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森を抜けた先にあった家は、思っていたよりも普通だった。
古びてはいるが崩れかけているわけでもなく 小さな灯りが窓から漏れている。
雨に濡れた木の匂いが漂い、どこか落ち着く空気があった。
トウライ
トウライが扉を開ける。
中に入った瞬間、外の冷たい空気が嘘のように遠のいた。
暖かい
それだけで、体の力が抜けそうになる。
トウライ
トウライ
部屋の中央にある暖炉に火がくべられる。
パチ、と薪の弾ける音がして じわじわと指先に感覚が戻ってきた。
気づけばセイカも何も言わず火を見つめていた。
こんなふうに立ち止まるのは、いつぶりだろう。
トウライ
トウライ
差し出された布を受け取る。
警戒は消えていないはずなのに その声は不思議と逆らいにくかった。
しばらくして、温かい湯気の立つ器が目の前に置かれる。
トウライ
口に運ぶと、じんわり熱が喉を落ちていく。
思わず息が漏れた。体の奥まで温まっていく感覚に ようやく生きている心地がした。
その時、ふと気づく。
外はまだ雨が降っているはずなのに 家の中ではほとんど音が聞こえない。
静かすぎる。
コヒキは窓の方へ目を向けた
ガラスはあるのに、外の景色はぼんやりと滲んでいて 森の様子がよく分からない。
トウライ
いつの間にか、トウライがこちらを見ていた。
コヒキ
そう答えながら、視線を戻す。
トウライは少し安心したように笑った。
トウライ
火の音だけが小さく部屋に響く。
セイカが一瞬、言葉を迷う。
どこから話すべきなのか分からなかった。
逃げてきたこと。
追われていること。
あいつらのこと。
口にした瞬間、またここから逃げなければならなくなる気がした
トウライ
トウライの声は静かだった。
トウライ
その言葉になぜか胸がざわつく。
どうしてそんなことが言い切れるんだろう
その夜、久しぶりに屋根の下で横になった
暖かいはずなのに、なかなか眠れない。
隣ではセイカの寝息が聞こえている
__ふと、目を開けた。
部屋の外から、かすかな灯りが漏れている。
静かに起き上がり、扉の隙間から覗く。
トウライが一人で窓の前に立っていた。
外を見つめながら呟く。
「……久しぶりだな」
誰に向けた言葉だったのかは、分からなかった。