第三革命ゲームが終わり、嵐が去ったかのように静まり返った教員室内。
イガラシ
少し、状況を整理しましょうか。

残念ながら校長はこの世にいないが、次席の教頭がいる。
今後どうすべきか決めるのは、やはりここと言うことになるだろう。
ヤナギ
そうですね。

ヤナギ
あまりにも常識外れのことばかりが起きていて、みんな混乱しているでしょう。

ヤナギ
簡単にだけど整理したほうがいい。

イガラシ
まず、この高校は不特定多数の【革命軍】によって占拠された。

イシカワ
真偽は不明だが、爆弾も仕掛けられている可能性があり、逃げることは難しい。

イガラシ
そもそも、生徒を置いて自分達だけ逃げるなんて真似はできないな。

ミヤギ
厄介なのは、その生徒の中に【革命軍】が混ざってる可能性が高いってこと。

ミヤギ
いわゆる、とくりゅう犯罪みたいなやり方で、本陣となるナポレオンは、下手をするとここにいない可能性がある。

イシカワ
いや、ナポレオンは生配信なんかをしてるみたいだし、まず間違いなくここにはいないだろう。

イガラシ
……どうも、そこが引っかかるんだよ。

イガラシ
どうして、わざわざナポレオンは生配信で姿を見せた?

イガラシ
配信中の画面を、わざわざ2分割にまでして、状況を見せたわけだけど、その時点で映し出されていたのは、元3年D組の教室と、多分テレビから引っ張ってきたであろう、ここ――教員室の映像だった。

イガラシ
明らかにナポレオンが姿を現す必要はなかったと思うんだ。

ヤナギ
それだけ出しゃばりなのでは?

イガラシ
そう言ってしまえばそれまでなのですが、たった数分の登場のためだけに、わざわざマントを羽織り、あのドクロのマスクをして――と。あたかも自分が3年D組の教室にいることをアピールしているように思えてしまって。

ミヤギ
確かに、あからさまに自分が3年D組の教室にいることをアピールしているような感じではあったよね。

イガラシ
あぁ、そもそもナポレオンの存在はネットから世の中に広がった。

イガラシ
それに同意したうちの学校の生徒が、ナポレオンの指示に従って革命とやらを起こしているように見えるけど――。

イガラシ
果たして、本当にナポレオンは外部の人間なのか?

ミヤギ
いや、でもナポレオンは元3年D組の中にいるって――。

そこまで言いかけて何かに気づいたのか、シズカは小さくうつむいた。
イガラシ
ごめん、シズカを疑っているわけじゃないんだよ。

イガラシ
でも、ナポレオンの動き方がどうもわざとらしいというか、露骨というか――。

イガラシ
ごめん、まだ確証もないし、嫌な気持ちにさせたら申し訳ない。

ヤナギ
まぁ、確かに。

ヤナギ
元同級生だかなんだか知りませんが、わざわざ遠方からここまで駆けつける人間なんて、珍しいですからね。

イシカワ
ヤナギ先生、言葉を選んだほうがいいですよ。

フワ
あの、それはそうと、これからどうするんですか?

キョウトウ
と、とにかく外部に助けを求めてみるか。

しかし、何度か受話器を上げたり下ろしたりしながら首を傾げる。
キョウトウ
駄目だ、繋がらないらしい。

ヤナギ
個人の通信手段までは奪えなくとも、学校の電話は配線さえ切ってしまえば使えなくなります。

ヤナギ
大方、それに詳しいやつが外部との連絡を遮断したのでしょう。

イシカワ
まぁ、俺達のスマホは使えるって辺り、なんだか詰めが甘い感じがするな。

イガラシ
――その辺りのことも含めて、いかにも子どもが考えたやり方って感じはするんだ。

オオタ
あの、私から提案するみたいで申し訳ないんですけど――。

キョウトウ
あぁ、そんなことはない。

キョウトウ
なんでも言ってください。

オオタ
とりあえず、生徒達の様子見に行きません?

オオタ
この事件が起きてから、ずっと不安だと思うんです。

イガラシ
そうですね。手分けをして、生徒達の様子を見てきたほうがいい。

イガラシ
ただ、生徒達の中に【革命軍】が混じっている可能性が高いから、ぞろぞろと様子を見に行くわけにもいかな――。

そこまで言いかけて、ミヤギがある方向へと視線を向けていることに気づいた。
イガラシ
なるほど、今度はこっちの番ってことか。

イガラシは小さく溜め息を漏らすと、一同のことを見回した。
イガラシ
これから、各教室を見回って来ます。

キョウトウ
しかし、校内には【革命軍】がうろついているんだ。

キョウトウ
生徒のことも心配だが、様子を見に向かって【革命軍】にやられたら身も蓋もない。

イガラシ
大丈夫ですよ。

イガラシ
あんまり本意ではありませんが、手段はありますから。

不敵な――いや、なかば呆れたかのような笑みを浮かべたイガラシ。