有栖
これは、この辺?
有栖
これは、こっち?
ナレーター
女の子の名前は夕星有栖。
ナレーター
有栖は目立つ事が苦手な、ごく普通の中2。
ナレーター
だが、実は『有栖探偵事務所』日本支部の探偵見習いでもあるのだ。
有栖
これは…あっち…これは…こっちということで
ナレーター
そして、有栖がいるのは有栖探偵事務所の応接間。
ナレーター
今、有栖はクリスマス•ツリーの飾り付けの真っ最中なのだ。
有栖
でもって…この大きな星がてっぺんです。
ナレーター
アリスはツリーのてっぺんに銀色の星を付けようと、つま先立ちになる。
有栖
もうすぐクリスマス。ワクワクです。
ナレーター
普段はボッーとしている有栖が、そう呟いてしまうのも無理はない。
ナレーター
今度のクリスマスは、有栖が、白瀬市に引っ越して来てから初めてのクリスマスなのだ。
ナレーター
綿の雪や鈴に、小さなソリに長靴。有栖は2m半ほどもある大きなツリーに、一つ一つオーナメントを付けてゆく。
有栖
…あ
ナレーター
銀色の星が枝に引っかかり、ピョンと跳ね飛ばされて絨毯の上に落ちた。
有栖
またもや
ナレーター
有栖は脚立を降りて、星を拾う。
ナレーター
オーナメントを上手く付ける事が出来ず、下に落とすのはこれが17度目である。
有栖
やや落ち込むけどー
ナレーター
有栖は呟いて、窓の方に目をやった。
ナレーター
窓の外では、街がうっすらと白い雪に覆われつつある。
ナレーター
思えば去年のクリスマスは、南半球ーこの時期は真夏ーのアフリカにある巨大な古代遺跡の中でイブを迎えていたし、一昨年は、東南アジアの地下深い洞窟で迷子になっていた。覚えている限り、雪のクリスマスは初めてだ。
有栖
ホワイトクリスマスになったら、素敵です