秋風が少し乱れた髪を揺らす
透明感のある肌を夕日に曝して
君は微睡んでいた
僕らはきっと何かのために
誰かのために
嘘をついて
隠し続ける
誰にも話せない過去
心情
本当の自分
それをずっと隠して
自分を造る
そうやって人生を紡いできた
幸せを切望していた
幸せを偽造した
僕らのかくしごとが
いつか全て消えてしまうことを
いつまでも
信じている
桜の花弁が紡の手に舞い降りる
紡は目を優しく瞑ったまま
その花弁を握りしめていた
八雲 紡
︎︎
八雲 紡
︎︎
八雲 紡
︎︎
︎︎
八雲 紡
八雲 紡
紡は軽く手を振った
視線の先では
不良集団がいつものように騒いでいる
八雲 紡
不意に目が合った
髪が明るく
ピアスが光を反射している
その目が何故か
切なくて
儚いようで
苦しかった
八雲 紡
紡は優しく
ただ優しく微笑んだ
微かな花のような香りが
目の前に広がった
佐伯 聖夏
紡は戸惑いながらも言葉を交わした
八雲 紡
八雲 紡
佐伯 聖夏
八雲 紡
佐伯 聖夏
聖夏は笑みを浮かべて紡を見つめた
八雲 紡
佐伯 聖夏
聖夏は紡に近づいた
佐伯 聖夏
佐伯 聖夏
唐突な問に言葉が詰まった
八雲 紡
八雲 紡
佐伯 聖夏
佐伯 聖夏
八雲 紡
佐伯 聖夏
紡は呆れたように聖夏を見つめた
八雲 紡
八雲 紡
佐伯 聖夏
2つの足音が弾いて重なった
空を暗い雲が覆っていた
桜が少し激しく揺れる
紡は息を上げて走っている
春風が心地よくて
眠気が漂ったままだった
八雲 紡
紡は足を止めた
八雲 紡
昨日の夜更かしの影響で
今朝のことをひとつも覚えていない
八雲 紡
鞄の中を必死に掻き回した
八雲 紡
八雲 紡
レンズ越しの世界は眩さを取り戻した
紡は階段を全力で駆け上がった
ドタッ
紡は落とした眼鏡を拾い上げた
八雲 紡
紡は再び駆け出そうと足を運んだ
柳
沈黙が走る
再び開いた口は
いつの間にか閉じてしまっていた
柳
八雲 紡
少し戸惑いながら柳の方へ振り向く
ほんのりと明るい髪色が柔らかく光っている
八雲 紡
柳
柳
柳が言おうとした言葉が
少しもわからなかった
柳
八雲 紡
目を伏せて
少し寂しそうな表情を浮かべて
柳は去っていった
何もわからない
いや違う
何も思い出せないんだ
どこかで
きっとどこかで
柳と会ったことがあるような
そんな気がしている
柳
お前は
八雲 紡
それを思い出していいのかさえ
僕にはわからない
八雲 紡
窓から射す光は
雲に薄められている
柏木先生
八雲 紡
柏木先生
八雲 紡
柏木先生
柏木先生
八雲 紡
静かな教室にただ1人
日が優しくて
その暖かさに身を任せて
瞳を閉じた紡は
窓際で微睡んでいた
廊下を駆ける足音が
教室の前で止まった
その足音が眠った紡に少しずつ近づく
柳
柳は紡の頭に優しく手を置いた
柳
八雲 紡
八雲 紡
柳
八雲 紡
紡は心配そうに柳を見つめる
八雲 紡
八雲 紡
柳は突然涙を落とした
柳
柳
柳
そういって柳は背を向けた
八雲 紡
紡は立ち上がって呟いた
柳は立ち止まって俯いた
柳
柳
八雲 紡
柳
柳
八雲 紡
涙を流したまま
柳は優しく問いかけた
少し沈黙が続いた後
紡は少し下を向いて言った
八雲 紡
八雲 紡
柳
柳は何も言わずに教室から出ていった
八雲 紡
ただ1つ
寂寥感を残して
僕はただ
ただ嬉しかったから
八雲の声が何度も頭を 駆け巡って離れない
優しい八雲の瞳は
自分の知っている瞳だった
春嵐の風が髪を優しく撫でた
柳
電車の光が
ジョイント音と一緒に近づいていた
バサッ
柳
柳の身体は線路へと突き出された
駅構内は騒然としたまま
夜は依然と暮れていった
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八雲 紡 やくも つむぐ 佐伯 聖夏 さえき きよか