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仮面の人間

私の劇団に入らないか

エイ

へ......?

仮面の人間

そうか、そうだな、

仮面の人間

自己紹介がまだだった

仮面の人は勝手に何かを納得 したように話をする

仮面の人間

私は劇団長の役職を務めるフォックスだ

フォックス

よろしく

エイ

僕は......エイ、です......

フォックス

そうか、Aか

フォックス

よろしく

フォックスは僕の名前には興味がないようだった

そのまま話を進める

フォックス

君に私から提案がしたいんだ

フォックスは腰からバッチのようなものを取り出し、僕に渡す

鮮やかな配色のバッチだった

横を向いた狐を様々な色が取り巻いている

フォックス

これは私が団長を務める、''とある劇団''の団章だよ

エイ

とある劇団......

フォックス

そう、それが私の劇団の名だ

町を渡り歩きながら 名前は聞いたことがあった

奇人変人を集め、劇をする

最悪な劇団と呼ばれる

とある劇団......

フォックス

これを銅貨6枚で君に譲ろう

フォックス

劇団内で団章を見せれば食事がもらえる

フォックス

寝る場所も見繕ってあげよう

フォックス

何の心配もなく過ごせる場所を与えよう

エイ

それは......すごく

エイ

ありがたい......です......

フォックス

そうだろう?

エイ

でも、とある劇団って......

フォックス

ほお、君はとある劇団を知っているのかい?

エイ

聞いたこと、あります......

フォックス

そうかそうか!

フォックス

なら話が早いだろう?

フォックスと名乗った仮面の人間の声が一段明るくなる

エイ

いえ、あの

エイ

変な噂しか......

フォックス

あっははははは!

フォックス

そうか! 確かにそうだな!

フォックス

我々の劇団はよくない噂が出回ってる

フォックス

だがそれでもいい

フォックス

そう思わないかい?

エイ

どう、して?

フォックス

君は今、タヒんだのさ

フォックス

だろ?

エイ

まだ、生きてる、けど......

フォックス

いいや、タヒんでいるんだ

フォックス

だから私に君の全てを預けてくれよ

エイ

ねえ、わからない

エイ

どういうこと?

フォックス

君はタヒのうとしていた

フォックス

放って置けば本当に明日にはタヒんでいただろう?

フォックスの言葉には、そうなると思わせる何かがあった

その言葉が真実になるような気がした

エイ

うん

だから同意せざるを得なかった

フォックス

そうだ

フォックス

明日にはタヒんでいるんだ

フォックス

だから、どうせ捨てる命、私に預けてほしいんだ

フォックス

無駄にはしないと約束しよう

エイ

うんいいよ

フォックス

そう言わずに、いいだ......

フォックス

へ?

頷いた僕にフォックスは拍子抜けしたような声をあげた

フォックス

それは、劇団に入ってくれるということかい?

エイ

うん、入るよ

フォックス

待てよ、ちゃんと考えたのか?

フォックス

後から、やっぱりあのときは~とか、気の迷いで~とか、って

フォックス

......言わないよね?

エイ

うん、言わない

フォックス

そうか

フォックスは短く答えた

何かが変わる

そんな予感がしていた

一年間、止まったようだった僕の時間が

人生の秒針がカチリカチリと、また動き始めた気がしていた

フォックス

銅貨をくれるかい?

エイ

どうぞ

銅貨6枚、全財産と引き換えにバッチを渡される

フォックス

君の望み通り僕は君をコロしたよ

フォックス

そして君は僕の物だ

フォックス

いいかね?

エイ

うん

仮面の中でフォックスは、はにかんでいるのだろう

その声音は嬉しそうだった

フォックス

まだ君の名前を決めてなかったね

エイ

名前......?

フォックス

そう、新しい命の名前だ

フォックス

私の劇団に入る人はみんな名前を捨てるんだ

フォックス

そして新たな呼び名を得る

この時僕はエイという少年から違う存在になりたいと思った

エイ

つけてほしい......

フォックス

そうか、それなら

フォックス

私から君への最初のプレゼントだ

フォックス

君の劇団での名前をあげよう

エイ

うん

フォックス

君の名はアファル

フォックス

悲愴のアファルだ

エイ

うん、アファルだよ

フォックス

......ああ

フォックス

ああ、なんて......

フォックス

なんて......

フォックスは腰を屈め、僕の顔を覗き込んだ

フォックス

なんて純粋で美しいんだ......

艶めかしいその囁き声に ドキリとしてしまった

アファル

いきなり......

アファル

どうしたの......?

フォックス

いや、なんでもない

切り替えるかのようにパンパンと自分の衣服をはたき

フォックスは屈めた腰を元に戻す

フォックス

素直な子は好きだよ

フォックス

君は劇団の中でもとびきりに輝くだろうね

アファル

......ありがとう?

フォックス

ははっ、いや感謝を言うのは私だ

フォックス

アファル、君は私が今まで見つけた中で最高のピースかもしれない

フォックス

これからよろしく頼むぞ

アファル

はい、フォックスさん

フォックス

呼び方はフォックスでいい

フォックス

それと、これから君は私のものだ

フォックス

私が言ったことは全て厳守すること、いいかね

アファル

......わかった

フォックス

よし、いい子だ

どうでもいいと思っていた人生

そこに一筋のレールが敷かれたような気分だった

フォックスは不思議な人だ

男なのか、女なのか 年齢すらも検討がつかないのだ

それなのにフォックスの言葉は信じてしまう、肯定してしまう

放つ言葉を相手に信じさせる力

それがフォックスの能力なのかもしれない

出会ってから数分しか経ってないにも関わらず

この人なら、と

この人なら僕を新たな世界に立たせてくれると信じてしまう

フォックス

おめでとうアファル

フォックス

今日が君の誕生日だ

フォックス

そして、君に縛りを与える

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