慎哉
…………
紅紫
もう、それくらいにしたら……?
慎哉
……また、飲める…………
紅紫
無理するな
慎哉
……無理なんか、していない…………
紅紫
ウソつけ。顔が真っ赤だよ
紅紫
水、持ってくるから
しばらくして、戻ってきた
紅紫
ほら、飲んで──
水の入ったコップを差し出す
慎哉
…………
それを受け取り、水を飲み干した
紅紫
ベッドに横になる?
慎哉
……大丈夫だ
紅紫
全然、大丈夫そうには見えない
慎哉
…………
紅紫
最後まで、付き合わなくてもよかったのに──
紅紫
ボクが酒豪だって、知ってるでしょ
慎哉
紅紫
立てる?
ベッドに横たわった
紅紫
左向きにすると、いいらしいよ
慎哉
(……顔がよく見える)
紅紫
どうしたの? じっと見て
慎哉
……なんでもない
紅紫の視線を独り占めできて、内心愉悦を覚える
カチャ
逝
紅紫〜、一緒に酒飲もうぜ♪
ぴくっ
慎哉
(……また、こいつか……!)
紅紫
相変わらずだな、お前は──
ベッドから離れていく
慎哉
……!
思わず紅紫の袖を掴もうとしたが、伸ばした手はむなしく、くうを切った
どうして……?
俺よりも、そいつの方がいいのか?
逝
シンちゃん、寝込んでんの?
紅紫
ただの飲みすぎだよ
紅紫
──一緒に飲んでたからさ
さっきまで、そこにいたのは俺なのに────
紅紫
酒瓶と空き缶、片付けるから
紅紫
ちょっと、待ってて
逝
オレも手伝う
数分後
紅紫
ひと通り片付いたな
逝
じゃあ、飲むか♪
コップに日本酒をそそぐ
紅紫
──桃の香りがする
逝
結構うまいぞ
一口飲む
紅紫
あ、おいしい☆
逝
だろ?
……なんで?
……そんな楽しそうな顔をする?
2時間後──
紅紫
紅紫
……ん…………
ぱちり
紅紫
(あ……れ……?)
紅紫
(いつの間にか、寝てた……)
身体を起こす
逝
……ぐー……
一升瓶を抱えて眠っていた
紅紫
……しばらく、起きないな
紅紫
気配を感じ、振り返る
慎哉
…………
紅紫
……慎哉?
真顔で紅紫を見つめている
紅紫
……どうした?
相手のただならない雰囲気に戸惑う
紅紫
(……なんか、様子がおかしい)
慎哉
……紅紫
紅紫
……!
からめ捕るように抱きしめられた
紅紫
え? ちょっ……!
そのまま、床へと押し倒される……
紅紫
慎哉
──誰よりも、あんたのことが…………
紅紫
……っ
ゆっくりと顔が近づいてきた
紅紫
え、あ……
思わず目を閉じる
ぽたっ
紅紫
(……ん?)
頬になにかの液体がかかった
そっと目を開けると────
慎哉
目に涙を浮かべ、泣いていた
慎哉
……なんで?
慎哉
……そんなに、俺が嫌なのか?
紅紫
…………
慎哉
……どうしたら
慎哉
俺の思いを、受け入れてくれる?
慎哉
慎哉
どうすれば、あんたは……
慎哉
振り向いてくれるんだ…………?
紅紫
…………
ぽんぽん
頭を優しく撫で、慎哉を抱きよせた
慎哉
……っ…………
紅紫
──落ち着くまで、そばにいるから