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ばいりんきゃっと

第11話 - 院長の想い

204

2022年05月24日

#ドラマ

#コメディ

#動物

#猫

#一次創作

×××

ハル

ここはどこだ？

動物病院で眠っていた筈のハルは

気がつくと見知らぬ場所にいた

ハル

花畑？

ハル

見たこと無い場所だな

あたりを物珍しげに見回すハル

ハル

ん？

ハル

なんか向こうが
騒がしいな

ハル

行ってみるか

ハルは声がする方へ歩いていく

するとそこには人だかり

いや、猫だかりができていた

ハル

なんだ？

ハル

あ、あれは・・・

ハルはあまりの光景に仰天する

そこには

かつて自分を家族のように守ってくれていた蒲田重雄ことカマじいの姿があったからだ

ハル

カマじい！

蒲田重雄

ん？

蒲田重雄

お前さんは・・・

蒲田重雄

ハルか？

蒲田重雄

あのハルか？

ハル

そうだよ！ハルだよ！

ハルはカマじいの姿を見つけると涙を流しながらカマじいの胸に飛び込む

ハル

うわぁぁぁん

ハル

カマじい！カマじい！

蒲田重雄

ハル・・・

蒲田重雄

元気にしとったか？

ハル

う、うん・・・

蒲田重雄

そうか、そうか

ハル

会いたかった

ハル

俺・・・

ハル

カマじいに
会いたかったよ

蒲田重雄

何を泣いとるんだ？

蒲田重雄

しばらく見んウチに
お前さん・・・
泣き虫になったか？

ハル

だって、だって

ハル

俺ずっとカマじいに
会いたかったんだ

ハル

そして、お礼を
言いたかった！

蒲田重雄

礼？

ハル

うん

ハル

俺たち・・・

ハル

カマじいに
いろんなもん貰ったのに

ハル

なんの恩も
返せてなかったから

ハル

それが心残りで・・・

ハル

ずっと、ずっと

ハル

会ってお礼が
言いたかったんだ！

蒲田重雄

そうか・・・

そんなハルとカマじいのやりとりを見ていたまわりの猫たちは

物珍しげにカマじいに問いかける

猫Ａ

ねぇ！ねぇ！

猫Ａ

そいつ誰？

猫B

なんで泣いてるの？

猫Ｃ

カマじいの知り合い？

猫Ｃ

ねぇねぇ
教えてよ

蒲田重雄

わかった！わかったから！

蒲田重雄

そんなに慌てるな！

蒲田重雄

こいつはな
ハルと言って

蒲田重雄

ワシの子供
みたいなヤツなんだ！

猫Ａ

カマじいの？

猫B

じゃあ僕たちと
おんなじだね！

蒲田重雄

ああ、そうだな

猫Ｃ

でもさぁ、なんで
ここにいるの？

ハル

いや・・・

ハル

それが俺にも
サッパリでな

ハル

気がついたら
ここに居たんだ

蒲田重雄

・・・・・

猫B

なんか不思議だね！

ハル

あぁ・・・

蒲田重雄

ちょっとお前さんら

猫Ａ

ん？なに？

蒲田重雄

しばらくハルと
二人っきりにしてくれんか？

猫Ａ

えー

猫Ａ

もっと遊びたかったのに

猫B

今日はいっぱい
遊んでくれるって
約束したじゃん！

猫Ｃ

そうだよ！嘘つき！

蒲田重雄

まぁ！まぁ！
そう言うなぁ！

蒲田重雄

後で遊んでやるから！な？

蒲田重雄

しばらく向こうで
遊んどってくれんか

猫B

ちぇっ

猫B

仕方ないなぁ

猫Ａ

絶対に後で
遊んでよ！

猫Ａ

絶対だからね？

猫Ａ

約束だからね？

蒲田重雄

わかった！
約束する！

カマじいの言葉に根負けした猫たちは不満げな表情を浮かべながら花畑の奥へと消えていった

ハル

・・・・・

ハル

悪いなカマじい

蒲田重雄

謝る事はない！

蒲田重雄

しかしお前さん・・・

蒲田重雄

なんでここに
おるんだろうなぁ

ハル

わからねぇんだ

ハル

病院にいた筈なんだが

蒲田重雄

病院？

蒲田重雄

なんかの病気に
なってしまったんか？

ハル

それがな・・・

ハルはカマじいと離れてから今まで起きた事を順を追って説明する

蒲田重雄

そうか！そうか！

蒲田重雄

ついにお前さんにも
家族ができたんだな

蒲田重雄

それは良かった

ハル

それにヤマトは
カマじいと一緒で

ハル

俺たちの言葉が
理解できるんだよ

蒲田重雄

そうか！若いのに
それは珍しいなぁ

ハル

まぁちょっと
間抜けなヤツだけどな

蒲田重雄

わははは！

蒲田重雄

間抜けか！それはいい

蒲田重雄

というと思ったか！
このバカモンが！

ハル

いった！

ハル

なんだよ！

蒲田重雄

家族に対して
そんな事を言うもんじゃない

ハル

わかってるよ！
冗談だよ！冗談！

蒲田重雄

それに、クロもルプも
みんな一緒とはなぁ

ハル

あ！そういえば

蒲田重雄

なんだ？

ハル

カマじいの手紙！
みんなで読んだぞ

蒲田重雄

本当か！？

ハル

うん！

ハル

クロは名前が安易だって
キレてたけどな

蒲田重雄

わははは！
そうか！そうか！

蒲田重雄

まぁ、元気でおるなら
何よりだ！わははは！

ハル

それで小夏がさぁ

ハル

そういえば
あん時のヤマトがさぁ

ハル

そしたらクロがさぁ

ハル

そして・・・

蒲田重雄

？

ハル

俺は病気になったんだ

蒲田重雄

病気？

ハル

癲癇って言うらしいんだ

蒲田重雄

癲癇かぁ・・・

ハル

俺・・・

ハル

みんなに申し訳なくて

蒲田重雄

なんでだ？

ハル

だって・・・

ハル

みんな俺のために
色々してくれて

ハル

なのに・・・

ハル

俺はただ・・・

ハル

寝てるだけしかできない

蒲田重雄

・・・・・

ハル

俺・・・

蒲田重雄

だからかぁ・・・

ハル

え？

蒲田重雄

いや、お前さんが
ここに来た理由だ

ハル

理由？

蒲田重雄

ハル・・・

蒲田重雄

お前さんはまだ
悩んどるんだろ？

蒲田重雄

そのヤマトという若者と
ずっと一緒におりたい

蒲田重雄

けど、そう願えば
またさらに迷惑を
かけるかもしれん

ハル

・・・・・

蒲田重雄

お前さんが
悩んどるから

蒲田重雄

神様がワシと
会わせてくれたんだよ

ハル

神様が？

蒲田重雄

たぶんワシに会わせて
分からせてやろうと
してとるんだよ！神様は！

ハル

なにを？

蒲田重雄

死んでいい命なんてない！

蒲田重雄

生きるべき！ってな

ハル

けど・・・

蒲田重雄

そのヤマトは
お前さんが病気になって

蒲田重雄

迷惑だと言ったのか？

ハル

え？

蒲田重雄

ヤマトはお前さんが
病気になったせいで
迷惑をかけられた

蒲田重雄

そう言っんか？
と聞いとるんだ！

ハル

い、いや・・・
それは言われてねぇけど

蒲田重雄

なら、何も迷惑だなんて
思う必要なんてなかろう！

ハル

・・・・・

蒲田重雄

お前さんに生きて欲しい！

蒲田重雄

ずっと一緒におりたい！

蒲田重雄

そう思っとるから
そんな言葉

蒲田重雄

口が裂けても
言わないんだ！

ハル

カマじい・・・

蒲田重雄

お前さんは・・・

蒲田重雄

ここにおったら
いかんヤツなんだ！

ハル

・・・・・

蒲田重雄

帰るんだ！ハル！

ハル

・・・・・

蒲田重雄

ここはお前さんの
居場所じゃないんだ！

ハル

・・・・・

ハル

うん・・・

蒲田重雄

何を泣いとるんだ！

ハル

俺・・・

ハル

カマじいと出会えて

ハル

本当に嬉しかった

蒲田重雄

ハル・・・

ハル

俺・・戻るよ・・

ハル

家族のところに

蒲田重雄

ああ、それが一番だ

ハル

ありがとう・・・

ハル

カマじい・・・

ハル

俺決めた・・・

ハル

生きる！

ハル

生きて！生きて！生きて！

ハル

生き抜いてみせる！

蒲田重雄

そうだ！その意気だ！

ハル

ありがとうカマじい

ハル

いずれまた
会える日が来るはずだから

ハル

さよならは言わない

ハル

カマじい・・・

ハル

行ってきます

蒲田重雄

あぁ、行ってこい

翌日　動物病院

院長

先日は・・・

院長

不適切な発言をしてしまい
申し訳ありませんでした

院長は大輝と小夏に深々と頭を下げる

風間小夏

ちょ、ちょっと
やめてください

山都大輝

そうですよ

山都大輝

俺もちょっと
ムキになりすぎてましたし

院長

いや・・・

院長

山都さんや
風間さんにとって

院長

ハルくんは家族も同然

院長

それなのに
安楽死など・・・

山都大輝

・・・・・

院長

実は私・・・

院長

以前、癲癇を発病した
猫のオペを執行
した事があったんです

山都大輝

え？

院長

しかし・・・

院長

猫の体力が限界を迎え

院長

手術は失敗に
終わってしまいました

風間小夏

そうだったんですか

山都大輝

・・・・・

院長

一度はハルくんに
オペをと考えました

院長

しかし・・・

院長

あの失敗が
フラッシュバックして

院長

怖かった・・・

院長

またこの手で
救えるはずの命を
救えずにおわるかもしれない

院長

そう思ったら恐ろしくて
安楽死などと

山都大輝

・・・・・

院長

しかし・・・

院長

私は思い出したんです

院長

獣医を志していた頃の想いを

山都大輝

想い？

院長

動物の命を救いたい

院長

そんな単純な想いですが
初心を思い出したんです

院長

ですから山都さん！

院長

私からお願いがあります

山都大輝

お願い・・

院長

私に・・・

院長

ハルくんの

ナース

院長！

院長

ど、どうした！

山都大輝

何かあったんですか？

ナース

ハルくんが・・・

山都大輝

！！！！！！

山都大輝

ハルがどうかしたんですか？

院長

どうしたんだ！
まだ癲癇の発作が
出るタイミングじゃ

ナース

ずっとケージの中で
大声で泣いてて

ナース

なだめても
泣き止まないんです

山都大輝

ハルが？

風間小夏

大輝！

風間小夏

行ってよう！

風間小夏

大輝ならハルちゃんが
なんて言ってるか
分かるでしょ！

山都大輝

あ、ああ・・・

大輝はハルが眠るケージのある部屋に入る

そこではハルがひたすら鳴きながら大輝の名前を呼んでいた

ハル

ヤマトー！

ハル

ヤマトー！

ハル

返事してくれー！

ハル

ヤマトー！

山都大輝

なんだ！ハル！

山都大輝

何かあったのか？

ハル

あ、ヤマト！

山都大輝

お前鳴きすぎ！

山都大輝

受付のお姉さん
鳴きそうな顔してたぞ

山都大輝

心配かけんなよ！

ハル

悪い・・・

ナース

（会話してる？）

ナース

（いや、まさかね）

ナース

（まぁ、猫ちゃんが
癲癇だったら）

ナース

（精神的におかしくなるのも
分かる気がする・・・）

風間小夏

・・・・・

風間小夏

（多分この人）

風間小夏

（昔の私と同じ
勘違いしてるんだろうなぁ）

山都大輝

で？どうした？

ハル

ヤマト・・・

ハル

俺は生きたいっ！
生き抜きたいっ！

山都大輝

ハル・・・

ハル

だから・・・

ハル

俺を手術してくれ！

ハル

ヤマト！手術してくれ！

山都大輝

いや俺が？

山都大輝

無理！無理！無理!！

山都大輝

俺がんな事
できるわけねぇだろ

山都大輝

院長先生に言えよ！ホラ！

大輝は院長の体を引っ張り無理矢理ハルの前に立たせる

院長

ちょ、山都さん

ハル

ニャー！ニャー！

院長

え、えっと・・・

山都大輝

あんたか？
あんたなら俺を
手術できんのか？あ？

山都大輝

って言ってます

院長

あ、はい・・・

院長

で、できます・・・

院長

（え？なに？）

院長

（猫のことば理解できたりするの？）

院長

（いや、まさか）

ハル

ニャー！ニャー！

山都大輝

だったらすぐに俺を
手術してくれ！はやく！

山都大輝

って言ってます

院長

・・・・・・

院長

山都さん・・・

山都大輝

はい？

院長

私からのお願いの
話なんですが

山都大輝

いや、今その話は

院長

私にハルくんの
オペをやらせてください！

風間小夏

え・・・

山都大輝

院長先生・・・

院長

必ず救いますから！

院長

絶対に救いますから！

院長

お願いします！

院長は土下座をする

山都大輝

・・・・・

院長

私にハルくんを
救わせてください！

山都大輝

・・・・・

山都大輝

はい・・・

山都大輝

お願いします！

院長

ありがとうございます！

院長

ハルくん！

ハル

・・・・・

院長

君は私が必ず
救ってみせる！

院長

だから信用して欲しい

ハル

ニャー！ニャー！

山都大輝

よろしくお願いします

山都大輝

って言ってます

院長

ああ！任せてくれ

院長

君！

ナース

あ、はい

院長

今すぐハルくんの
オペを執り行う！

院長

今すぐ準備を！

ナース

はい！わかりました！

山都大輝

院長・・・

山都大輝

ハルをお願いします

院長

はい！

院長

必ず救います！

To Be Continued

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×××

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