私と春翔は高校で出会った。
2歳年上の、初めての彼氏だった。
周りも「お似合いだ」と祝福してくれた。私もそう思っていた。
ずっと一緒にいるんだって思ってた。
春翔が第一志望の大学に合格した日だった。
山川のぞみ
大学に合格した。教師になれる。 家に来て(この時はまだ実家に住んでた)そう嬉しそうに話す春翔に、「おめでとう」も言わず私はそう切り出した。
春翔の顔から笑みが消えた。
西谷春翔
山川のぞみ
この瞬間から、何かにヒビが入った。
山川のぞみ
山川のぞみ
山川のぞみ
山川のぞみ
西谷春翔
山川のぞみ
西谷春翔
西谷春翔
山川のぞみ
山川のぞみ
山川のぞみ
これ以上は喋れなかった。涙が止まらなかった。
私の、ヒビが入った何か____純粋な彼に対する愛情はもう機能しない。
春翔の前で、疑念のフィルターはもう外れない。
だから別れた。
春翔が私の目の前で、レイナさんの連絡先を消しても 無理だった。
どうしてもヒビを修復することは出来なかった。
ヒビが入ってから別れるまで1ヶ月もなかった。
春翔は最後まで「これしか道はないのか」と言っていたけど そんなの私もわからない。
ただ、ヒビ割れて原型をとどめていないこの気持ちを持っていたくないだけ
辛すぎるから。
もう二度とこんな気持ちを抱くことはないんだろうな……
と、思ってたのに___
柚月
ずっと心にスキマ風が吹いていた私の前に、6歳年下の少年が現れた。
一年前のことだけどあの日のことは鮮明に覚えてる。
柚月
山川のぞみ
山川のぞみ
柚月
山川のぞみ
山川のぞみ
柚月
山川のぞみ
柚月
山川のぞみ
山川のぞみ
柚月
山川のぞみ
山川のぞみ
山川のぞみ
初めて話す中学生相手にスラスラと言葉が出ていた。
春翔と別れて、彼氏がいないまま高校を卒業して大学に進学してから
私は心の底から笑えていただろうか。
それが今は…… 付き合ってたころみたいに____
涙がこぼれた。
柚月
柚月君が驚いた顔でこちらを見た。
山川のぞみ
私の頬を伝う涙はとても温かかった。
マイナスの感情で流す類いの涙じゃないから
私でもまだ楽しいと思える__ 涙が止まらなかった。
背中に何かが触れた。
服の布地越しに温かい何かが伝わる。
柚月君が私の背中をさすっていた。
今ごろになって、「人前で泣いた」という事実が羞恥心を伴って私を襲った。
顔をあげることが出来ずに小さな声で謝った。
山川のぞみ
柚月
山川のぞみ
柚月
山川のぞみ
柚月
顔をあげた。まだ幼さが残る顔がすぐ近くにあった。
恋を捨てた大学生と身勝手な理由で居場所を失った中学生は、しばらく見つめあった。
あの時の穏やかで優しい沈黙は忘れない。
山川のぞみ
柚月
山川のぞみ
そしてヒビ割れた何かは形を取り戻していく__
西谷春翔
でもやっぱり、ラインくらい消したらよかったんだ。
最後まで別れることに反対だった春翔がその気になるから。
西谷春翔
山川のぞみ
春翔の自宅からも大学からも、この道は通らないはずだ。
黙り込んでる私をよそに春翔はさっさと私の横に並んだ。
西谷春翔
西谷春翔
平静を装おってるけど、これを聞く為に待ち伏せしたんだと分かる。 下を向いたまま固い声で答えた。
山川のぞみ
西谷春翔
西谷春翔
西谷春翔
山川のぞみ
山川のぞみ
山川のぞみ
山川のぞみ
山川のぞみ
山川のぞみ
西谷春翔
山川のぞみ
西谷春翔
山川のぞみ
顔を上げてしまった。馬鹿正直に足も止まる。
春翔も歩みを止めて、体ごと私に向き直った。
山川のぞみ
西谷春翔
山川のぞみ
春翔の目がスッと細くなった。
西谷春翔
西谷春翔
山川のぞみ
山川のぞみ
山川のぞみ
耐えられなくて先に歩き出したのは私の方だった。
名前のつけられない感情が渦巻いて、泣きそうなくらい胸が痛かった。
山川のぞみ
私のヒビ割れを修復出来るのは柚月君しかいない。
いつものように軽口を叩いてゲームしてそれで……
「既読」 がついた。 珍しく1日という時間をかけて。
このヒビ割れは柚月君しか修復出来ない。
だから嘘であって欲しい。
柚月
積み上げた何かの 行き場がなくなってしまうから。
コメント
10件
柚月くん…… 先生と何があったんだろ……
前回の話で、元カレ思っていたよりいい人だと思ったのですが、こんな最悪ストーカーだったとは… しかも柚月くんの様子がおかしいですね😰 元カレに何か言われたか、変に気を遣ってしまったか… この不穏な展開を乗り越えたあとの、甘々な展開が早く読みたくなりますね☺️✨
いろいろありまして、超不定期更新のこの連載ですが、やっと落ち着いて来たのでこれからは 隔週日曜日更新 という形をとらせて頂きます。しかし時間はマチマチです😰また予告なく遅れる可能性もあります🙇🙇 ・マリ〇ーってまだ現役ですよね?ね、ね、ね?