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いっちゃんとたっくん

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いっちゃんとたっくん

20 - いっちゃんとたっくん20

♥

40

2020年02月24日

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いっちゃんのおいしいごはんを食べて

その後もたくさんの動物を見て

あっと言う間に帰る時間になってしまった

17時までには児童相談所に戻らなければいけない

何となくわかっていたけれど

どうしても離れたくなくて

美結

やだ……

郁美

美結……

美結

いっちゃんといる……

美結

たっくんといる……

握りしめた手を離したくなかった

いつまでも二人のそばにいたかった

でも相談所の職員さん達は

無理に私を車に乗せることはせず

しばらく見守ってくれていた

拓郎

また会いに行くからさ

拓郎

今日は帰ろう?

郁美

大丈夫だから

郁美

また指切りしよう

美結

うん

やっと落ち着いて車に乗ると

直ぐにいっちゃんが隣に座ってくれた

拓郎

すみません!

拓郎

まだ間に合いますかね!?

沢村(職員)

ちょっとギリギリですけど……

沢村(職員)

大丈夫だと思いますよ

再び職員さんが助手席に乗り

もう一人の職員さんが別の車に乗った

動物園を出発して直ぐ

歩き疲れた私は眠ってしまい

それでもいっちゃんは私の手をずっと握って

反対の手で何度も頭を撫でてくれていた

職員さんがミラー越しにそれを見ていて

樋口(職員)

本当に仲がいいんですね

拓郎

そうですね

樋口(職員)

病院にも毎日通われていたとか……

拓郎

はい

拓郎

妻が毎日通ってくれていました

郁美

初めて会ったの……

郁美

この子が搬送された日だったんですけどね……

樋口(職員)

え!?それまで一度も面識なかったんですか!?

驚く職員さんに

たっくんは亡くなった父のことを話した

とても仲のいい兄弟だった

でもお互いに忙しくなり

何かあれば電話で話しはしたものの

なかなか会うことができず

たっくんの結婚が決まって

式の招待状を送ったけれど

仕事で出席できないと連絡があった

まさかその電話が

弟との最後の会話になるとは思わなかった

拓郎

事故だったんです……

拓郎

でもその時は何の連絡もなくて……

拓郎

連絡が来たのは、弟が亡くなった後でした

樋口(職員)

そんな……

知らせを受け真っ先に駆けつけた祖父母

しかし既に火葬され父の姿はなく

祖父は怒り祖母は絶望し

祖父母の涙ながらの訴えを聞いたたっくんは

いっちゃんと共に父の元へ向かった

錯乱状態の母や、母方の親戚と口論になり

その後、衰弱した状態で発見された私を

いっちゃんが救急車を呼んで助けてくれた

後に母のネグレクトが発覚

拓郎

そこからずっと

拓郎

妻が付き添って……

樋口(職員)

どうしてですか?

拓郎

え?

樋口(職員)

会ったばかりの子にどうしてそこまで……

郁美

わかりません

郁美

でもどうしても……

郁美

放っておけなかったんです……

今ではこうして

いっちゃんは愛情を注いでくれている

私にとって大好きな人になっていた

いっちゃんとたっくん

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