コメント
13件
終わり方が最高ですね。ドキドキする匂いがします面白そう…!
10月になれば毎年この行事がやってくる
ハロウィン
仮装したり、豪勢な料理を作ったり
時には町を歩き回り、お菓子を貰って、悪戯をして
過ごし方は人それぞれだ
僕の家でもハロウィンは行われる
毎年10月の最後になると、親しい人達を集めてパーティーを開くのだ
僕の父さんはこの町で1番大きな図書館の館長を務めている
そのおかげで家はかなり裕福な方だ
デカい屋敷に人を集め、パーティーを開くのが母さんの趣味
事ある毎に人を招いては手料理を振る舞い、そして談笑に花を咲かせているのだった
エリック
エリック
最初こそ、仮装コンテストや怖い話大会等
何となくハロウィンに関係する催し物で盛り上がっていた
が、今となってはただの宴会状態
立食だったのに、いつの間にか椅子も用意されている始末
酔っ払いと食事に目が眩む子供の中では、誰がどう動いたって気にする者など居ないだろう
それでも俺は音を立てないように、そろりとパーティー会場を後にした
カチリと鍵を開け、泥棒の様に入り込んだのは父さんが館長を務める図書館だ
僕は暇さえあればここに来ていた
父さんの影響もあって、僕は読書が好きだった
僕は今23なんだけど、読書を本格的に始めたのは5歳の時
18年間、ここにある本を読んできたけれどまだ半分も読めていない
それ程にうちの図書館はデカい
エリック
昨夜も寝る前にここで本を読んでいた
僕は家族特権で、いつでも何でも何冊でも読んで良い事になっている
ただし、館外へ本は持ち出さない事
一般の人が優先である為、読みかけであっても貸し出さなくてはならない
幼い頃には駄々をこねた事もあったが、今ならちゃんと理解が出来る
昨夜に本をしまった棚を見つけ、本の背表紙をなぞりながら目的の本のタイトルを探す
エリック
エリック
エリック
目的の本が無い事はすぐにわかった
特に自慢とゆう訳では無いが、読んだ本はどこにあるか把握している
覚えたくて覚えたんじゃなくて、気付いたら覚えていた
エリック
エリック
周りの本棚を見渡し、興味をそそる背表紙がないかじぃっと見定める
エリック
そしてある本に目が留まった
他の本たちと一緒に行儀良く並んでいたその本は、背表紙にタイトルが記載されていない
僕の胸は躍る様に高鳴る
こーゆういかにも何かあります!って本が僕は大好きだった
真っ黒無地な背表紙を摘んで引っ張り出し、まずは本の外観を楽しむ
しかし驚く事に、この本は背表紙以外も真っ黒で文字らしいものが一切無かった
エリック
エリック
エリック
1人きりの空間に、ツッコミを入れてくれる人が居るはずもなく
僕は虚しくセルフツッコミを披露する羽目になった
本を脇に抱え、入り口横の小さなスタンドライトへ向かう
小さなサイドテーブルに置かれたライトの灯りを点け、近くにあった椅子を引き寄せる
カタンと控え目に音を立て、僕は椅子に腰掛けた
読書のし過ぎで視力が落ち、掛けざるを得なくなった眼鏡をクイッと押し上げる
エリック
エリック
あまりに真っ黒すぎて、流石に開くのを躊躇う
開いた瞬間呪われたりとか、異次元に飛ばされたりとか
エリック
エリック
躊躇うと言っても怖いわけではない
こんなに雰囲気を出しておいて、ごく普通の本だったらと思うと最初の1ページを開けないのだ
エリック
エリック
僕は表紙に手をかけ、ゴクリと唾を飲み込んだ
エリック
ダラ
エリック
ダラ
ダラ
ドキドキと緊張しながら本を開こうとした時、すぐ横の入り口から1人の男が顔を覗かせた
僕は驚きのあまり手を滑らせ、本をバサッと落としてしまった
飛び出そうだった心臓を抑え、僕は急いで本を拾う
エリック
エリック
ダラ
エリック
気怠そうに入ってきたのは、僕の親友であるダラ
ダラとは学生時代からの付き合いで、お互いに働き始めても何となくで連んでいる
何度か家にも遊びに来ているので、僕の両親とも仲が良い
ダラは僕と同様、近くの椅子を持ってきて僕の近くに腰掛けた
エリック
ダラ
ダラ
ダラ
エリック
エリック
眉を顰めてそう伝えれば、ダラは鼻で僕を笑う
ダラ
ダラ
ダラ
エリック
エリック
エリック
エリック
ダラ
エリック
エリック
ダラ
ダラ
ダラ
エリック
ダラは頭の後ろで手を組み、椅子の背もたれに深々と体を預けた
チャラそうな見た目をしてるのに、ダラは騒がしいのが嫌いだったりする
それに、僕と同じで読書も好きだ
人は見かけによらないって、ダラの事を言うんだなぁと何度も思う事がある
僕は肩を竦め、ダラから視線を外して真っ黒本へと移した
ダラ
エリック
エリック
エリック
ダラ
エリック
エリック
エリック
真横から見れば、白い紙がギッシリ詰まっているのが分かる
開ける紙の集まりならば、コレは本と呼んでも良いだろう
僕はダラにも見えるように、サイドテーブルへ本を置いた
ダラ
エリック
ダラ
ダラ
エリック
ダラ
エリック
エリック
ダラは本の向きを自分の方に変え、躊躇う事無く表紙を開いた
まぁ、真っ黒すぎて表紙がどちらで向きが合ってるのかも分からないのだけど
開いた時にパラッと音がして、この本が長い間開かれていなかったのが伝わる
表紙を開いた先には、まだ文字は見えずに真っ白なページが顔を出した
エリック
ダラ
僕もダラも黙ったまま、ただ真っ直ぐに本を見詰めた
そしてダラが真っ白なページに指をかける
その指がページを捲る映像が、何故だかスローモーションで見えた
次のページが見えた時、僕の視界は暗転した
第1話 『エリックと親友と読書』 〜fin〜