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うひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ
けたたましく笑う女……の顔が張り付いた化け物
うねうねと身体を反って こちらに猛然と向かってくる
この化け物に捕まった場合 命を落とす恐ろしさよりも、命を落とすまでに体験するであろう苦痛を恐ろしく思った
なぜなら 女の口から覗く牙は鋭利で長い
しかも 赤黒く染まっているではないか
逃げるしかない
逃げなければ、待つのは拷問の末の死だ
秋斗
一弥
雅也
雅也
俺たちは一斉に走り出した
こういう時、映画やドラマでは足がもつれて動かなくなる登場人物がいる
あまりの恐怖に直面したとき、体が言うことを聞いてくれないのだ
見ている側は同じく恐怖に慄き、恐怖ゆえの苛立ち、焦りを感じる
しかし、この場合は逆だった
本能的恐怖が チーターに狙われた草食動物の如く そのポテンシャルを最高に高めていた
うーん
創作や夢の中と違って 今の自分はとても冴えているなぁ
俺はこんな状況下で、呑気なことを思う
まるで
まるで、頭がおかしいやつみたいだ
秋斗
雅也
精神病者め
精神病者は人間じゃない
イかれてんだよ。
人間のクズの掃き溜めみてぇなもんだ。
気持ち悪りぃ。
これは誰の言葉だったか
秋斗
雅也
一弥
そんな奴らはまともじゃないし、クズに違いねぇだろ。
お前の言ってることが分からない
家の恥さらしめ
違う
雅也
一弥
一弥
雅也
無駄無駄。 頭がパーのやつのことなんて、分かりっこねぇよ。
正直、死んで欲しいなんて考えてしまうの
だって、あの人が生きているだけで 周りの人が死にたくなるでしょう?
あの人だって辛いかもしれないけど、私たち家族はどうなりますか!?
あの人が憎いです!!
この子の言う通りだわ
お荷物ですよ、本当に
何故、そんなことが言える?
違う
ねぇ、あなた、もう言ってやるべきです
あの人に、出ていってくれと
認めない
違う
ああ、もう我慢の限界か
俺もあいつが前から気に食わなかったんだ
自分のことも世話できないなら、生きる価値なんてない
キチガイは、この世から消えてくれ
消えてくれ
ちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがう
おれはあたまおかしくないおれはあたまおかしくないおれはあたまおかしくないおれはあたまおかしくない
おかしくない、おかしくない
きが、ちがってもいない
くるってるのは
くるっているのは
狂っているのは
お前らだぁぁ!!
秋斗
秋斗
俺は意識も混濁したまま 一番に近くにあった部屋へと駆け込んだ
とっくに、一弥先輩も雅也先輩も遠くへと逃げたみたいだ
ただ一人、部屋に篭った
鍵もなく頼らない扉の向こう
巨体を引きずるように、どすどすと音がしている
アアアアアア
一語一語をしっかりと発音している
苦しんでいると言うより、やはり笑って獲物を探しているようだ
アアァァァァ
アアァァァァァァァァァ……
声が遠くなった
俺はその場でへたり込んで、疲労感が押し寄せてきた
秋斗
秋斗
ドンッ
部屋の奥で物音がした
秋斗
声はない
さほど広くもないのに、光源が全くないためか暗闇が支配している
その暗闇のなかに、何かがいるのだ
秋斗
耳を澄ますが、何も聞こえない
気配すらもなかった
秋斗
ドンッ
真横にあった扉が音を立てた
音源は外からではない
内側からのようだった
秋斗
???
秋斗
見ると、若い男がそこに居た
虚ろな目で、ただ扉を見ている
何をするでもなく、ただ見ていた
???
秋斗
秋斗
???
秋斗
???
???
男が一言だけ発したその瞬間
秋斗
強烈な耳鳴りと眩暈を伴って
走馬灯のように様々な映像や言葉が脳に入り込んできた