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見知らぬ本屋と12冊の呪われた絵本

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見知らぬ本屋と12冊の呪われた絵本

22 - バトル4 小さき意思と傲慢な愚者【終】

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2024年12月18日

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七星

くそっ!

七星

迂闊だった。

七星

やはり、六冥も一緒に連れて来るべきだったか。

息も切れ切れに、何度も同じような言葉を吐いて後悔する七星。

彼女の元に執事から電話がかかってきたのは、警察病院を後にした直後だった。

四ツ谷

爺やさん、今日は六冥がいるから屋敷に居てもらってるんだろ?

七星

だから、その爺やが謎の男からの襲撃を受けた。本人は無事みたいだが――六冥の姿が見当たらないらしい。

七星

爺やの話だと、六冥が浦島太郎と叫んだ次の瞬間には、男共々姿が見当たらなかったらしい。

一宮

それって、その男と勝負するために……。

七星

異空間に飛んだ可能性が高いと思ってる。

七星

彼女はまだ幼いし、絵本のホルダーとしての経験も乏しい。

七星

そんな状態で、まともにやり合えるとは思えないんだ。

大通りに出ると、七星が手を挙げる。

それに気づいたタクシーが、すぐに横付けしてくれた。

七星

運転手さん、少しばかり急いでいる。

七星

必要であれば、リスクを背負う分だけ上乗せで報酬を支払わせて貰おうと思っている。

七星

よろしく頼む。

とんでもなく無理なお願いをすると、おそらく自分の家であろう住所を口にする七星。

タクシーの運転手はやや戸惑っていたが、可能な限り急いでくれるようだ。

四ツ谷

爺やさんがいないと、移動手段もいきなり庶民的になるんだな。

七星

社会勉強としてタクシーには何度か乗車したことがある。

四ツ谷

……普通、タクシーは社会勉強じゃ乗らねぇんだよなぁ。

一宮

とにかく、爺やさんから引き続き連絡があったりしないのか?

七星

あぁ、今のところはな。

もどかしい思いを抑えつつ、タクシーが七星の邸宅に到着するのを待つ。

そして、見たことのある景色が広がると、タクシーは停車した。

七星

釣りは結構。
リスクを背負ってくれた報酬だ。

そう言って、1万円札を数枚取り出すと、そのまま運転手に渡してしまう七星。

戸惑っている様子の運転手に、それぞれ声をかけつつ、先に降りた七星を追った。

四ツ谷

すいませんね。あいつ金銭感覚バグってるんで。

一宮

その、本人は納得して支払っていると思うので、もらってやってください。

そして、タクシーを見送りもせず、邸宅に向かって駆け出した。

屋敷の中に飛び込むと、信じられない光景が広がっていた。

男が片腕で六冥の首元を掴み上げていたのだ。

辛うじて足が届くおかげか、六冥は苦しそうにしながらも生きてはいるようだった。

????

おう、遅かったなぁ。

一宮達の存在に気づくと、男は笑みを浮かべた。

七星

六冥を離せっ!

????

そいつはできない相談だなぁ。

一方、六冥は男に向かって声を絞り出す。

六冥

ど……どうして?

????

あのなぁ、オオカミ少年で真っ先に連想されんのが【嘘をつく】なわけよ。俺がそれを素直にストーリーとして使うと思うか?

????

お前は【嘘をつく】を警戒するあまり、頭が回り切らなかっだろ?

????

その印象が強かったから、思わず俺の言っていることを【嘘だと決めつけた】んだよ。

????

オオカミ少年のことを信じなかった村人達のようにな。

六冥

そ、そんな……。

????

まぁ、やっぱりガキはガキだな。

????

ちょっと誘導してやれば、簡単に引っかかってくれる。

七星

まさか、すでに……。

????

おー、察しがよろしいようで。

????

俺は伍代。

伍代

悪いが、このガキの絵本は俺がいただく。

一宮

やめろ、六冥を離せ!

伍代

いやいや、ルールに則って俺が勝ったわけだからさ、こいつをどうしようと俺の勝手なんだよな。

伍代

お前ら、もしかして他のホルダーから絵本奪ったことないのか?

伍代

まぁ、仲良しこよしで馬鹿面揃えて、今さらになってノコノコ出てきたんだもんな。

伍代

いいか?

伍代

絵本の持ち主が死ぬと、基本的に絵本は次の持ち主を探そうとするんだ。

伍代

そして、勝負が行われた際に所有者を失った絵本は、より強い者――つまり、所有者を打ち負かした相手のものになるってわけだ。

伍代

絵本の所有者として、こんなに簡単な判断基準はないだろ?

四ツ谷

まぁ、待て。

四ツ谷

話し合おうや。

四ツ谷

あんた、金が目的か?

四ツ谷

それだったら、ここのお嬢様はたんまり金持ってるぜ。

四ツ谷

交渉次第じゃ、絵本の売値を遥かに上回るかもな。

七星

か、勝手なことを言うな――。

七星

ただ、六冥の命を保証してくれるのであれば、金に糸目はつけないつもりだ。

伍代

ふーん、嫌だね。

伍代

あんたら、人が絵本に喰われるの見たことないだろ?

伍代

せっかくだから見せてやるよ。

七星

……やめろ。

七星の悲痛な呟きも虚しく、伍代は何かを握り潰すかのように、右手を強く握った。

一宮

やめろっ!
やめてくれっ!

ふと、こちらのほうに視線を向けた六冥が、かすかに笑みを浮かべた。

六冥

死んだら……三富に会えるか……。

その瞬間、思わず息を呑んだ。

普段は現実世界では具現化しない絵本が現れ、六冥の体に噛み付いた。いいや、飲み込んだと言ったほうがいい。

七星

あ、あぁ……。

そして辺りに響く咀嚼音。絵本が意思を持って人を喰っている。魂だけなのかもしれないが、変に生々しかった。

絵本は六冥の体全てを飲み込むと、満足したかのように姿を消した。

――そこにはもう、六冥のいた痕跡はなにも残っていなかった。

ただただ、そこには浦島太郎の絵本が残っているだけだった。

伍代

さて、これで浦島太郎ゲットー。

四ツ谷

てめぇ……。あんな小さい子になんてことを!

伍代

ホルダーに小さいも大きいもないんだよなぁ。

伍代

それに、俺が負けたら喰われていたのは俺だ。

伍代

弱肉強食って言葉知ってる?

伍代

俺がただ強かっただけなんだよ。

一宮

……お前、伍代って言ったな?

伍代

それがどうした?

伍代

悔しければかかって来いよ。

一宮

くそっ!
ふざけやがって!

七星

……待て、ここは私にいかせて欲しい。

伍代

へぇ、いいじゃん。

伍代

今日は大量に絵本が手に入りそうだぜ。

伍代

そうだ。あんたらはさ、立会人みたいな立場で付き合ってくれよ。

伍代

そこのお嬢さんが俺とやりたがってるみたいだしな。

伍代

ルールはそうだな。そこの明らかなモブ感のあるお前。

伍代の視線は四ツ谷に向けられていた。

四ツ谷

俺?

四ツ谷

どこがモブなんだよ?
俺には四ツ谷って名前があるんだけど。

伍代

いや、全体的に。

伍代

とにかく、モブの四ツ谷がルールを決めていい。

伍代

お前達は指を咥えて見てろよ。

伍代

お嬢様が蹂躙(じゅうりん)される姿をな。

七星

貴様……誰を怒らせたのか分かっているのか?

七星

一宮、すまないが、私は君のポリシーとは異なることをしてしまうかもしれない。

七星

先に謝っておく。

一宮

あぁ……それは無理強いできないからな。

七星

ありがとう。

そう言うと改めて七星は伍代を睨みつけた。

七星

伍代、貴様をこの場で屠(ほふ)ってやる!

七星

覚悟しろ!

伍代

はいはい、そんなに熱くならないほうがいいと思うよー。

七星VS伍代 いざ尋常に――勝負。

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