俺は気がつくと,いつの間にか近所にある海の砂浜に来ていた
辛いことがあってどうにもならなくなった時,よく来る場所だ
瀧
唯夏…
唯夏に記憶が戻ったら
どれだけ嬉しいだろう
どれだけ幸せな気持ちになれるだろう
こんなことになるんだったら,唯夏ともっといろんなところに行っておきたかった
たくさんデートして,絆をもっと深めていれば、拒絶なんてされなくて済んだのだろうか
瀧
…
瀧
唯夏…俺のこと,忘れるなよ…
瀧
俺を…嫌いにならないでくれよ…
唯夏
お前は
俺のこと捨てないでくれ
瀧
…
塁斗
…
瀧
…
塁斗
…
瀧
…
塁斗
…なんか言えよ瀧ぃぃ〜‼︎
瀧
…う…ん
塁斗
おいおい,大丈夫か?
塁斗
…唯夏ちゃんのことか
瀧
…俺
瀧
どうしたらいいのかわからない
瀧
唯夏は俺の全てだったから
瀧
今更…唯夏を失って,何をすればいいのか,わからないんだ…
塁斗
…唯夏ちゃんに,会いに行かないのか?
瀧
行かないよ
瀧
だって
瀧
言っても追い返されて終わりだ…。
塁斗
行ってみないとわからないだろ
塁斗
行ってみないか?
瀧
…俺は絶対に行かない
瀧
唯夏に拒絶されるくらいなら,絶望を感じながら過ごした方がマシだ
塁斗
…本当にそれでいいのか?
塁斗
拒絶されたままで,ちゃんと話をすることすらできない
塁斗
それで,瀧は良いのかよ⁈
瀧
…
瀧
良…な…
塁斗
…?
瀧
良いはず…ない…だろ…
塁斗
だったら…
瀧
だけど!
瀧
行くのが怖い
瀧
また拒絶されたら,俺は,生き地獄になる
瀧
そんなの俺は,嫌なんだよ…
塁斗
瀧は,このまま唯夏ちゃんとの約束を破るつもりなのか
瀧
それは
塁斗
違うだろ⁈
塁斗
ならさ,言ってやれよ
塁斗
唯夏ちゃんだってきっと,色々ありすぎて戸惑ってるんだ
塁斗
だから…お前のことも拒絶したのかもしれない
塁斗
行ってみるだけ行ってみよう
瀧
でも…
塁斗
大丈夫だ
塁斗
ほら,行くぞ
塁斗
どうせこの後暇だろ?
瀧
…わかったよ
俺は
もうどうなでもなれと言わんばかりについて行くことにした
塁斗
お邪魔します
瀧
…お邪魔…します
唯夏
…
唯夏
久しぶりだね,瀧
瀧
え?
瀧
たっ…え?
瀧
俺の…名前…
塁斗
もしかして唯夏ちゃん,記憶戻ったの…?
唯夏
うん!
唯夏
お医者さんが一生懸命治療してくれて。
唯夏
お母さんも
唯夏
頑張って記憶を取り戻そうとしてくれてね
唯夏
思い出せたんだ
唯夏
この前,ごめんね?
唯夏
あんなこと言っちゃって
俺はこみ上げてきた感情で胸がいっぱいになった
そして,頬を温かい何かが流れた
唯夏
た,瀧?
唯夏
どうしたの⁈
瀧
俺も…唯夏との約束…守れなくてごめん…
唯夏
…ふふ
唯夏
いいよ,そんなの
唯夏
それに…
唯夏
約束を守ろうとして,今来てくれたんでしょう?
瀧
…うん
唯夏
だったら,約束守ってくれたのと同じだよ!
唯夏
…瀧
唯夏
私,言いたいことがあるの
唯夏
聞いてくれる…?
瀧
当たり前だろ
瀧
記憶…戻ってくれてよかった…
唯夏
うん
唯夏
ほんと…ごめんね
塁斗
話したいことを話すなら,俺は先に帰ってようか?
唯夏
いいの?
塁斗
あぁ。
塁斗
お前らが仲直り(?)したってことで,俺は今すごく気分がいいからな!
唯夏
ありがとう
塁斗
じゃ,またな
瀧
まって,塁斗
塁斗
ん?
瀧
いつもありがとな,塁斗
瀧
俺,お前が居なかったら今頃精神死んでたわ
塁斗
…まっ,瀧には俺と唯夏ちゃんがいなきゃダメだからなぁ〜‼︎
瀧
ったく調子に乗りやがって…。
瀧
じゃあ,明日な
塁斗
おう
塁斗
ばいなら〜
塁斗は鼻歌を歌いながら帰っていった
瀧
で…えっと…話したいことって?
唯夏
ごめん,そこまで大したことじゃないかもなんだけど…
唯夏
本当に本当に聞いてくれる?
瀧
あぁ
瀧
俺は唯夏の…
兄であり,彼氏だから
瀧
あ,いや,なんでもない…
瀧
とにかく,聞くよ
唯夏
…うん
唯夏
じゃあ,早速話すね







