ライト
さよう、マスターのお母上、ちえみ様は黒魔女でございました

約束通りライトは答えてくれた
それはあまりにも、思いがけない内容だった
ミカ
黒魔女?それってどういうこと…?

確かにママは変わり者だった
浮世離れしてるっていうか…
でもそれは考古学者だからだと思っていたのだけれど
ライト
もともとちえみ様は魔法学園のあるアヴァロンの住民でした。

ライト
私はお母上に仕えていたのです。お若いながら学園長どのに匹敵するほど優秀な魔女でございました

ミカ
学園長先生?ほんと!?

ライト
…そしてお二人はともに大魔法使いマーリン様の弟子でした

ミカ
マーリン…あの小鬼はマーリンの眷属って言ってたよね

ライト
さよう、使い魔でありましょう。マーリン様はアヴァロンの祖ともいうべき偉大なお方

ライト
ほかにもモードレッド殿をはじめとして優秀な弟子は数多くおりましたが、後継の育成は学園長殿に任せ、めったに人前には出られません

ミカ
それで…どうしてママがこっちの世界の人のパパと結婚したの?

ライト
こちらの世界。アヴァロンではアースワールドと呼んでおります。とアヴァロンを行き来するにはゲートという魔法を使わねばなりません

ライト
しかし、まれにゲートを使用せず迷い込むものがおるのです。それが父上でした

ライト
迷い者のお父上をちえみ様がお救いしたのがきっかけ、ちえみ様はお父上のおそばにいることを望まれました。

ライト
前途有望な魔女を失うことを怖れて多くのものが引き止めたのですが、魔女であることを捨て、二度と戻らぬ覚悟でアースワールドへ移られました

ママったら、そんなにパパのことが好きだったんだ
ミカはついにやにやしてしまう
ミカ
って、にやけてる場合じゃなかった!!

ミカ
ねえ、ママに仕えてたなら、ママの失踪は知ってる⁉どこに行ったの?どうしていなくなったの!?

ライト
失踪!?

ライト
皆目存じ上げませんでした。一体ちえみ様に何が?

ミカ
ライト知らなかったの?

ライト
はい。ある日いきなりこれから、ミカ様にお仕えせよと命じられただけで

ミカ
そんな

ライト
魔法学園への入学手続きは済んでいる。ミカ様が魔女として歩む道を手助けするようにと。そしてスマホごと梱包されたのでございます

ライト
そのあとはミカ様がお手にとってくれるまでずっと眠ってました。

ライト
まさか、ちえみ様の身になにか…ああご無事でしょうか…

ミカ
(ライト不安なんだ…私も不安だよ)

ミカ
大丈夫だよ。ライト

ミカ
きっとね、意味があるんだと思う。なぜ私が魔法学園に入学することになったのか、なぜライトが私に仕えることになったのかってことには

ライト
ミカ様…

ミカ
ママは自分が魔女ということを隠してた。それなのに私に学園へ入学しろって…つまり魔女になれっていう。
おかしいよねでも。

ミカ
無意味に私を危険な目にあわせるようなこと、ママがするわけない。だから私にとって必要なことなんだと思うの。もしかしたらママにとっても。

ミカ
わたし、学園で頑張ってみる。そうしたらママの手がかりも見つかるかもしれない

ライト
ちえみ様はこうおっしゃってみえました

ライト
ミカ様は勇気がおありで、同時に心優しい方。誰かのために我慢してしまう性格なのでしっかり支えてあげてね。と

ミカ
ママが……

ライト
ミカ様こそ誰よりご不安でしょうに…情けないところをお見せしました

ライト
もう泣き言はもうしません。誠心誠意全力でお仕えいたします。マスター

ミカ
仕えるなんて…一緒に頑張ろうよ、ライト!

ライト
しかし、なぜマーリン様に仕える者があの場に?

充電中のスマホがなった。はっとしてミカは取り上げる。画面の表示は数字だけ…未登録番号だ
ミカ
も、もしもし

アカリ
ミカ!?いたいた!!

ミカ
その声…アカリちゃん?なんで電話番号知って…あっ

そういえば入学式後、アカリと電話番号をメモして交換したのだった
しかもラッキーなことに同じクラス
ミカ
クラス一緒で良かったー!明日から学校でよろしくね!

アカリ
ちょっとちょっとミカ。呑気すぎるぞ〜今日が何日かわかってる?

ミカ
何日って、7日

アカリ
ああっ…やっぱり忘れてる

アカリ
ツナグに電話しろって言われたけど電話して正解だったよ

ツナグ
うるさい

ツナグ
お前わかってるのか?今日は学園の初授業日だぞ

ミカ
え、あー!!!

ミカ
そうだった!ツナグくんはもうわかったの?

ツナグ
当たり前だろ。お前とはちがうんだ

アカリ
ツナグっておっかしいんだよ。これまで私に声なんてかけてこなかったのに、ミカのことは心配してるみたいでさ〜…そのくせこの冷たい態度。理解不能だよー

ツナグ
聞こえてるぞ

アカリ
あ、やば…それよりミカ、授業が何時に始まるかわかりそう?

ミカ
全然…魔法のことだってわからないし

アカリ
こっそり教えてあげようか

ミカ
いいよ。アカリちゃん。不正はすぐわかるって学園長先生もいってたし!

ツナグ
貸せ

ツナグ
ライトと相談しろ。手助けしてくれる

ミカ
相談?でも魔法に関連することだったら私には…

ツナグ
こんなの一般教養だ。魔法なんて関係ない

アカリ
いいの?ツナグ。アドバイスなんかして

ツナグ
別に答えは教えてない。いいか、ちゃーんとライトと顔を合わせて相談しろよ

アカリ
ツナグの言うとおりだよ!ミカもすぐわかるよ!じゃ、急いでね!!

ミカ
今の聞こえてた?ライト?

ライト
はい。あの口ぶりではさほど時間はないようです

ミカ
兎のお茶会の時刻って…何かなあ

ライト
ご安心を。マスターをお助けする新しい仲間を紹介します

ミカ
仲間?

ライト
仲間というか、魔法道具ですな。名前はヘラルド。

ライト
どうぞお呼びくださいマスター

ミカ
呼ぶ…あそっか、カムヒア、ヘラルド

呼んだ途端画面がキラキラと輝き、ぽん!と空中に鳥が実体化した
ライト
ヘラルドは「告げるもの」という意味。マスターがお尋ねになれば大事な情報を探してお告げします

ミカ
うーん…兎の刻ってなあに?

ライト
マスター、それはあまりにもストレート過ぎ…おや?

小鳥のヘラルドがさえずり、空中にもじが浮かび上がった
ライト
なになに、昔の時刻の名称。午前6時をさす…

ミカ
午前6時!?

ライト
もう過ぎてしまったのでしょうか!

ミカ
そんな…そんなのってでも…ううん、その時間じゃない

ライト
え?なぜでごさいます?

ミカ
だってアカリちゃんたちはこれから授業に行くところだったもん

ライト
ふむ、たしかに…では振り出しにもどってしまいましたな

ミカ
よし!ご飯食べてくるね!

ライト
昼食?ふぅむ…大物でございますなミカ様は

ミカ
だってお腹空いてたら元気ないもん!5分で戻る!
