倉庫に足を踏み入れた瞬間空気が重く沈んだ。
息がしずらい。壺が並べられている倉庫。
中身を見なくてもまともじゃないことだけは分かる。
ひとが…半殺しの状態で刀を刺されて詰められている。
声は出た。でも自分でも分かるくらい弱い。
月
なに…してるの、ここで
玉壺
ふん
玉壺は振り向きもせず壺の前に立った。
玉壺
“なにをするか”じゃない
玉壺
“なにが出来ないか”を教えて
やる
やる
その声だけで背中がぞくりとした。
月
(あれ…)
怒鳴ってもいない。威圧もしていない。
なのに足が一歩も動かない。
玉壺は迷いなくひとに刺さっている刀を回した。
男
う"あ"ああぁ!!
当たり前だが、苦痛の叫びが響く。
月
…っ
思わず視線を逸らした。
月
…やめて
玉壺
見るなと言われたら見たくなる
玉壺
助けられそうなら助けたくなる
淡々とした声。
男
その“したくなる”がお前の首を絞める
月
…やめてってば!!
言ったつもりだった。でも声になっていなかったかもしれない。
玉壺が初めてこちらを見た。
玉壺
なんだ
玉壺
否定するのか?
玉壺
私の作品を
視線が合った瞬間息が止まった。笑っているのに感情がない。
玉壺
ああ、その目とてもいい…
玉壺
否定したいのに出来ない目!!
一歩近づいてくる。ただそれだけで背中が冷える。
玉壺
怖いなら黙れ
玉壺
黙れないなら覚悟することだ
喉がひくりと鳴る。言い返したい。でも体が言うことをきかない。
玉壺
人間に情を向ける鬼はな
耳元で囁くように。
玉壺
1番に死ぬ
月
…!!
圧がかかる。殴られていない。触れられてもいない。
それなのに膝が落ちる。
こいつは…狂ってる。
月
(何なのこいつ…)
玉壺
いい反応だ
玉壺
今のがオーラさ
少し離れ見下ろす。
玉壺
これに逆らうには感情を燃やすのではない
静かに残酷に。
玉壺
感情を捨てるんだ
るなは唇を噛んだ。やだ。怖い。逃げたい。でも――
月
(半魚人なんかに…)
月
(まけたくないし!!)
その微かな反抗心を玉壺は見逃さなかった。
玉壺
いい目だ
口元だけが歪む。
玉壺
壊しがいがある
玉壺
安心しろすぐ慣れる
背を向けながら冷たく言い捨てる。
玉壺
恐怖にな
そう言って笑った。






