不破湊
家に泊まった友人を見送り、玄関のドアが閉まったのを確認して、空虚を見つめる。
玄関で1人、しゃがみこんで大きなため息を吐く。
急な自己紹介になるけど、俺は不破湊って言います…。
昨日、っていうか今日、かな。 やらかした張本人です……。
不破湊
最悪だ…… 本当に…
まさか初の顔合わせでこんなことになるとは……
もしこの状況が俺じゃなくても、今の俺と同じくらい、いや、それ以上に自己嫌悪に陥ると思う。
しかもなんか興奮して勢いで告っちゃったし……
ほんと、
不破湊
こんなはずじゃなかった…。
こんなはずじゃなかったんだよ…
本当に…
もっとたくさん会う回数を重ねて、ぺんちゃんに意識してもらって、ちょうど良いくらいに良い雰囲気になってきたら……
って、
思ってたのに……
………
いやでも、
後悔の方が大きいけど、
正直
めっっっっちゃ
可愛かった……。
いやガチで。
俺は普段使わない頭を少し稼働させながら、リビングに戻って2人で食べた朝食の食器を片付ける。
ここで正直に話してしまうと、
実はぺんちゃんがべろべろに酔っ払ったのは俺のせいであるわけで。
ぺんちゃんが飲んだことないような名前の、度が強いお酒を、これでもかと勧めたのが俺だからだ…。
いや、でも別にあそこまで進むとは思わなくて、!
初の顔合わせでどっちかが潰れるまでって前言ってたし、それだったら俺の家に泊まってちょっとでも長く一緒にいれたらなと思っただけで、
別にあそこまで進もうとか、思ってなかったし、
いや、俺も自分の予想以上に楽しくなっちゃって、思ったよりも飲んじゃって酔っちゃったのが原因なんだけど、、
つまり、今回のやらかしは俺の予想外が多かった。
まさかキスされるとは思わんやん!?
俺、普通にぺんちゃんをベッドに寝かせて、俺はリビングのソファで寝るつもりだったのに!!
しかも当たり前かのように告白してくるし……
その時の酔いの熱に浮かされた時の表情と言ったら………
やばい。
本当にやばいよねこれは……
いや多分俺に酒が入ってなかったらギリ耐えれたけども。
結構酔っ払ってた俺は抗えなかったよね普通に…
思い出すのはいけない。 歯止めが効かんくなる…
俺は自分を落ち着かせるため、コーヒーを淹れてソファに座る。
不破湊
そう、とりあえず、ぺんちゃんが返事を言ってくれるまでは、大人しくしなくては。
いつまでもくよくよするのは俺じゃないし、何よりもう告ってしまったし。
ただ、…好きな人だからと、シラフじゃない相手の同意も聞かず、酔いの勢いのままおっ始めてしまうのは、本当にいただけない…。
それだけは、反省であり、気を引き締めなくては。
不破湊
俺は自分に踏ん切りをつけて、今日の配信の準備でもするか、と作業部屋に向かった。
不破湊
不破湊
不破湊
ぺいんと
ぺいんと
不破湊
不破湊
ぺいんと
ぺいんと
不破湊
不破湊
不破湊
ぺいんと
ぺいんと
ぺいんと
ぺいんと
ぺいんと
不破湊
ぺいんと
ぺいんと
不破湊
ぺいんと
不破湊
ぺいんと
不破湊
ぺいんと
不破湊
通話
03:26:08
不破湊
ぺいんと
不破湊
ぺいんと
ぺいんと
不破湊
不破湊
ぺいんと
ぺいんと
不破湊
不破湊
不破湊
不破湊
ぺいんと
ぺいんと
ぺいんと
不破湊
通話
02:14:57
不破湊
不破湊
ぺいんと
ぺいんと
不破湊
不破湊
ぺいんと
通話
03:42:39
ぺいんと
不破湊
不破湊
あれから2ヶ月。
不破湊
ぺんちゃんから、なんの音沙汰もないのだ。
いや、考えているだけなのかもしれんし…焦りは良くない…
でも、
その間に3回くらい、またご飯いかん?って誘ったけど、撮影やら他に用事あるやらで断られっぱなしだ…。
撮影は仕方ないし、他の用事だって重要だ。俺が聞くよりも前に予定が入ってるんだったら、それは仕方がない。
だが…
あんなことがあって、3回連続断られるとなると、絶対原因はあれだよなと思うわけで、
流石の俺でも、もう誘わない方がいいかなと心が折れそうになるわけで…
不破湊
でも、
ぺんちゃんがもし嫌がってるなら、もう無理にやりたくはないなぁ……
不破湊
不破湊
でもゲームとかはほぼ100%やってくれるんだよなぁ…
通話しても普通だし……
不破湊
このままもやるのも嫌だし、もう直接聞いちゃうか…
俺は断られる未来が頭をよぎりながら、重たい腰を上げてスマホに手を伸ばす。
不破湊
ぺいんと
ぺいんと
ぺいんと
不破湊
不破湊
ぺいんと
ぺいんと
ぺいんと
不破湊
ぺいんと
ぺいんと
不破湊
俺は通話ボタンを押す前に、一つ深呼吸をする。
不破湊
鼓動が落ち着いたのを感じ、意を決して通話ボタンを押す。
プルルルル
プルル
ぺいんと
ワンコールも持たず、ぺんちゃんが通話に出る。
俺は息を呑んだ。
不破湊
ぺいんと
不破湊
ぺいんと
不破湊
ぺいんと
不破湊
ぺいんと
不破湊
ぺいんと
不破湊
不破湊
不破湊
不破湊
ぺいんと
不破湊
ぺいんと
不破湊
毎回思うが、ぺんちゃんはキスとかじゃなく、ちゅーっていうんだよな…可愛いな…
と脳が話題から逸れるのを必死に阻止する。
ぺいんと
ぺいんと
ぺいんと
不破湊
ぺいんと
ぺいんと
不破湊
ぺいんと
不破湊
ぺいんと
不破湊
それって、
ぺいんと
それってそれって!?
ぺいんと
それ…って……!!
そんなぺんちゃんからの熱烈な好意を受けて、俺が平然といられるわけがなく、俺の鼓動は速度を増し、顔は熱くなる。
次の言葉を、
俺が切望していたその言葉を、
今か今かと待ち構え、
絶対に聞き逃すまいと、聴覚に全神経を集中させる。
ぺいんと
不破湊
ぺいんと
不破湊
ぺいんと
不破湊
予想外の言葉が耳に入ってきて、一瞬、思考が遅れる。
ぺいんと
不破湊
ぺいんと
不破湊
ぺいんと
不破湊
ぺいんと
不破湊
ぺいんと
不破湊
ぺいんと
ぺいんと
ブツッ
ツーツー
俺の期待していた返答はなかった、と、
怒りにも似た俺のその感情と、
スマホ画面の通話終了のその文字が、
俺を現実に引き戻す。
不破湊
不破湊
なるほど。
なるほどなるほど、
なるほどね?
ぺんちゃんは、勘違いをしているのだ。
さっきの通話の声の感じからも、
早く終わらせなきゃという焦りからも、
なぜそんな結論に至ってしまったのか、という疑問が、
一本の糸のように、ひとつひとつ解けていく。
不破湊
不破湊
不破湊
そう、ぺんちゃんは、
確かに、これは恋だと、自覚はしたのだ。
しかし、俺が、本当にぺんちゃんを好きなのかと、不安になったのだ。
ぺんちゃんはきっと、自分は性別とは関係なく、俺のことが好きだと、理解はしたものの
俺が、ぺんちゃん自身と同じく、性別を気にしないとは限らないと、
そう考えてしまったのだろう。
不破湊
そして、最初から振り返って、
俺よりも先に、ぺんちゃんが俺に好きと言って、好意をキスという形で示してしまったから、
俺が、
ぺんちゃんを傷つけないように、「俺も好き」と嘘をついたのだと、
そう、思ったのだろう…。
不破湊
俺は興味ない人にはそれなりに、スルースキルという対応をする。
それを分かってない…。
俺が、誰にも彼にも自分と同じ対応だと思っているのだ。
不破湊
今回の通話だってそうだ。
俺から、「あの時の好きは勢いであって、やっぱり他にいるから、この話は無しにしたい」とか、
そんな感じの話が来ると思ったのだろう…。
だから、先手を取って、自分が傷つかないように勢いでゴリ押した。
でも多分ぺんちゃんは今きっと泣いてる。
嗚呼、……今のぺんちゃんの解釈の俺は、そんなぺんちゃんの背中をさすって慰めてあげることもできない…。
それがものすごくもどかしい…。
…………
不破湊
不破湊
自覚したにも関わらず、
勝手に俺の気持ちを解釈して、
俺から逃げようだなんて
不破湊
不破湊
だから
次にご飯行く時は覚悟してね
この前は勢いで一線超えちゃって、あんまり気持ち伝えられなかったけど、
不破湊
これでもかと
認めさせてやるから。
ピコン
不破湊
不破湊
次にご飯に行けそうな日にちが書かれているであろう、その通知を確認して、俺はそう一言呟き、るんるんと、返事を打つのであった。
コメント
2件
コメ失礼します、好きすぎます…!🥹🥰