嘘の指輪と本当の愛

第7話

壊れた沈黙

あらすじ

玲央が奈々に大胆にキスをしてしまった。 その現場を目撃した奈々の婚約者蒼太。 この後奈々はどうなってしまうのか。

東京の夜景を背に、玲央は奈々を抱き寄せていた。 唇と唇が触れ合う、深く、熱いキス。 拒むこともできず、 ただ、目を閉じたまま受け入れてしまったその一瞬。

静かな声が、空気を裂いた。

奈々が驚いて顔を上げる。 そこには、蒼太がいた。

ネクタイもジャケットも乱さず、姿勢も乱していない。 なのに、彼の目だけが、完全に壊れていた。

足音も気配もなかった。 それでも彼は、屋上の入口からすべてを見ていた。

玲央が、わざと見せつけるようにキスをしたことも 奈々が拒まずに、そのキスを受け入れたことも。

その言葉は、まるで冷水だった。 いつもなら「話せ」「教えて」「お前の気持ちを聞かせろ」と詰め寄ってくる彼が、何も言わず、背を向けた。

玲央が口を開く。

蒼太は振り返らない。 その背中だけが、震えていた。

それだけを言い残して、彼は扉の向こうに消えた。

その音は静かだったのに、奈々の心に残ったのは、怒鳴られたわけでもないのに泣きたくなる声だった。

そのひと言が、まるで奈々の中で何かを決めたように、夜の空気に溶けていった。

どうだったでしょうか？

蒼太の一途な思いが玲央の行為によって 破壊されましたね。

次回：奈々の罪悪感

お楽しみに

バイバイ