???
保安官
目をつむる私に対し… 聞き覚えのない声が語りかけてくる… 誰だろう…
???
そうだなぁ、ある時は置物にされ…
ある時は壁とかステンドグラスに顔書かれ、大勢から拝まれる人の知り合い…って所かな
…今考えを読まれたのか?
???
フフ…すまない
少しだけお行儀悪かったかな?
ゆっくり眼を開けていく…
立ち上がって辺りを見た。
果てしなく広く… しかし真っ暗だ… 壁のような存在を感じられない空間… 現実感というものが全くなかった… 視線を正面に移すとそこには一人の人物が立っていた… 顔がよく見えない… いや正確にいえば見えている… だが常に変化しているような… とにかくどんな顔か聞かれても答えに困る顔をしていた…
???
覚えて貰えないのが玉に瑕だが
私の顔はこういうモノだ
まぁ元の顔を見たらみんなこう言うだろう〜
"きゃぁぁ抱いてぇぇ"っと!!
身長は高い… 目算で180cm程に見える… やや細身か…
???
どうだ?結構いい体してるだろう?
いやぁ我ながら恵まれすぎて自分が怖い
・・・ 辛うじて男性と取れる声は… 涼しさを思わせる透き通った声d
???
そこまで思ってもらえるとは!
我ながら自分の恵まれた声すらも恐ろしいねぇぇぇ!
あの人の考え読むのやめて貰っていいですか💢 そういうの本当嫌なんで💢 何自慢か知りませんが 一々鬱陶しいんですけど💢
???
お、おい…貴殿…!?
世の中には思っていいことと悪いことがあるんだぞ!?
それに、考え読むなって言うなら
せめて声出してくれたまえよぉぉ!!
会話というのはお互いが声を出し合って成り立つものだろう!!
このままじゃぁ私!
一人で盛り上がって大声で騒いでるヤバいやつじゃないかぁぁ!!
はぁぁぁぁぁぁ……
保安官
良い教訓になって良かったですねぇぇぇぇ〜〜〜〜
???
保安官
私の状況から察するに…
ここはあの世であなたは神仏の類いでしょう?
???
落ち着きすぎてて驚いた……
人によっては凄まじく動揺して、話すのにも一苦労だというのに…
保安官
殺されても文句言えません…
さ、天の主よ…
天国と地獄、私が行くのはどっちですか?
???
少しは取り乱してくれても…!
保安官
まぁ、生前牧師さんから聞いてたような光景とは違うのでそこは勉強になりましたがね?
ささ!速いとこカタつけてスッキリさせて下っっさ〜〜〜〜い!
???
待てぃ!!!!
フゥゥゥ調子狂うなもぅ…
未練とかないのかい…?
保安官
一瞬残したものたちの顔が 脳裏を過ぎる…
ジョンソン
保安官!
カスター
アメリア
今日もお疲れ様でした❤
私の大切な者達…
保安官
???
保安官
今はそっちの方が気になります…
???
???
あるいはそれ以外…?
保安官
???
それこそ聖書には書かれて無い行き先…
なんてね…
保安官
???
保安官
???
保安官
パッチン!
目の前の人物が指を鳴らすと… 遥か向こうから馴染みのある 椅子二つとテーブル一つが 音もなく近づき手前で静止する。 彼が片方の椅子を引いた…
保安官
???
どうぞ…
言われるがまま腰掛ける 座った感触も私の知る通りだ。 そうして彼が反対側の椅子に 腰掛けてきた
???
生前の一部始終を今1度見させてもらった
だいぶ悪党退治が達者じゃないか?
保安官
???
80飛んで6人を拘束…
加えてそのうち半数を
正面切っての早撃ち対決で
打ち倒すなんてそうそう無理だ…
加えて80人を9年の月日で豚箱にぶち込んだ。
そうそうできることじゃない
保安官
私一人の手柄では無い…
加えて決闘した40人のうち10人も死なせてしまってます…
褒められることじゃない…
???
その腕前でどうかね?
全くの他所の土地で困ってる人々を助けるなんて事やっては貰えないだろうか?
保安官
???
ネバダの片田舎や州どころか…
国や大陸といった範囲だ
なんと荒唐無稽な…
保安官
一個人の力量ではどうしようもないのでは?
???
無論私のいう所にも、兵隊や政府というものはある。
彼等と協力して平和を護って頂きたい…
目の前の人物の話通りなら その出先とやらでもやることは 変わらないか… ただそうなると気がかりなことが ひとつある…
保安官
人相や人種…
外見や毛色等…
そういった辺りで何か知ってるものがあるなら事前に教えてもらいたい。
手配書があれば尚助かるんですが?
???
保安官
犯罪者なら手配書の一つや二つ出回るもんでしょう?
???
ますます理解に及ばん… 治安を乱すような輩なら 概ね何かしらの悪事に 手を染めているはず… それが犯罪者では無いなど…
???
素手で強い場合もね…
保安官
???
お願いできないか?
今ひとつ現実味の湧かない話だった… 全く知らない他所といい… 武器道具の分際で力… まるでおとぎ話のような話信じるなど 到底正気の沙汰では無いのだろう… だがそれ故に私は期待してしまう…
保安官
そんな連中と戦うからにはそれ相応の報酬がない限り私も首を縦に振れませんよ?
それこそ… 私が強盗団から 吹き飛ばされる前くらいに 時間を戻して貰えるなら… また妻に会えるならば… 戦場だろうが地獄だろうが 喜んで飛び込んでみせる。
???
それと生き返り希望?
随分とでかい要求だ事でぇ…
また心読みやがって…💢
???
ただ…
目の前の人物の顔が ゆっくり下に傾いていく…
???
それだけはどうしようもないんだ…
私としてもそうして差し上げたい…
しかし、1度過ぎてしまった運命をねじ曲げる事…
それは誰であれできないんだ…
保安官
情けない事に目の前の存在に 奇跡を望んでしまった… このような状況に現れた… なら生き返る… 時間を戻す… そんな芸当だって可能なんじゃないか… そう本気で期待してしまった。 話を聞いた結果このザマだ… 所詮奇跡なんざ… 金目当ての宗教家共が 嘘方便を並べるための商売口上… 「期待して損した…」 席を立ち上がり身を翻して 立ち去ろうとする。
保安官
なら後は変えられない我が命運委ねますよカミサマ…
???
貴殿はもうどうしようもない!
だが貴殿に関わった者達が困らなくて済むくらいは出来る!!!
まだ決まってない運命を少しいじるくらいは私にもできるんだ!!!
保安官
足早に立ち去りかけたその足が止まる… 背中越しにその声を聞いた…
???
名前はアメリア!
天涯孤独で、頼れるご両親も亡くなっているご麗人が!
ならば彼女の今後の人生、平穏無事に過ごせるよう手回しできる!
保安官
この…!!
「人が気に病んで仕方の無い事を…」 怒りが込み上げた… 振り向きざま… 乱暴に近寄ってソイツの 胸ぐらを掴んだ。
保安官
そんなに楽しいですか…?
心を読むなと言ったはずだ!!!
???
す…すまない!
だが…!お願いだ!
助けてくれ保安官殿!!
保安官
はは、あははははは…!!
面白いこと言う!
いいかお前が今助けを求めているのは
悪人とはいえ人の命を奪った男だ!
そんな腐れ外道に対し
生きとし生けるを愛する神ともあろうものが
助けてだと…!?
なんの冗談だ!!!!
???
私がここまで食い下がる理由!!
貴殿の殺意には理性と正義が宿る!!
そういうものでなければ敵を打ち倒すことができないからだぁぁ!!
保安官
なんだと…?
奴が掴みかかっている私の腕に 両手で強くしがみついてくる…
???
だがその心には
常に誰かの平穏を守らんとする意志があった!
しかし私が言った連中というのは
人の平穏を平気な顔して滅茶苦茶にできてしまう奴らだ!
未熟な精神のまま…!
強い力を持つが故に…!
彼等を食い止めれるのは!
強力な力を得ても尚飲まれずに支配する気高き魂の持ち主のみ!!!
だから理性をもって戦える貴殿のような高潔な戦士が必要なんだぁぁ!!!!
保安官
悲痛に訴えてくるその叫びから… 語られる言葉が真実だと直感した… 手を離すと同時…男は両手をテーブルにつき…! 身を震わせてこちらを真っ直ぐみるような素振りを見せる
???
それ故にこの様なこと言ったら無下にできないと感じるのもわかっていた!!!
アコギな条件を持ちかけてるのは百も承知だ…!
卑怯と言ってくれていい呪ってくれても結構だ!!
だが今の私には貴殿に頼る以外他に切れるカードがない!!!
頼むその力で!その心で!!!
どうか、どうか多くの命を救ってくれないか!!
「この通りだ!!」
そう叫び…額がテーブルに当たるほど深く頭を下げてきた…
保安官
私も姿勢を正して座り直す。
保安官
真実を話してるのよく分かりましたから…
本当に残したもの達が困らなくて済むんですね?
直後、勢いよく頭を上げて 食い入るように顔を向けてくる…
???
取引だ!
貴殿が飲んでくれるなら必ずアメリア婦人の平穏は保証する!
保安官
私の妻だけでは納得しません…
私の部下、私に関わった友人達もです…
誓えますか?
彼が目を瞑り、少しの沈黙の後 拳を胸に当てて言った…
???
…
保安官
椅子からゆっくりと立ち上がり…
彼に背を向けまぶたを閉じる…
在りし日…私が残したもの達を想う… 押し寄せるのは悲しみ… 「彼らと共にもう歩めない…」 その事実が今になって胸を苦しめる…
まず思い描いたのは… 保安隊の皆… こんな形で後を託さねばならない… 本当に心苦しい…
ジョンソン
保安官!
ジョンソン… 若輩のあなたに背負わせなければならない… 未熟な私はなんて酷い上官か…
カスター
ジョー… 君が書いてくれる勇ましい戦功手紙… もう受け取れなくなってしまいました…
そして…
アメリア
今日もお疲れ様でした❤
愛する私のアメリア…… 幸せにすると言っておきながら 君を不幸にしてしまった… 夫としてこれほどまでに残酷な裏切りは無い… 本当にごめんなさい… 許されるならばもう一度だけでいい 君を抱きしめたい… 「心から愛している」 その一言だけ伝えたい…
気がつくと私の頬を一筋の涙が伝った… そんな私の心を読み取ったのか… 背にした彼が立ち上がり… テーブル越しの私の横にたって手をかざしてきた…
やがて… その手元から暖かな光が灯り… この身体を包み込む… 驚きと共に、彼の方に体を向けた…
???
汝の願い…
私がしかと預からん。
我が使命叶えられた暁…
汝の嘆きまた現実とならん。
異邦の地へ赴かん我が言を携えし勇者よ…
その身、これより我が名の元に…
授けん祝福は回天成し得る蒼き理…
願わくば、高潔なる汝の魂…
堕落の誘惑に敗北せん事を…
身体の中に何かが入り込んだ… 不快感が無ければ苦痛もない… きっとこれはかつて… 聖人と呼ばれたもの達が 賜ったものと同じなのだろう…
私の体は自然と… 目の前の者… いや目の前の御方の前で両手を握り 片膝を地面に着ける 祈りの姿勢を取った…
保安官
御身より授かった言葉
この生命にかけて成し遂げます…
不敬の言動に心からのお詫びを…
私への心意気に感謝を…
ゆっくりと頷いた御方が… 次第にその手に灯した光を消していき… 再び辺りは暗闇に包まれた…
???
後はお願いするばかりだ。
保安官
では早速、現地へ向かいたいので行き方を教えて欲しいのですが?
???
今すぐ送還するのでね。
保安官
それってどういう…
???
パッチン
指を鳴らした… 直後私がいる床が筒抜けて 身体が一気に下に落ちた…
保安官
ちょあのあのあの!!!!これはさすがに聞いてな!
んぎゃぁぁぁぁぉ!!!!