みんなの背伸びが、苦手だった
程よいくらいがいいのに
皆が少し過剰で
過剰なものが、混ざって
むせ返る
そんなのが嫌で
廊下で、窓を開けてため息をひとつ
窓を開けても
頭痛がするくらい、きつい
怒りを通り越して呆れてきた
なんであの中で息ができる?
段々、イラついてきて
舌打ちしそうになった瞬間
隣に、ふわりと感じる
優しい香り
ほかの女の香水とは違う
ただの、柔軟剤みたいな
仄かな、香水のような
どちらにしろ、嫌じゃなくて
むしろ、好みの香りで
びっくりして、隣を見たら
「…やっぱ、外の方が好き?」
そんなことを、言ってくる幼馴染
「……いや、今なら別にいい」
「……柔軟剤、変えた?」
「香水とか付けないでしょ?」
「勿体ないね、この異常な香水ブームに全て掻き消されてる」
「……でも、お前は気がついてくれたでしょ?」
「なら、いいよ」
……なんだ、それ
「…ねぇ、今から買い物行かない?」
「その香り気に入ったから欲しい」
「そんなに?w」
少し笑って、手を差し伸べられた
「じゃ、今から抜け出すか」
「お手をどうぞ、お姫様」
…なんだ、これ
終始、楽しそうで
こっちも、そんな気分になってきた
「しっかりエスコートしてよね。王子様」
もう、周りの匂いは気にならない
目の前の、着飾らない香りに
全てを、救われて
周りの目なんて気にしないで
むせ返る香水から、逃げ出した