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ひまわり依頼所 読み切り集

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ひまわり依頼所 読み切り集

1 - 【うちよそ】 カフェオレとハーブティ

♥

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2023年03月08日

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※このお話は 相互の青居月祈さん宅の 大樹さんと みじんこ宅のラゼの うちよそになります

とある休日の昼下がり

大樹

平和だ……

あおぞら駅前の小さなカフェ

静かでアットホームな内装だと 知り合いに聞いてひとりで来てみた

嵐志と結衣はそれぞれ 友達と出かけており

愛衣はきっと星空図書館

雪彦も今日は用事があると言っていた

たまにはこんな日も悪くないな、と

賑やかな日常をちょっと遠くに感じていた

店内には自分の他にもう1人

ラゼ

……

2つ前のテーブルに 自分と同じくらいの背丈の青年が 背を向けて座っていた

大樹

銀髪だ、珍しい

短めの髪だが後ろ髪だけとても長く 1本に縛っている

何気なく観察していると

店員

カフェオレのお客様

と、店員が自分の前に カップを置く

大樹

自分が頼んだのは確か ハーブティだったはず

大樹

あの

大樹

これ俺が頼んだものじゃ
ないです……

そう言おうとした時には

店員は既に奥へと引っ込んでいた

大樹

随分とせっかちな人だな…

大樹

俺じゃないとすると…

このカフェオレは間違いなく 前の席の人のだろうな

店員暫くは出てきそうにない

待っていたら少し冷めてしまいそうだった

大樹

仕方ないな…

俺はカフェオレを持つと立ち上がる

大樹

あの

ラゼ

はい

俺の声に青年が顔を上げる

大樹

…わ

髪とおなじシルバーの瞳

そして右目には大きな傷があり まぶたが開かないよう 縫い塞いであった

日本人離れした顔立ちに 自分から話しかけたにも関わらず 数秒固まってしまう

ラゼ

…?

青年は不思議そうに小首を傾げていたが

俺の手にあるカフェオレをみて 大体を察してくれたようだ

ラゼ

おや

ラゼ

もしやそれは
僕が頼んだものかい?

ラゼ

わざわざ持ってきて
くれたのか、すまないねぇ

青年は柔らかく笑う 低めで落ち着いていて優しい声

大樹

あ、はい、そうみたいです

ラゼ

そうかい
どうもありがとう

彼はカフェオレを受け取り テーブルに置く

ラゼ

君のはもう来たのかい?

大樹

いえ、まだです

ラゼ

おや…

そういった直後

店員

ハーブティのお客様

先程の店員がハーブティを持って 出てくる

大樹

あ、俺です

店員

あれっ

そこで店員も気づいたようで 慌てた様子でおと青年に平謝りする

店員

逆のものを持ってきて
しまったみたいで
申し訳ありません

大樹

いえ!お気になさらず

ラゼ

かまわないさ
そんなこともあるよ

店員

ありがとうございます

店員はカフェオレの隣に ハーブティのカップを置いて 奥へと戻っていった

ラゼ

立ったまま話させてしまい
すまなかったね

ラゼ

座っておくれ

大樹

あっ、失礼します

カフェオレと並べられてしまっては わざわざカップを取って

さっき居た場所に戻るのも なんだかなと思っていたので 内心ほっとした

ラゼ

もしよければ老人の
話し相手になっては
くれないかい?

大樹

老……人…?

目の前の彼は髪こそ銀色だが 顔立ちは自分と同じか 寧ろ若干年下かと思うくらいだ

頭の中が疑問符で溢れていく

俺が座るのを確認すると 青年はニッコリと微笑む

ラゼ

申し遅れたね

ラゼ

僕はラゼ・カーシャ
ラゼって呼んで

大樹

あ、一之瀬 大樹です

ラゼ

ダイキ…が名前かい?

大樹

はい

ラゼ

そうかそうか

なんだか相手にばかり 話させている気がする

そう思い、自分も口を開く

大樹

ラゼさんは

ラゼ

ラゼでいいよ

大樹

あ、じゃあ…

大樹

ラゼは日本人じゃ
ないんですね

ラゼ

そう、アトリア王国の出身さ

大樹

アトリア…

聞き覚えのない名前に今度はこちらが 首を傾げてしまう

ラゼ

大樹は日本の出身かい?

大樹

そうです愛知県出身です

ラゼ

アイチかぁ

ラゼ

美味しいものはあるかい?

大樹

そうですね

大樹

味噌カツとか小倉トーストとか

愛知名物というか名古屋名物だな と心の中で自分にツッコミを入れる

ラゼ

へぇ、どれも聞いたことない
名前だ

ラゼ

色々と教えて欲しいな

大樹

いいですよ

そこからはグルメや 町の観光スポットの話など

たわいも無い会話が続いた

波長が合うのか 初対面でも全く苦ではなかった

ハーブティを半分ほど飲み終えた頃

話題は家族の話へと変わる

ラゼ

そういえば

ラゼ

大樹は兄弟はいるのかい?

大樹

居ますよ
妹が2人と弟が1人

ラゼ

4人兄弟か…
賑やかだろうねぇ

大樹

はい、もうそれはそれは
毎日賑やかで

朝早くからはしゃいでいた嵐志の顔を 思い出して

少し語気が強くなっていたようだ

ラゼ

はは、やんちゃ盛りのようだね

大樹

そうですね
アイツほど「やんちゃ」という
言葉が似合う人も中々…

ラゼ

わかるよ

ラゼ

僕にも弟と妹が1人ずつ
いたんだ

1人ずつ「いた」

過去形の表現に少し違和感を覚えたが この時はあまり気に留めなかった

だが、最初に彼が言っていた 「老人」という言葉が頭をよぎる

大樹

質問をしても?

ラゼ

勿論だよ

大樹

ラゼはお幾つなんですか?

ラゼ

んー…

ラゼは少し考えると

クスッといたずらっぽく笑って見せた

ラゼ

幾つに見えるかい?

大樹

えっ

質問を質問で返されるとは思っておらず 思わず声が出る

ラゼ

なんてね

ラゼ

僕はね…

ラゼがそう言いかけた時

•*¨*•.¸¸♬•*¨*•.¸¸♪

どこからか音楽が聞こえた

ラゼ

あぁ、すまない
僕の携帯からだ

ラゼ

ちょっと電話にでるね

そう言いながら自分から少し距離を置く

ラゼ

はいもしもし

ラゼ

あっ、社長お疲れ様です
休日にどうされました?

大樹

(社長…?)

ラゼは社会人なのか

なんて思っていると

ラゼ

え、今からですか?

ラゼ

…かしこまりました
直ぐに向かいますね

ラゼ

失礼します

電話を終えたようでラゼは 小さくため息をつく

ラゼ

折角話し相手になって
貰ったのに申し訳ない

ラゼ

会社からお呼び出しが
あってね、直ぐに向かわないと
いけなさそうなんだ

大樹

いえ!こちらこそ
なんかすみません!

大樹

楽しかったです

ラゼ

そうかい

ラゼ

どうもありがとう

ラゼ

お礼にここは払っておくから

ラゼは残りのカフェオレを 飲み干し立ち上がる

自分も慌てて立ち上がろうとすると

ラゼが自分の両肩に手を置き そのまま座らせてしまった

大樹

いえそんなダメです
申し訳ない…

ラゼ

いいからいいから

ラゼ

ここは年上に
カッコつけさせてくれないか

大樹

そんな…ありがとうございます

ラゼ

うんうん、どういたしまして

そう言いながらレジに向かおうとして 再び戻ってくる

ラゼ

そうだこれを

ラゼはスマホケースから 名刺を取り出す

ラゼ

良かったらまた
会ってくれないかい?

ラゼ

大樹が話していた
味噌カツや小倉トーストを
一緒に食べてみたいんだ

大樹

そういうことなら
喜んで

ラゼ

ありがとう

ラゼ

気が向いたら連絡して

ラゼは急いで2人分の会計を済ませると

足早に去っていった

大樹

忙しい人なんだな…

ハーブティとカフェオレの 入っていたカップ

その2つが合わさって 甘くも爽やかな不思議な香り

そんな香りに包まれながら 暫く余韻に浸っていた

大樹

(そういえば)

大樹

(30分ほど話していたのに)

大樹

(あの人の出身と弟妹の
事しか聞けなかった…)

ー気が向いたら連絡して

ふと先程貰った名刺の存在を思い出す

大樹

佐川グループ…

会社名と、彼の名前と その下に電話番号とQRコード

そして

大樹

生年月日

大樹

1906年(明治39年)
11月25日生まれ…

大樹

大樹

…ん?

思考が止まる

会社が作られた年の間違いか? とも思ったが

そこには間違いなく 「生年月日」の文字

大樹

いやいやそんな

大樹

まさか

思わず携帯で調べる

大樹

1906年生まれ…

大樹

大樹

116歳…!?

100歳越え?

思えば

ひと昔前の小説から飛び出した登場人物 のような喋り方

自分の事を「老人」と表現 していた事

弟と妹が「いた」事

100歳越えなのにあの若い見た目である ことを除けば

全て腑に落ちた

ー年上にカッコつけさせてくれないか

この言葉を聞いた時 小さな違和感を覚えていた

なぜならオレは自分の年齢を 明かしていない

でも

これで納得した

大樹

そりゃあ

大樹

あの人より先輩は
そうそういないわ…

終わり

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コメント

12

ユーザー

うちよそは楽しいだろうな…!!イケメンすぎます( ˆ̑‵̮ˆ̑ )

ユーザー
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