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愛が重いよ、金満君。

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愛が重いよ、金満君。

6 - なぜ笑うんだい?彼の水泳は素敵だよ。

♥

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2024年03月04日

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善光 優斗

青い空。白い雲。きらきら光る水面。どうしてこんなに綺麗な景色なのに、僕は絶望しているのか。

体育教師

えー、今日から授業は水泳です。今日はね、クロールの練習を主に、していこうと思います。

善光 優斗

答えは簡単。体育があるから。

善光 優斗

最近では、古典の授業が必要かどうかで論争があるようだが、僕個人としては古典よりも、もっといらないものがあるだろうと思う。

善光 優斗

例えば体育とか。

体育教師

欠席者いるかー?

クラスメイト

いませんー!

体育教師

ん〜、ん?金満は?善光、金満どうした?

善光 優斗

何で僕に聞くんだよ。やだなぁ、セットみたいな扱いで。

善光 優斗

「…金満君お手洗い行きました。」

体育教師

ッチ…。アイツ休み時間の間に行っとけよ。

絵馬 海龍

先生、ちゃいます。金満君はぁ、善光君の裸見て興奮しちゃって、トイレに抜きに行きました。

体育教師

そうか、もう腹立つし欠点にしたるわ。

善光 優斗

それがいいと思う。

体育教師

じゃあもう時間も限られてるんで、体操始めます。体操終わったら、シャワー浴びて練習開始!

善光 優斗

先生の号令で、僕らは体操しやすいように距離を取る。プールサイドは、熱くなっていて、足の裏がウェルダンに焼けそうだ。

体育教師

体操開始!

善光 優斗

体育委員の生徒が数名出てきて、僕らの手本の体操をする。僕らはそれをマネして体操を行う。

善光 優斗

両手を上げて空を仰ぐと、トンビが気持ち良さそうに飛んでいた。

善光 優斗

いいなぁ、鳥は自由で。対して僕はどうだ。泳ぎたくねぇのに、泳がさせられるんだから。鳥が羨ましい。

善光 優斗

と、思っていると、別の方向からもう一匹トンビがやってきて、気持ち良さそうに飛んでいたトンビと喧嘩し始めた。

善光 優斗

……鳥には鳥の辛さもあるよなぁ。ごめんよ、自由で羨ましいなんて思って。

善光 優斗

そんな事をぼんやり考えながら体を動かしていると、あっという間に体操が終わった。

体育教師

順番に、シャワー浴びていけー。

善光 優斗

僕らはゾロゾロと歩いて適当に列を作り、シャワーを浴びていく。またそのシャワーがありえないぐらいに冷たい。修行僧か?僕らは。

善光 優斗

極寒のシャワーを何とか耐え抜き、僕らは飛び込み台の前でまた整列した。

体育教師

じゃあまず最初にタイム測る。今後は、この測ったタイムよりも、なるべく速く泳げるように練習します。

善光 優斗

やめようって、タイムを測るなんて。僕の運動オンチをこれ以上可視化しないでよ。悲しくなるから。

体育教師

じゃあお前ら、適当にペア組めー。片方が測定。片方が記録。

善光 優斗

ペア…だと?やばいあのクソ金が…

善光 優斗

いや、アイツは今いない。

善光 優斗

「銭場君!!」

銭場 守

うぉっ!びっくりした。

善光 優斗

「一緒にやろう。」

銭場 守

おっ、いいぜ。どっちから先にやる?

善光 優斗

「…僕から、いくよ。」

銭場 守

何お前覚悟決めた顔してんの。戦地にでも行くんか。

善光 優斗

「似たようなモノ…かな…。」

善光 優斗

僕は後ろを振り返らずに軽く手を振った。…さよならは、言わないゼ。

銭場 守

…アイツ何かっこつけてんだ?

善光 優斗

ピッ、ピッ、と笛が鳴って、どんどんと前の奴が泳いで行き、僕の番が徐々に近づいてくる。

善光 優斗

ドックン…ドックン…

善光 優斗

僕の鼓動もいつもより大きくなっているのがわかる。

体育教師

壁まで泳げたらとっとと上がるっー!次っー!

善光 優斗

…いよいよ僕の番がやってきた。

善光 優斗

僕はゆっくりプールに浸かると、両手を伸ばし、手のひらに重ねた。けのびの構えだ。少しでも水の抵抗を減らし、楽に、素早く、美しく泳ぐ為の、けのびポーズ。

ピッ!

善光 優斗

来たっ!

善光 優斗

僕は笛が鳴るのと同時に、どぶんと潜ると、思いっきり壁を蹴った。

善光 優斗

はずだった。

善光 優斗

んんっ??

善光 優斗

僕の足はぬるんと滑って、壁を蹴れなかった。

善光 優斗

やっ、やばい!!

善光 優斗

僕は慌ててもがいた。やばい、出遅れた。速く泳がないと!!

善光 優斗

必死に手足を無我夢中で動かして、前に進む。時折上を向いて呼吸も忘れない。

プールサイド

銭場 守

善光あれ大丈夫か?溺れてんのか?どっちだ?

絵馬 海龍

アッハッハー!!おい木生!あれ撮っといてや!!絶対バズるわ!!

木生 葉

今おれスマホ持ってたら、いろんな意味でヤバすぎんだろ。持ってるワケねぇだろ。考えて喋れやボケ。

木生 葉

けどそれはともかく、あれは大草原不可避。

水中

善光 優斗

……遠くで絵馬君と、木生君の笑い声が聞こえる。ひょっとして、僕の事応援してくれてるのかな。

善光 優斗

いいや、んなワケねぇや。たぶん笑われてんだろうな。カスどもがよぉ。やっぱ僕のマブは、銭場君だけです。

善光 優斗

なんて、ふざけてる余裕が無くなってきた…。

善光 優斗

やばい…最初に飛ばしすぎた。体力が…。

善光 優斗

その時、僕の右足に電撃が走った。

善光 優斗

うっ…!

プールサイド

善光 優斗

「あ"!!」

絵馬 海龍

アッハッハー!

木生 葉

ゲラゲラ!!

銭場 守

お前らそんなに笑ったんなよ。俺逆に悲しくなったわ。まさか善光あそこまで運動オンチだとは、思わんかった。

銭場 守

ん?あれ今善光の声聞こえなかったか?

絵馬 海龍

聞こえた?

木生 葉

さぁ?

銭場 守

んー?あれ?!あいつマジで溺れてね!?先生!!善光ヤバい!!

体育教師

っ!足つったか?

体育教師

善光!落ち着け!今行く!!

金満 潤

どけ。

水中

善光 優斗

(ガッ!ガッポ……!)

善光 優斗

や、やばい…水飲み過ぎた…。

善光 優斗

朦朧としながら水面を見た。

善光 優斗

……きれいだな。

善光 優斗

こんな状況なのに、なんとなく、そのきらきらに触りたくって、僕は手を伸ばした。

ザッパァァーー!!

善光 優斗

「ゴッホ、がほ、ゴッホゴッホ…がは…」

金満 潤

優斗!大丈夫か?

善光 優斗

はぁはぁと呼吸を整える。そっか、金満君が助けてくれたんだ。

善光 優斗

「あ…ありがとう、金満君。」

金満 潤

っんん!!

善光 優斗

金満君は、何をどう思ったのかわからないが、またキスしてきやがった。

善光 優斗

んん…。

善光 優斗

ぐったりしている体を何とか動かして、僕は金満君を軽く叩いた。

善光 優斗

ゆっくりと僕と金満君の唇が離れる。

金満 潤

優斗、大丈夫か?

善光 優斗

「…………うん。」

体育教師

おーいお前らー!とりあえず上上がれー!

善光 優斗

僕はその後、水泳を続ける事はなく、見学となった。

善光 優斗

念の為、水泳の授業が終わるまで、保健室で休んでおけとのこと。

善光 優斗

あぁ、だから嫌いなんだ体育は。

善光 優斗

古典はいいじゃないか、あけぼのってりゃいいんだから。

善光 優斗

って、違う違う。それよりも…

善光 優斗

「金満君、助けてくれてありがとう!」

金満 潤

気にするな。夫婦は支え合うものだろう。

善光 優斗

「うん。僕ら夫婦じゃないけどね。」

金満 潤

まぁまぁ、照れるな優斗。

善光 優斗

ほんと尊敬する、このポジティブシンキング。

善光 優斗

「そういえば金満君、いつの間に授業参加してたの?」

金満 潤

あぁ、腹立つが、銭ゲバの声を聞いてトイレから飛んで来たんだ。それまでずっとオ○ニーしてた。もちろん優斗で抜いたぞ。

善光 優斗

「へぇー、そうなんだ。なら銭場君にも感謝だね。」

善光 優斗

後半めっちゃ要らない情報だなぁ。

金満 潤

フンッ…銭ゲバなんかに感謝しなくていい!
そもそも、優斗が学校なんて通わずに俺の家に居てくれれば、こんな事起きないし、もし億が一でも何かがあっても俺がすぐ側で守れたんだ!

善光 優斗

「ふふっ、けど何か起こってもまた金満君助けてくれるでしょ?頼りにしてるよ、金満君。」

金満 潤

……っ!!……うん。

善光 優斗

僕がそう言うと、金満君は耳まで真っ赤にして目を逸らした。

金満 潤

……。

金満 潤

優斗、二人っきり…だね。

善光 優斗

「やめてよ。保健室の先生いるでしょ。」

金満 潤

職員室に用があるからって、出かけたぞ。

善光 優斗

「ほんとにやめてよぉ。」

金満 潤

優斗、二人っきり…だね。

善光 優斗

「やめて、怖いって。何もしないよ。」

金満 潤

"ナニ"も、な…。

善光 優斗

「ホントに怖い。助けてくれてありがとう。もう授業戻って。ホント大丈夫だから。」

金満 潤

人工呼吸、してやろうか。

善光 優斗

「トドメを刺さないで。死んじゃうから。」

金満 潤

優斗〜、下半身に水が溜まってるんじゃないか?どれ、抜いてあげよう。

善光 優斗

「だいじょーぶ、だいじょーぶです。勘弁してください。」

金満 潤

俺の精子は、高濃度の栄養素になっているんだ。それを坐薬として優斗の中に注入してやろう。きっと優斗、元気になるぞ〜。

善光 優斗

「金満君だけだよ、元気になるの。それ僕の生気を奪ってるんだよ。今もだけど。」

金満 潤

優斗、せっかくこの俺が提案してるのに、イヤイヤだってで否定ばかり。じゃあ優斗は一体何して欲しいんだ。

善光 優斗

「帰ってほしい。」

金満 潤

優斗、気を使うな。俺と優斗の仲だろ?優斗が元気になるまで、俺は側にいるよ。

善光 優斗

……金満君。

善光 優斗

僕の隣に座る金満君が、僕の手をそっと握った。

金満 潤

……優斗。

金満 潤

……優斗、今日俺、安全日だよ。

善光 優斗

「今すぐ授業に戻れっ!!引っ叩くぞ!!!」

金満 潤

ピィィィィギャアァァァァァァァ!!!

愛が重いよ、金満君。

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