- 救 世 主 の 愛 使 -

どぼどぼと赤黒い液が流れている。

錆びた鉄のような匂いに鼻の奥がツンとする。

バチンッ！！

バタン

俺はお父様の言った「命なんてポイのように容易く壊れてしまうものだ。」と言う言葉をあながち間違ってないと思ってしまった。

だって、胸囲を1度刺されただけで脈が止まってるはずなのに、赤黒い血を流すお母さんを例えるのにはとても相応しいと思う。

この日を境に俺の人生は狂ってしまったのかもしれない。

街へ出ると白い目で見られ、

小学校に上がっても片親だからと虐められたり、

家の中にも家の周辺にもお父様はいなかった。

なぜだろう。

悲しくないはずなのに。

寂しくないはずなのに。

留めなく出てくる涙に止める人などいるはずもなくただ床に伏し、泣いていた。

今沢山泣いておいて良かったのかもしれない。

これから流す予定だった涙をここで消費出来て良かったのかもしれない。