目が覚めると
そこはもう児童相談所の前だった
疲れていたとは言え
眠ってしまったことを凄く後悔した
また二人が行ってしまう
どんなに約束をしても
どんなに指切りをしても不安で
美結
美結
何度も泣いて頼んだけれど
それは認められなかった
郁美
拓郎
そう言って頭を撫でてくれるたっくんの手
郁美
優しく包み込んでくれるいっちゃんの腕
ダメだとわかっていても
その手を離すことができなくて
樋口(職員)
美結
何度かそんなやり取りをして
やっと中に入ると
年上の子が冷たい視線を送ってきた
その子は親の暴力から逃げて
自力でここに来た子だったらしい
頼れる親戚も見つからず
数日後には児童養護施設に行くことが決まっていた
私はなにも知らずに
なぜ冷たい目で私を見るのかがわからなくて
でもその子にしてみれば私はきっと
やり場のない怒りをぶつける
格好の的だったのかもしれない
チカ
チカ
急に話しかけられて
どう返事をすればいいのかわからなくて
でもその子はそれに対して怒ることもなく
でも淡々と話す姿がなんだか怖くて
チカ
チカ
チカ
美結
チカ
チカ
急に声トーンが変わる
チカ
チカ
チカ
そう言って服を脱ぎ始める
体中に残る痣や切り傷
怖くて怖くて
美結
泣き出してしまった
樋口(職員)
樋口(職員)
チカ
樋口(職員)
沢村(職員)
樋口(職員)
その子は泣き叫びながら
職員の人に連れられて行ってしまった
私はただただ怖くて
美結
美結
何度も二人の名前を呼んだ
郁美
いっちゃんの言葉を何度も浮かべて
何度も何度も目を綴じて
それでもこの日は
怖くてなかなか寝付けなくて
あの子の傷だらけの体が頭から離れなくて
美結
美結
二人の名前を何度も呼び続けていた
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