気がつくとそこは
記憶の片隅に閉じ込めていた景色だった
来夢
来夢
来夢
来夢
何故か冷たい床に横になっている僕は
ぼんやりとそんなことを思う
クリスマスプレゼント?
どこからが懐かしい声がする
来夢
誰かと電話をしているようだ
その声の元へ行きたいが
どうしてか身体が全く動かない
喜ばないでしょう
そんなことない
そう言いたくても声も出ない
似てないじゃない
ないかしら?
来夢
自分の息子になんてことを……
来夢
やっと身体が動き僕は跳ね起きる
来夢
呼吸を整え辺りを見渡す
いつもの見慣れた部屋
本の匂い
来夢
時計を見ると深夜2時半
来夢
来夢
みるなんて
この指先の震えは12月の寒さからだろうか
それとも……
留宇
留宇
留宇が受話器の向こうでため息をつく
電話の向こうからでも苦笑しているのが 容易に想像できた
来夢
来夢
来夢
頭に響きます
留宇
ハム太郎やねん
来夢
留宇
してきた癖に
留宇
留宇
デートやろ?
来夢
留宇
留宇
来夢
留宇
羨ましいわー
留宇
いつも通りの留宇のマシンガンにすら まともに返す余裕が無い
留宇
来夢
留宇
僕も含めて商店街の
イベント手伝いやねん
留宇
オーケストラ呼んで
催し物するんやってさ
来夢
留宇
増えそうではあるよな
来夢
留宇
何やら電話の向こう側で誰かと会話を している留宇
留宇
いけるんちゃうか……
留宇
留宇
声が筒抜けである
来夢
留宇
留宇
留宇
留宇
来夢
留宇
3歳年上の先輩やねんけど
来夢
来夢
留宇
留宇
留宇
びっくりするかもやけど
留宇
留宇
来夢
普段から学校に行かず 自宅兼図書館に引きこもっている
人と会話するのはすごく苦手だ
初対面なら尚更
留宇
留宇
留宇
来夢
留宇
来夢
来夢
来夢
留宇
うわぁ
すごい悪い顔してるんだろうなぁ
留宇
留宇
そう言って電話は切れた
来夢
愛衣ちゃん
この名前が出ただけで 僕の思考は彼女に支配されてしまう
来夢
彼女の事を考えると
今朝の夢を少しだけ忘れられる気がした
午前8時半
なんとか身体を起こし 朝の業務を行っていると
来夢
来夢
バリバリと腹に響く排気音が近づいてくる
その音は図書館にある駐車場の 方角で止まった
この図書館にバイクで訪れる人に 思い当たる利用者はいない
珍しいな、などと考えていると
〜♪
正面玄関のチャイムが鳴る
来夢
留宇の言っていた先輩だろうか
途端に心臓の鼓動が速くなるのを感じる
留宇の知り合いとはいえ 初対面・先輩というだけでこんなにも 身体が強ばる
来夢
なんて呟きながらエントランスに向かった
百
百
入口付近でどう足掻いても家主に聞こえないであろう声量でウロウロしている青年
来夢を見つけると安心したように 深い緑色の目を細める
百
来夢
来夢
……えっと……
そういえば 名前を聞いていなかった
青年はハッとして僕の前で深々と 頭を下げる
百
百
本日こちらの図書館の運営を頼まれてまいりました
百
百済 百(くだら びゃく)と
申します
来夢
来夢
夢川 来夢(むかわ らいむ)と
申します
来夢
まじまじと百さんの姿を見つめる僕の視線に何かを察したようで
百
百
百
来夢
来夢
ありがとうございます
百さんは確かに 耳や顔に何個もピアスを付けている
髪の緑色のメッシュ 鮮やかな色のアイシャドウ 左腕から覗く百足の刺青 華やかな和風パンクの服装
留宇の言っていた 「見た目はびっくりする」と言っていた通り 最初は驚いたが
話してみれば 物腰の柔らかい丁寧で品のある青年だ
そして
百
来夢
百
来夢
百
お先にどうぞ……
来夢
百
ございませんので
来夢
百
来夢
この人…
同類だ
後編に続く