私
私
私
私
分からないよ。
あの人がいなくなったのは あの夏の日。
あの人が居なくて 探しに行こうって思った時に
君が 小さな病院に 運ばれていたんだ
その後は覚えてなくて
生暖かい涙が頬を伝って
辛くて、怖くて、 心が冷たいような感覚で。
よく分からなかったんだ。
あの人を最後に見たあの場所
行くのは少し抵抗があって。
でも行かないと 前を向かないと何も出来ない。
あの人は確か 前を向くのが苦手だったっけ。
それなら私が 見本になるから。
たった1人で 数少ないご飯を口にする。
1人はやっぱり寂しい。 あの人が居てくれたから 心が暖かかったんだ。
あの人がいてくれた日々が とても恋しかった。
この記憶は ずっと頭に閉まっておこう。
そうすればきっと 大丈夫だから。
あれから何日もの日が経った。
私は大人になっていった。
頭の記憶には 少しずつノイズがかかっていった。
青、蒼、青。
あの人のいない日々。 蒼空が 毎日のように広がっている。
中々雨は降らない。
その日は晴れていた。
この日も
この日も
雨は降らなかった。
ここであることに気付いた。
彼の記憶が
ほとんど、無いことに。
どうしてなんだ
ずっと記憶を閉まっていたはず。
でも、無い証拠に
君の名前が思い出せない。
君の温もりが 思い出せないんだ。
あぁ、こういうことだったんだ。
今でも覚えているあの人の言葉。
「人生って不思議なんだよ」
「頭の中には箱があって」
「いつかは中身が全部」
「無くなってしまうんだ」
「ずっと閉じていても」
「生きている間に」
「自然と空いているんだ」
「それを僕達は気付かずに」
「知らない間に」
「無くなっているんだ」
「ぽっかり穴が空いたように」
「埋めるものは1つしかない」
「それはもしかしたら」
「心も同じなのかもね」
こういう事だったんだ。
頭の中には 記憶っていう箱があって
生きている間に 知らない間に無くなっていて
ずっと閉じていても ずっと覚えていても
いずれは全部無くなって
それがわかった途端 心に穴が空いて
埋めるものは1つしかない あの人だけなんだよ
穴が空いて 何にもないのは
心も記憶も 同じなんだ
今ならわかるよ
名前も記憶も忘れて
記憶の箱から逃げ出したけど
君の言葉は覚えてるんだ
やっと分かったんだよ
君が教えてくれた言葉は
最後に全てわかる。 それはもしかしたら
才能なのかもしれない。
ここを離れて 天か地に行ったら
また君と出会って
温もりを感じて
名前を聞いて 姿を見て
やっと分かったよって言うから
それまで君の存在を いつまででも覚えてるから。
あぁ、また
君はいないけれど
記憶の箱には存在している
そんな複雑な 君のいない夏が
また、来る。
コメント
2件
夏って良いですね…なんか…