今日も今日とて、事務所の机に齧りついて、終わらない入力作業を続けていた。
小林幸真
突如、小林が現れたかと思えば、俺の手に何かを握らせてきた。
手を開いてみるとそこには
何の変哲(へんてつ)もない、草臥(くたび)れたドッグタグが置かれていた。
阿久津敏郎
小林は一時期傭兵をしていたが、今は軍を除籍(じょせき)した身。ドッグタグ自体は持っていても何ら不思議な事ではないが、何故これを俺に渡してきたのか、意味が分からず、椅子に座ったまま、小林の顔を見上げる。
小林幸真
小林幸真
小林幸真
小林幸真
ドッグタグはただの認識票。そんな効果はない。
そもそもドッグタグは、戦死した際に、一つは戦死報告の為、持ち帰り、もう一つは遺体の足につけるもので、二つ持つていないと意味がない。 ※ドッグタグ:原形を留めてない程に遺体が損傷した場合でも、タグが無事なら、その肉片が誰なのか特定出来る。 アメリカ軍はドッグタグに、9桁の数字のSS番号(Social Security)を刻印しており、銀行口座と紐付けられている為、家族しか知らない。家族以外で渡す場合は、本当に大事な人に限られる。二枚式と分割タイプがある。
これは、数多の戦場を駆けていた頃の小林なりのジンクスなのだろう。
阿久津敏郎
俺が持つだけで、小林が安心するというのなら、大事に保管しておこう。
阿久津敏郎
小林幸真
阿久津敏郎
小林幸真
阿久津敏郎
小林幸真
阿久津敏郎
小林幸真
和やかな空気が流れていく。
小林幸真
阿久津敏郎
小林は事務所を後にした。
小林と入れ替わりで、華太が戻ってきた。
小峠華太
小峠華太
阿久津敏郎
小峠華太
華太が俺の手に握られた、ドッグタグに気づく。
小峠華太
くすっと華太が笑い声を漏らす。
阿久津敏郎
小峠華太
華太は小林から預かったドッグタグを、俺宛の好い人からのプレゼントだと勘違いしているらしい。
阿久津敏郎
小峠華太
阿久津敏郎
小峠華太
阿久津敏郎
小峠華太
華太はそう言ってタグの裏側を指差す。
小峠華太
小峠華太
阿久津敏郎
刻印されたメッセージには、華太の言うような意図が含まれているか、はたまた偶々なのか、分からないが
阿久津敏郎
落とさないよう、俺は大事に胸のポケットにしまった。
おわり
あとがき ドッグタグのデザインが好きで、一時期よく着けてた。アクセサリー用の洒落たデザインの物もあるけど、ミリタリーデザインの物の方が好き。ミリタリーグッズ好きな割には、何故かそっち系の知識はつかなかった模様╮(´-ω-`)╭ でも、ミリタリーオタクは凄いよね。モデルガン改造して、実弾撃てるように改造して逮捕された人とかいることを考えると、地頭が良いんやろな。うちには無理やな。
おまけ
墓前に赤、黄、白、ピンクの色とりどりの菊の花を供える。
小林幸真
小林幸真
小林幸真
小林幸真
話しかけても返事はこない。
だから
小林幸真
小林幸真
カシラからの返事がない事をいいことに、一方的な約束をとりつけた。
そよそよと秋風が吹くなか、俺は約束を取りつけるだけ、取りつけて、立ち去った。
おわり
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