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その日の夜――。
家に前に当たり前のように止まっている車を見て愕然とする。
どこかをぶつけた形跡もないし、本人も無事なのだろう。
けんた
彼――こと【けんた】はそう呟くと、小さく舌打ちをした。
けんた
けんたは自らが恐ろしい笑みを浮かべていることに気づいて、小さく首を横に振る。
けんたが、あの女とひやまの不倫に気づいたのは最近のことだった。
しかし、それを知ってから、とにかくあの女のことが気持ち悪くて仕方がない。
――だから、殺すことにした。
もちろん、けんたとて馬鹿ではないから、殺人には見えないような形でだ。
けんた
不凍液――それは、車の消耗品として使われるものであるが、実は飲むと人体に多大な害を及ぼす。
しかも、飲んだことはないが、随分と甘味があるらしく、食事に多少混ぜても怪しまれはしないとのこと。
これを少しずつ摂取していくと、そのうち腎不全を起こして死ぬ。
けんた
けんたはポケットから鍵を取り出す。
最近は物騒だから、例え誰かが家にいたとしても、常に玄関には鍵がかかっている。
家族はそれぞれに鍵を持っていて、帰宅時には自分で鍵を開ける――というルールになっていた。
けんた
一応、社交辞令的に挨拶をするが、あの女が出迎えにくるわけもなく、靴を脱いで荷物を階段の下に放り投げると、そのまま風呂場に向かう。
彼のルーティンは決まっており、きっと風呂から出る頃には、食卓に食事が並ぶのであろう。
風呂場に入ると、服を脱ぐのもほどほどに、改めて不凍液についてスマホで調べる。
けんた
けんた
健太は風呂に入り、体をさっと洗うと、湯船に体を沈める。
――あの女は絶対に許さない。
この一家の主人を裏切った罪は、あの女が思っている以上に思い。
けんた
けんた
たちのぼる白い湯気には殺意が混じり、それが天井に貼り付くのであった。
数日後――みさと自室。
人が他者に対して恋愛感情を抱けるのは、長くても2年程度らしい。
そこから先は蛇足というか、情などがあって別れないだけ。
もちろん、例外はあるのだろうが、世の中の夫婦というものは、大抵が冷めている――ということになる。
それは、みさとも例外ではなかった。
結婚してすぐに息子を身籠り、新婚生活もままならぬままに出産、育児を経て現在にいたる。
その甲斐もあってか、息子も今や高校生。
いや、最近になってアルバイトを始めて、少しずつ社会経験も積み始めたばかりだから、まだ子育てはなかばなのかもしれない。
子育ての忙しさは、夫婦の時間を自然と削っていった。
いつしか夜の営みもなりをひそめた。
旦那は旦那で、そのほうが都合が良かったらしい。
ただ、子育てにはあまり関与せず、そこに夫婦間の軋轢(あつれき)のようなものが生まれ始めた。
みさと
誰に言うでもなく呟く。
だからきっと、ひやまの誘いに乗ってしまったのだ。
最近は自分にそう言い聞かせるようにしていた。
みさと
ひやまに特別なことは求めていなかった、ただ女として扱い、女として抱いてくれればいい。
男は浮気をする生き物だ――なんて世間では言われるが、その浮気をする男には相手がおり、一般的にその相手は異性となる。
つまり、浮気をする男の数だけ、浮気に加担している女が存在するということ。
ただ女は隠すのが上手いだけだ。
みさと
みさと
元からすれ違いの多い夫婦だが、最近さらに旦那がよそよそしくなったような気がする。
しかも、最近になって夕飯を作ったりするようになったのだ。
息子は昔から家事を手伝ってくれる子だから、台所に立つのも珍しくはない。
ただ、最近になって、息子に手伝ってもらいながらではあるが、台所に立つ旦那の姿は、いささか気味の悪いものがあった。
みさと
みさと
みさと
ふと、スマホにメールが着信。
相手はひやまだった。
最初は他愛もないやりとりをしていたのだが、ふと気になることを話題に出すひやま。
ひやま
みさと
ひやま
ひやま
ひやま
みさと
ひやま
ひやま
みさと
ひやま
みさと
ひやま
ひやま
みさと
ひやま
ひやま
ひやま
みさと
ひやま
ひやま
みさと
みさと
ひやま
みさと
ひやま
ひやま
ひやま
みさと
ひやま
ひやま
ひやまのメールの一文。
それは、もしかして薄々と気づいていたことなのかもしれない。
みさと
それはもしかすると、うっすらとしていた疑念が確信に変わった瞬間だったのかもしれない。