ

その手に力がこもる

湊都

ちょっ…璃雨っ、痛いって!

璃雨

あ?

湊都

うちらは璃雨のためを思ってやってんの!!

湊都

コイツ、璃雨に病気を利用して近づいてんでしょ!?

璃雨

そこまで知ってんのか

湊都

そうよ!だから──

璃雨

なのに

璃雨

こんなことするんだな

璃雨

病気だから何だよ

湊都

はぁ!?

湊都

璃雨だって病気だからこんなブスといんでしょ!?

湊都

人間なんてみんな明日死ぬかもしれないのは変わらないのに!!!!

璃雨

…そうだね

璃雨

初めは病気だからだった

璃雨

いや、もしかしたら初めから気に留めていたのかもしれない

璃雨

どちらにして今──

璃雨

1人の人間として雨乃が好きだ

心春

璃雨くん騙されてるんだよ!!

心春

このブスに!

紗羅

そうよ!そうよ!

璃雨

つか誰お前ら

璃雨

1人でぶつかってもこれねぇやつが偉そうなこと言うな

心春

…っ

紗羅

なっ…!

湊都

も、もういいじゃん行こ!

ドンッ

おう、どした湊都

湊都

うるさい!

ドタドタとかけていく3人を見て怜が言う

え、どした

璃雨

まーちょっとね

璃雨

お前は藤沢さんの話聞いてやれよ

なんでだよぅ

璃雨

好きなんだろ

璃雨

バカ、バレバレなんだよ

ごめん…ありがとう、行くわ!

璃雨

おう

雨乃

雨乃

璃雨くんごめん…あたしのせいで

璃雨

んーん

璃雨

俺が、雨乃を好きなんだから自信持てって

雨乃

うん…

どうしたの雨乃!?

やっぱりこの男…!!

雨乃

ち、違うよ遥

行こ!もう!

璃雨

(おいおい)

璃雨

璃雨

はー…。

こういうことがあると

改めて雨乃の死が近づいてると実感が迫り

怖くなるんだ

そして、時は待ってくれず

そのときは唐突にくる

お、おい璃雨!!

なんか辻村チャンが倒れて…!!

璃雨

…すぐ行く!

璃雨

谷上国際病院連れてって!

お、おう!

璃雨

雨乃…大丈夫か!!?

雨乃

あ…璃雨…くん…っ

俺が駆け寄ったあと

少し遅れて水菜さんがやって来た

雨乃!!雨乃!!!

はぁ…良かった、大丈夫!?

雨乃

う、ん…多分っ…

な、なんだよっ!?

それから医者がくるのはすぐだった

雨乃

璃雨くん…最後に1個だけ…っ

雨乃

大好きだよ

璃雨

俺もに決まってんだろ!

璃雨

なに死ぬみたいなこと言ってんだよ!!

璃雨

まだあと1ヵ月余命あるって言ってただろ!!

雨乃

ごめん…心配させたくなくて…

離れて、と冷たい医者の声が聞こえたかと思えば

すぐに

ピーーーー

という嫌な音が鳴った

思った通りそれは

心停止を表す音だった

璃雨

嘘だろ…雨乃?

璃雨

雨乃ぉぉおおお!!

お葬式の間は

関わった人たちみんなが

放心状態だった

璃雨

(あまりにも唐突すぎる)

璃雨

(どうして…どうして!)

自分を責めてばっかりいた

泣いても叫んでも足りなくて。

死というものは

あまりにも実感がわかなくて

本当にもう会えないと思うと

辛くて辛くてたまらなかった

君がたまたま病気だっただけ

君がたまたま僕の初恋だっただけ

たまたま出会っただけの僕ら

たまたま付き合っただけ

そんな偶然が積み重なって僕らがいる''だけ''

だけど、それでももう

この恋は雨模様なんかじゃない

そう思った

璃雨

(だってこんなにも美しく)

璃雨

(こんな感情を教えてくれた)

翌日の学校は

みんなが静まり返っていて

あんなに無下にしていた藤沢さんも

湊都

嘘でしょ…

湊都

謝りたかった…のに…っ

湊都…

悔やんでも悔やみきれないようだった。

雨乃が藤沢さんを変えたのかと思うとまた泣けた

だけど…俺だってそうだけど

ずっとこのままじゃダメだ

雨乃が大好きだから

進まなきゃいけないんだ

あれから1年

俺の心はやっぱり雨乃にしか揺らがなくて

だけど──

璃雨

雨乃ー!

璃雨

会いに来たぞ!

辻村チャーーーン!来ったぞー!

湊都

辻村さーーーん!!!

あーまーのぉおおおお!!

1ヵ月に数回、必ずこの雨乃が好きだった海にみんなで来る

雨乃が死んでから始めてきたときは風が優しくてまた泣いた

湊都

なんとね、辻村さん

湊都

うちら付き合ったんだ

そうそう

意外だろ?

璃雨

雨乃とダブルデートしたかったよなぁ

ちょっと、あたしは?

璃雨

あはは

絶対に忘れない

僕らが過ごしたこの日々は

すごく大切な日々だった

そして今もずっと僕は

君を愛してる。

この作品はいかがでしたか?

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コメント

5

ユーザー

遅くなってごめんね! ううっ…….°(ಗдಗ。)°.切なくて悲しいけど…でも、暖かくて優しくもある…ステキなお話だったよ〜!!!雨乃ちゃんと璃雨くん…仮のカップルのはずだったのに、いつのまにか両思いになってたんだね…。 最高だったーー!!!

ユーザー
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