死神の婚約者

西暦30××年

食料、領土、金、捕虜全てを奪い合う戦争

新しい武器、新しい作戦

そして

新しい兵士

空に浮かぶ少女が手を空に掲げると小さな魔法陣が浮かんだ

その魔法陣を覗くと敵に全て照準が定められていく

そして術式が装填された銃を構えて引き金に指をかける

引き金を引けば1つの弾が敵の数に増え連中の心臓を貫いた

「スヴェア」

頭に声が響く

「そちらの状況は？」

「了解、帰還せよ」

私の名前はスヴェア・レドアル 年齢は…16歳 だけど舐めてもらっちゃ困る

王座に座っているこの朗らかな男はこの帝国の頂点に君臨する王

ローダン・アブリュート

圧倒的カリスマ性と統率力でこの国をまとめあげている

そう、私は貧困エリアと言われるスラム街で両親に捨てられ死にかけていた所を殿下に拾われた

魔力量が多い事が幸いして前線を引っ張っていくと侯爵という地位を与えられた

そう、私は世継ぎを産むつもりが無いのだ

だから夫もいらない

家族なんて、前線を張る上で邪魔になる

今なんと？

妻？

誰が？

こんな私に妻が

死神と言われた私が…家族を

何を言ってるんだこの人

王族と結婚しろと？！

ダメだ、この人何言っても譲らねぇ…

そして数日後

私は第3皇女を選んだ

いやまぁ選んだとか言うのはすんごい偉そうになってしまうが…

3人の皇女は何度か見たことある

だが、記憶に残ってるのは1番初めに見た時だ

つまらない舞踏会に招待され

私は階段で休んでいた

9歳までスラム街に居たから相変わらず人が多いのは苦手だ

そよ風のような声で呼ばれ振り返ると、彼女が立っていた

その日はそれで家に帰った

それが初めての出会いだった

容姿も声も全てが綺麗だった

正直それしか覚えてなくて選んでしまったけど

どう考えても失礼だ

この人は穢してはいけないんだ

私はもう穢れてしまっているから

なるべく自由にさせるべき

愛人が出来ても文句は無い

空に飛んで行ってしまった彼女の背中を見送る

愛しのスヴェア様、私のスヴェア様

あの日の舞踏会