この作品はいかがでしたか?
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コメント
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今回色々ありましたね.ᐟ.ᐟ 少々急展開すぎた…??🤣 伏線とかは色んなところに散りばれられているので、よく見ておいた方が「あーっ!」となりやすいかもですねぇ~
それは、遠い昔の話
ここが嫌いだ
でもお陰で、点滴の針も
鬱陶しいほど嗅いだ薬品の臭いも
もうなんとも思わないほど慣れてしまった
目が痛くなるほど白い部屋
部屋を出る時はリハビリのみ
なのに栄養は沢山摂っていて
そんな日々が嫌で、嫌で
とにかく必死に生きていた
でも、帰りたいとは思わなかった
幼い頃から、身体が弱かった
小学校には病院から通っていたし
授業を最後まで聞いたのは数えるくらいしかない
遠足とか、行ったこともなかった
まるで、灰色の世界だった
看護師
看護師
看護師
あの人が言ったように
みるみる身体は動くようになり
日常生活を難なく送れるようになってきた
……もう二度と戻りたくなかった
周りは、もうグループができてしまって
いつも蚊帳の外、と言っても過言ではないくらいだった
せめて置いていかれないように
沢山の人に合わせた
でも、そんな色のない毎日が
ある一言で変わることになる
縦割り遠足
慌ただしく、低学年の面倒を見ているが
危なっかしいことは全然ない
むしろ、慣れているように感じた
そう思い、レジャーシートを広げたところで
隣に違うレジャーシートが置かれたのに気づく
予想していなかった誘いを受け
思わず声が裏返りそうになったものだ
病院籠りだった時の娯楽は
「オカルト」だった
よく病室のテレビで
在り来りなBGMと共に流れ出す映像を
栄養たっぷりの食事を食べながら観ていた
あの時は申し訳なかったと思う
後輩からいきなり迫られるなんて
しかもそれがクラスの隅にいる人間だなんて
きっと怖かったと思う
……でも
本当に驚いた顔をしていた
それで、理解した
彼女は、「からかわれている」と
いつも見せる顔をしなかった彼女は
花弁を剥ぎ取られた花のようだった
思えばこっからだった
……
───「ボク」が
初めて、この人と話してみたいと思えたのだ
それから何年かが経った
春の肌寒い日
約90名が、相模原中学校を卒業した
左胸につけた花飾りを上下させながら
皆別れを惜しんで、泣いている
他の学年は、もうほとんど帰ってしまった
先輩は、高校から都会に引っ越すらしい
当分会えないと思い
ボクは、挨拶に来たのだ
どうせすぐ連絡しなくなるだろうに
他のクラスの人間とメールを交換している
──その中には、「先輩」もいる
…大勢の友達に囲まれた、先輩がいる
なら、ボクは?
肌寒い季節
大袈裟かもしれないが
世界に、置いていかれた気がした
あぁ、今だけ、今少しだけ
白い息よ
ボクの涙を、隠しておくれ
ピッ……
ピッ…
ピ……ッ
ピーーーーーッ……
─照明の切れた、薄暗い部屋
机の上には
乱雑に広げられた新聞が置いてある
部屋主は、今は居ないようだ
それでも、ベッドにはシワがあり
まるで、さっきまで使っていたという雰囲気だった
新聞の見出しには、こう書いてある
2017年 相模原毎日新聞 朝刊 8/15
【奇跡の生還】
二〇一七年 八月十六日。
相模原町の相模原橋で、飲酒運転の自動車に
当時、相模原小学校に通っていた
白波 渚さん
がはねられ、河に転落する事故が発生した。
渚さんは数日間意識不明だったものの
無事目を覚ました。
渚さんの母親である白波 莉仔さんは
「一時はどうなる事かと思い、夜も眠れない日が続いたが、今はただ、神様や医療従事者の方々に娘が無事である事に感謝している。」
と話していた。
渚さんは事故の前と後の記憶が曖昧であるとも語った。
渚さんは比較的重症だったため
莉仔さんは「まるで奇跡のようだ」と話している。
散らかった部屋
ダンッ
戸棚のデジタル時計は
8月15日 3:34AMを指している
ギイギイと鳴る階段を下りて
とあるドアの前に立つ
鍵は閉まっている
───「ボク」は、部屋に入った