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それじゃ僕も連れてって
莉犬
君はびっくりして僕を見た。
自分でもびっくりした。
無意識に言っていたみたいだ。
でも…。
君を一人で死なせるわけにはいかない。
だから——————。
るぅと
僕はそう言って、家の中に戻った。
財布を入れて、ナイフを入れて、携帯ゲームもカバンに詰めて。
部屋を出て行こうとした時。
パサッ
って音が聞こえて。
振り返ったら、毎日書いていた日記が落ちていた。
窓を開けっ放しにしていたから、風に吹かれて落ちたみたいだった。
僕はそれを置いてあったところに戻した。
その時——————
ふと、隣にあった写真立てが目に入った。
僕が小さかった頃の写真だ。
お母さんが僕を抱いて、笑顔で笑ってる。
その隣で、お父さんがお母さんの肩を抱いて笑ってる。
写真に写る僕は、まだちっぽけな赤ん坊で、頼りなさそうに見えた。
まぁ、今でも誰にも頼られなんかしないけど。
この時は、たくさん愛されていたんだなぁ。
そう思った。
今は誰も僕のことを愛してなんかくれない。
僕は、写真を取り出し、写真に写る僕を見つめた。
そして、
力任せに破って、捨てた。
ついでに、隣にあった日記も捨てた。
どうせ死ぬんだから、思い出のものなんか残していかない方がいい。
そう思っていたんだ。
僕は、部屋を出た。
外に出たら、君が待っていた。
莉犬
君は、「本当に?」とでも言うような目で僕を見つめた。
でも、僕は決めたんだ。
大好きな君と一緒に、
死のうと。
るぅと
莉犬
そういう君の顔は、笑っていた。
本当は、嬉しかったんだろうな。
るぅと
そう言いながら、僕は走り出した。
莉犬
莉犬
君が後ろから、僕の名前を呼びながら追いかけてくる。
僕はただ走った。
雨粒が頬に当たる。
君はいつになっても僕に追い付かなかった。
少し待とうと思い、君の方に体ごと向けた。
その瞬間、君が僕の胸に飛び込んできた。
それと同時に、君は僕を強く抱きしめた。
僕は君の勢いに負けて、倒れ込んだ。
とっさに君が僕の頭に手を回す。
おかげで、僕はコンクリートに頭を強打しないで済んだ。
でも、命に関わる、関わらないとか、そんなことはどうでもいい。
君と一緒に死ぬことができれば、僕はそれで良いのだから。
濡れたコンクリートに当たって、髪、服、肌が濡れていく。
君はコンクリートに寝転んで、わざと髪や服を濡らしていた。
莉犬
もう中学生なのに、まるで小学生のような無邪気さを君は持っている。
でも、僕は君のそんなところが好きだった。
僕は君の真似をして、水に濡れようと、思いっきり水たまりに寝転がった。
君が、驚いた目をして、僕を見る。
でも、すぐに笑顔になって、僕の隣に寝転んだ。
莉犬
そう言いながら、派手な音を立てて水たまりに飛び込む。
おかげで、水しぶきを体全体に浴びることになってしまった。
でも、そんなことどうでもいい。
今度は僕から君を抱きしめた。
すると、君はすぐに僕を抱きしめた。
濡れているとか、今はそんなのどうでもいい。
ふと、笑いが込み上げてきた。
るぅと
るぅと
莉犬
僕は、数年ぶりに、声を上げて笑った。
それを見た君が、負けじと大声で笑う。
雨音に負けないくらい、大きな声で僕らは笑った。
これが、人殺しの君と、ダメ人間、僕の旅の始まりだった。