綾衣
君、帰るの遅いね。
侑斗
・・なんで、、
侑斗
や、山口さんが
綾衣
ちょっとね、用があって。
侑斗
・・・
綾衣
放課後もあそこにいるの?
侑斗
・・・まあ。
綾衣
菊池先生と仲良いんだね。
侑斗
き、聞いてたんですか!
綾衣
たまたま通りかかってね。
侑斗
・・何か用事でも?
綾衣
いやー。
昼間にあそこにいた君を見つけてから
気にならない訳ないんだよね。
昼間にあそこにいた君を見つけてから
気にならない訳ないんだよね。
なんだろう
クラスの山口さんとは違った、まるで別人を見ているかのような 感覚だった。
綾衣
一緒に帰らない?
侑斗
え?
綾衣
同じ方向なんだよね。
侑斗
は、はあ。
物置であった時から、僕に対する様子が変だ。
綾衣
寒くなってきたね。
侑斗
・・・
いや、元々山口さんのことなんてそんなに知らなかったよな。
こんなに慣れ親しい人だったか?
綾衣
ねえ。
侑斗
は、はい。
彼女はまた、僕の顔を覗き込んできた。
綾衣
なんでいっつも1人なの?
侑斗
い、いや…
侑斗
…ま、まあ、こういう性格なんで
綾衣
作ろうと思わないの?
さっきから何なんだろう。
山口さんてどういう人なんだろう。
僕は、だんだん息が出来なくなってきた。
侑斗
い、いや
侑斗
僕は…。
同情だろうか。
侑斗
…っ。
ここには居られない。 そう思った。
侑斗
し、失礼します。
綾衣
あっ…。
僕は家に向かって走った。
そう速くない足で。思いっきり。
綾衣
…
綾衣
…やっと話せたのに
綾衣
でも、あれは絶対…。
綾衣
…
綾衣
ごめんね。
侑斗
ただいま。
母
おかえり。
…侑斗。
…侑斗。
母
ご飯にするわよ。
侑斗
分かった。
侑斗
…
母
…リモコンどこ?
侑斗
はい、ここ。
侑斗
…
母
…
僕と母の間に、会話は多くない。
でも、母は…。
母
ねえ、お酒持ってきて。
侑斗
き、昨日も飲んでたじゃん。
母
何言ってんのよ。
学費、稼いできてやったのよ。
学費、稼いできてやったのよ。
侑斗
…
侑斗
ん。
母
あー。美味しい。
母
…
母
ほんとあの女嫌いだわー。
酒を飲むと性格が変わったように、 暴言や悪口を僕にぶつける
母の仕事上、それは絶えないものだが。
母
ああー疲れた。
母
ほんとストレス溜まるわー。
侑斗
…
母
ねえ。明日お母さん、人を泊めるけど、気にしなでね。
まただ。
侑斗
ま、またあの人?
母
何よその言い方。
あなた、よくしてもらってるくせに。
あなた、よくしてもらってるくせに。
侑斗
そんなことないよ
母
好きにさせてよ
母
仕事してきてるんだから
母さんの恋人がやってくる。
侑斗
…っ。
母
何?
しまった。 やってしまった。
母
文句でもある?
侑斗
な、ないよ。
気にしないで。
気にしないで。
早く、部屋に行かなきゃ。
母
ねえ、…杏奈。
侑斗
っ…。
僕は侑斗だよ。
僕は侑斗だよ。
母
杏奈でしょ。女のくせに。
名前まで、つけてやったものを変えやがって。
名前まで、つけてやったものを変えやがって。
侑斗
違うよ。
母
何が?
母
男装までしちゃって。
侑斗
僕は男だって言ってるでしょ!
母
…
バンッ
侑斗
っ…。
痛…。
痛…。
母
さっきからうるさいのよ!
母は、どっちが本物なんだろ。