こんな噂がある
ハロウィンの夜、23時59分に スマートフォンに向かって 「死にたい」と強く念じると
10月32日に行けるらしい
それは終わりのない 永遠の夜を過ごせる1日だという
優詩
大学受験に失敗して 浪人生活で半年を経た頃
おれはなんだか 虚しい人生を送っていると 思うようになった
勉強にも何にも 未来を見出すことができない
こんなことなら いっそ快も不快もない 空間に身を放り投げたい
最近そればかり考えて なにも手につかない感じがする
永遠の夜
そんな言葉が魅力的に思えるほど 疲れきっているのだろう
優詩
優詩
ポケットから スマートフォンを取り出した
画面に表示されている時刻は 0:15
日付は 10月32日
優詩
優詩
優詩
そう おれは 噂に乗ってみたのだ
結果として 静かな夜が訪れた
優詩
優詩
優詩
不確かな孤独感と寂しさ その安定しない感情は
心を蝕み しかしその蝕まれていくことが
麻酔のように 居心地の悪い安定を 感じさせた
だからなのか
どこにも帰りたいと 思えなくなった
ただぼんやりと 夜の街にはりつめた闇を
肌で感じながら歩き続ける
優詩
優詩
足音が聞こえた 闇の奥から誰かが走ってくる
かと思うと おれのほうに向かって疾走してきた
おれの前にあらわれたのは
髪を振りみだした 背の低い少女だった
琴海
琴海
肩で息をしている彼女は 憔悴しきった声で叫ぶ
優詩
琴海
琴海
少女はやにわに おれの右腕を掴んで
さっき歩いてきたほうへ おれを連れようとした
琴海
琴海
おれは背後を振り返る
たしかにそこから 巨大で黒いものが近づいてきている
それは闇と言うより 真っ黒なブラックホールとでも 言うべきだった
琴海
琴海
おれたちは 息を切らしながら
路地裏をかいくぐり 巨大な黒から逃れた
琴海
優詩
優詩
優詩
優詩
琴海
琴海
琴海
優詩
琴海
優詩
優詩
琴海
琴海
琴海
琴海
琴海
優詩
琴海
琴海
琴海
琴海
琴海
琴海
優詩
優詩
琴海
琴海
琴海
優詩
琴海
琴海
優詩
優詩
優詩
優詩
優詩
琴海
琴海
優詩
琴海
琴海
琴海
琴海
琴海
琴海
優詩
少し沈黙があって
遠くから犬の遠吠えのような 不気味な地鳴りが聞こえた
琴海
琴海
琴海
琴海
優詩
優詩
琴海
シャツが汗でびっしょり濡れてしまった
しかし着替えもない どうすることもできなかった
琴海
琴海
優詩
優詩
優詩
優詩
琴海
琴海
琴海
琴海
琴海
優詩
優詩
琴海
琴海
琴海
優詩
優詩
優詩
優詩
優詩
琴海
琴海
琴海
優詩
琴海
優詩
琴海
琴海
優詩
琴海
琴海
琴海
優詩
優詩
琴海
琴海
琴海
優詩
優詩
優詩
優詩
優詩
優詩
優詩
優詩
優詩
優詩
優詩
優詩
優詩
優詩
優詩
優詩
優詩
優詩
優詩
琴海
琴海
琴海
琴海
琴海
琴海
琴海
琴海
優詩
琴海
琴海
琴海
優詩
少女はそう言い終えると 前のめりに倒れた
おれは慌てて 彼女の上体を抱えた
優詩
優詩
琴海
琴海
優詩
琴海
琴海
そう言うと
彼女の瞳が閉じて
深い寝息をつきはじめた
おれは当惑してしまった
彼女の身体はとてもやわらかく しかし氷のように冷たかったからだ
しかし呼吸をして ときどき身をよじった
おれは両腕で彼女を包み込む
なぜだか ひどく悲しい気分になった
何かが分かりかけてきたからだった
琴海
優詩
優詩
琴海
琴海
優詩
優詩
琴海
琴海
琴海
琴海
優詩
優詩
琴海
琴海
琴海
琴海
優詩
優詩
琴海
優詩
優詩
琴海
優詩
優詩
琴海
優詩
琴海
琴海
琴海
琴海
琴海
琴海
琴海
琴海
琴海
優詩
優詩
そのとき
遠くからふたたび
不気味な地鳴りが聞こえた
琴海
琴海
琴海
琴海
琴海
優詩
優詩
優詩
優詩
琴海
琴海
優詩
琴海
琴海
優詩
琴海
琴海
10月32日 午前0時12分
琴海はあの日と同じように 暗い世界にひとり 立ち尽くしていた
琴海
琴海
琴海
琴海
琴海
琴海
琴海
琴海
琴海
琴海
琴海
琴海
琴海
琴海
彼女は静かに 涙を落とした
決して誰にも見せようとしない涙
でもひそかに 誰かに救われたいと思っているかもしれない
たとえばおれが 彼女の名前をここで呼んだら
喜んでくれるだろうか それとも別のなにかが 待っているのだろうか
優詩
彼女は涙でぐしゃぐしゃになった顔を おれに向けた
優詩
琴海
「なんで琴海のもとに戻れたか」 説明は後回しにして
おれは彼女に歩みよって その手をとった
優詩
そう言うと琴海は 冷えきった顔をおれにうずめた
いつかおれも そんな琴海と同じになれたら
琴海とずっと一緒にいたいと 強く願っている
Fin. この物語はフィクションです 最後までお読みくださり ありがとうございました