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カゲロウデイズ

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カゲロウデイズ

1 - カゲロウデイズ

♥

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2018年03月23日

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これは、8月15日に起こった出来事。

ヒビヤ

やっぱ、都会は暑いねー

ヒヨリ

そう?

ヒヨリ

都会も田舎も変わらないじゃない

この日、僕は君と慣れない都会の景色を眺めていた。

────ミーンミンミンミーン

ヒビヤ

わ・・・

ヒビヤ

都会にも蝉がいるんだぁ

ヒヨリ

何言ってんの

ヒヨリ

当たり前じゃない

ヒヨリ

ほら、行くわよ

ヒビヤ

え!

ヒビヤ

ちょ、ちょっと待ってよ!

憧れの都会。

憧れの旅。

────そして

憧れていた君の姿。

ヒビヤ

・・・いいねぇ

ヒヨリ

は?何?

ヒヨリ

なんか言った?

ヒビヤ

え!な、なんでもないよ!

ヒヨリ

ふーん?

ヒヨリ

あ、信号変わったわよ

ヒビヤ

わわっ!

ヒビヤ

待ってよ!ヒヨリ〜!

ヒヨリ

ノロノロしないでよ

ヒビヤ

うぅ・・・

僕、雨宮響也は田舎の小学校に通っている普通の小学生。

そして、隣にいるこの美少女こそが朝比奈日和。

お金持ちで頭も良く、どこの女優よりも可愛い。

田舎の男共は皆、朝比奈日和に魅了された。

今では、『アサヒナー』と呼ばれるヒヨリのファンが絶えない。

・・・実は、その僕もアサヒナーであるのだ。

だが、一般のアサヒナーとは違う。

日和ぬいぐるみに日和ブロマイド、日和人形などなど日和グッズは大量に揃えてある(非公式)。

しかも、今はこうしてヒヨリの隣に立っている。

・・・そう!僕は今、ヒヨリと『二人きり』で旅行しているのだ!!

ヒビヤ

・・・ふふ

やばい。ニヤニヤが止まらん。

ヒビヤ

・・・ふへへ

ヒヨリ

ん?

ヒヨリ

・・・何ニヤニヤしてんの?

ヒヨリ

きもっ

出ました。ヒヨリのスーパードライアタック。

告白してきた熱い男共を『きもっ』の一言で何人ぶった斬ってきたことか。

・・・だが!怯まない!

僕は一流アサヒナーだ。むしろ、このドライはご褒美である。

うん、そうだ!

ヒヨリ

・・・何見てんの?

ヒビヤ

え?

ヒビヤ

い、いやぁー!

ヒビヤ

都会でもヒヨリはヒヨリだなぁって思ってね

ここで爽やか笑顔!

どうだ!!

ヒヨリ

・・・何その顔

ヒヨリ

キモっ

か、カウンター・・・だと?

なんてことだ...あぁ、儚く散っていったアサヒナー達が悟った笑顔で天から迎えにきている・・・。

────ありがとう────

ヒヨリ

ほら、ぼーっとしてないで

ヒヨリ

行くわよ!

ヒビヤ

!?

────手が

手がぁぁぁぁぁぁ!!!!!

ヒヨリの手とっ!手がっ!

あーーーーーーーーーーーーー!!!!!

僕がヒヨリと手を繋いでるよ!! おーい!おーい!やったー!

迎えに来ていたアサヒナー達は笑顔を一転させ、般若に変わっている。

知ったことか。

去るがいい、化け物共め。

ヒヨリ

・・・ねぇ

ヒビヤ

・・・・・・

ヒヨリ

ねぇってば

ヒビヤ

・・・・・・

ヒヨリ

~~~!!

ヒヨリ

ちょっと!!!!!

ヒビヤ

はいっ!?

やば、ぼーっとしてた・・・。

ヒヨリ

なに無視してんのよ

ヒビヤ

ご、ごめんなさい・・・

ヒヨリ

・・・ったく

ヒヨリ

ほら、あの店

ヒビヤ

え?

ヒヨリ

え?じゃないわよ

ヒヨリ

あの店に行くわよ

ヒビヤ

え、う、うん

ヒヨリ

ふんっ

・・・なんだろうか。

雑貨屋さんかな?ピンクの看板に大きいハートのオブジェ。

・・・派手過ぎやしないか?

ヒヨリ

・・・ちょっとここで待ってて

ヒビヤ

う、うん

────ミーンミンミンミーン

蝉の声が空の狭い街に響いている。

・・・暑い。

ヒヨリ、まだ帰って来ないのかな。

ヒヨリ

ヒビヤ

ヒビヤ

わっ!?ヒ、ヒヨリ・・・?

ヒヨリ

そうよ

ヒヨリ

はい、荷物係

ヒビヤ

えっ?わ、わわっ!

な、なんだ・・・この荷物は・・・。

この短時間でこの量・・・?

・・・

僕の身体、持つのかなぁ・・・?

ヒヨリ

あ、そうだ

ヒヨリ

はい

ヒビヤ

・・・え?

ヒヨリ

アンタにもプレゼント、買ってきてやったわよ

ヒビヤ

え!?

ヒビヤ

ぼ、僕にも!?

ヒビヤ

うわぁ!

ヒビヤ

ありがとう!

ヒヨリ

・・・何そのテンション

ヒヨリ

きもっ

ヒビヤ

=(´□`)⇒グサッ!!

ヒビヤ

・・・う、うぅ・・・

ヒヨリ

ほら、開けてみなさいよ

ヒビヤ

う、うん!

僕が大喜びしながら開けると・・・

ヒビヤ

!?

ヒビヤ

くっさ!?

ヒビヤ

え!?何これ!?

中から出てきたのは・・・鮭の切り身に顔と手がついた奇妙なキーホルダーだった。

ヒビヤ

・・・これは?

ヒヨリ

さぁ

ヒヨリ

面白かったから

ヒヨリ

あんた、こーゆーの好きそうだったし

まぁ、ヒヨリから貰ったものだ。

家宝にしよう。

ヒヨリ

・・・猫

ヒビヤ

え?

ヒヨリ

猫よ!猫っ!

ヒビヤ

猫・・・?

ヒヨリが指をさした方を見てみると、1匹の黒猫がいた。

ヒビヤ

わ、黒猫だね

ヒビヤ

あっ!逃げた!

ヒヨリ

・・・

ヒビヤ

可愛かったね、ヒヨリ

ヒビヤ

ヒヨリは猫好きなの?

ヒヨリ

・・・飼うわ

ヒビヤ

えっ?

ヒヨリ

あの子、飼うわ!!

ヒビヤ

えぇっ!?

ヒヨリ

行くわよ!!

ヒビヤ

え!本当に飼うの!?待ってよー!!

ヒヨリはばっと走り出し、人混みを避けながら黒猫を追いかけていく。

僕はヒヨリを見失わないように必死に追いかける。

────そして、人通りの少ない道に面した公園に出た。

ヒヨリ

いたわ!

ヒヨリ

ほら、ヒビヤ!

ヒビヤ

え?

ヒビヤ

う、うん・・・

ヒヨリ

・・・ふふふ

ヒヨリ

さぁ、大人しくうちの子になりなさい・・・!

・・・僕が猫だったら逃げ出しているだろうなぁ。

そう思いながら猫を覗き込んで見た時だった。

ヒビヤ

!?

・・・猫の目が・・・赤く光ったのだ。

ヒビヤ

ヒ、ヒヨリ!!

ヒヨリ

ん?なによ

ヒビヤ

この猫、おかしいよ!?

ヒヨリ

は?

ヒヨリ

何処がおかしいのよ?

ヒビヤ

目が・・・赤くなって・・・

ヒヨリ

はぁ・・・?

ヒヨリ

って、あぁっ!!

ヒヨリ

逃げちゃったじゃない!

ヒビヤ

で、でも・・・

ヒヨリ

追いかけるわよ!!

ヒビヤ

ちょっ!

ヒビヤ

ヒヨリ!!

ヒヨリは僕の声に振り返ることなく走り出す。

ヒビヤ

待ってよぉ・・・

走り疲れた僕はヨタヨタと後を追いかける。

────ヒヨリは黒猫のかけていった信号を渡る────

ヒビヤ

っ!!

ヒビヤ

ヒヨリっ!

ヒビヤ

赤信号だっ!!

────赤くなった信号に気づかずに君は飛び出した。

────キキィィィーーーッ!!

ヒヨリ

!?

ヒビヤ

ヒヨリっ!!!

僕は夢中になって地面をかける。

────だが、無惨にも彼女は手を伸ばした僕の目の前から消え去ってしまった。

ヒビヤ

ヒヨリィィッ!!!

────────────────

────ヒヨリ────

────守れなくてごめん────

────ごめん・・・────

────カチッカチッ・・・

・・・時計?

この音は・・・??

ヒヨリ

・・・ヒビヤ

ヒヨリ

・・・ヒビヤ!!

ヒビヤ

ハッ!!

ヒビヤ

・・・あれ?

ヒビヤ

僕・・・?

ヒヨリ

何ぼーっとしてんのよ

ヒヨリ

行くわよ

ヒビヤ

う、うん・・・

────あれ?僕、何をしてたんだっけ?

・・・思い出せない。

ヒヨリ

ほら、あそこ

ヒビヤ

え?

ヒヨリ

あの店

ヒビヤ

・・・あの店・・・

ヒビヤ

・・・うっ

あのピンクの看板・・・ハートのオブジェ・・・。

ヒヨリ

・・・ヒビヤ?

ヒヨリ

どうしたのよ?

ヒビヤ

・・・

ヒビヤ

・・・もう、今日は帰ろう?

ヒヨリ

・・・はぁ?

ヒヨリ

何言ってんのよ?

ヒビヤ

・・・なんか、具合が悪くて・・・

ヒヨリ

・・・

ヒヨリ

はぁ、仕方ないわね

ヒヨリ

倒れても困るし

ヒビヤ

・・・ごめんね

ヒヨリ

ふんっ

ヒヨリ

持つ少し頑丈な荷物係を選ぶべきだったわね

ヒビヤ

・・・

ヒビヤ

(やっぱ、荷物係としか思われてないか・・・)

・・・にしても、さっきの店・・・凄く嫌な予感がした・・・何だったんだろう。

────────────────

ヒヨリ

・・・にしても、やっぱり人が多いわね

ヒビヤ

そうだね

ヒビヤ

なにかのお祭りでもあるのかな?

ヒヨリ

お祭りぃ?

ヒヨリ

あるわけないわよ

ヒヨリ

いつも都会はこんな感じよ

ヒビヤ

・・・ふ、ふーん?

ヒビヤ

(え・・・大変じゃないかな・・・)

────ざわざわ・・・

ヒビヤ

ヒビヤ

ねぇ、ヒヨリ

ヒヨリ

なに?

ヒビヤ

なんか、凄く騒がしくない?

ヒヨリ

そう?

ヒヨリ

・・・ホントね

ヒヨリ

どうしたのかしら

ヒビヤ

・・・

ヒビヤ

(なんだ・・・?)

ヒビヤ

(急に寒気が・・・)

ヒビヤ

・・・ね、ねぇ

ヒビヤ

ヒヨ・・・

────ギギギ・・・ガシャーーンッ!!

────キャーーッ!!

炎天下に揺れた街中。

そこに人々の悲鳴がこだました瞬間だった。

ヒヨリ

っは・・・っ!?

ヒビヤ

・・・え?

目の前にいたヒヨリの身体に・・・

細長い鉄柱が突き刺さって貫通した。

ヒヨリ

っぐ・・・・・・

ヒビヤ

・・・ひよ、り・・・?

────キャーッ!人が!!

────救急車!!!

つんざく悲鳴と風鈴の音が蝉の声をかき消して響き渡る。

ヒビヤ

うそ、だ・・・

ヒビヤ

ヒヨ・・・リ・・・

ヒビヤ

う、ううっ・・・

ヒビヤ

うわぁぁぁぁぁあああっ!!!!!

────もう、やめてくれ。

こんなの、見たくない。

君が死ぬ姿なんて・・・

もう、見たくないんだ。

『何泣いてるのよ』

君がそう言って笑ったような気がした。

────────────────

何度も何度も繰り返す。

君は何度も死んでしまう。

────なんで?

なんで、こんな事になったんだ?

クロハ

それは、お前が祈っているからだ

ヒビヤ

!?

ヒビヤ

な、お前は・・・!?

クロハ

・・・

クロハ

まあ、冴える蛇と思っておけ

ヒビヤ

・・・冴える?

クロハ

そうだ

クロハ

・・・ところでお前、何度繰り返せば気が済むんだ?

ヒビヤ

・・・は?

クロハ

何度繰り返してもお前は見てるばかり

クロハ

何がしたいんだ

ヒビヤ

っ・・・!

ヒビヤ

僕はっ・・・ヒヨリを・・・

ヒビヤ

助けたいだけなんだっ!

クロハ

・・・ふはっ

クロハ

馬鹿な生命だ

ヒビヤ

くっ・・・

クロハ

愚かな生命よ

クロハ

なら、どうする?

ヒビヤ

どうするって...

クロハ

目を凝らしてみろ

クロハ

分かるはずだ

ヒビヤ

目を・・・?

────僕は思い出す。

走る黒猫。

あとを追いかけて飛び出すヒヨリ。

血飛沫の色。

君の香り。

嘲笑う陽炎。

────なんだ、もうとっくに解っていたじゃないか。

僕はふっと笑みを零した。

ヒビヤ

ごめんね、ヒヨリ

そして、ありがとう────

────────────────

────キキィィィーーーッ!!

ヒヨリ

っ!?

トラックがヒヨリに突っ込もうとしたその時、僕の足が強く地面を蹴った。

そして、そのままヒヨリの腕を引き寄せて飛び出す。

ヒヨリ

ヒビヤ・・・!?

────グシャッ!!

鈍い音がして、同時に息が出来なくなる。

ヒヨリの瞳ときしむ身体が光を乱反射させて目を眩ませる。

遠くに、『アイツ』が立っているような気がして、僕は嗤って言ってやった。

ヒビヤ

ざまぁみろよ・・・

もう、ヒヨリに手出しはさせない。

僕は安心してゆっくりと目を瞑る。

ヒヨリ

ヒビヤ・・・!

ヒヨリ

嘘・・・!

ヒヨリ

勝手に・・・死ぬな!!

ごめんね、ヒヨリ。

────幸せに、なってね────

そして、意識がなくなった。

────────────────

煩いほどの蝉の声が私の鼓膜を刺激する。

ヒビヤが死んだあの日を思い出しながら、息を吸い込んで飛び出した。

────落ちてくる鉄柱に身を投げながら、アイツの情けない顔を見る。

本当、最後まで鬱陶しいんだから。

ばーかっ。

それが身体を突き抜けた瞬間、蝉の声が一斉に止んだ。

────────────────

こうして、僕達は繰り返す。

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キモイ

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