春奈
はぁ…昨日のウタさんの言葉が気になって仕事どころじゃないよ
春奈
(ウタさんはゲームの中だけの人…だから、こんな気持ちになっちゃいけない…)
回想
ウタ
ハルはすごくバレー好きなの伝わってくるし…俺、ハルのこと――
回想終了
春奈
あー!でもやっぱり気になるー!!
修治
何が?
春奈
うわ!びっくりした…どうしたの?
修治
どうしたはお前だろ。今日仕事でミスしてばっかじゃん
春奈
う…
修治
ここ、座るぞ
春奈
うん。あれ、珍しいね、修治がコンビニ弁当なんて
春奈
いつも社食だよね?
修治
まあな。お前と少し話したかったからさ
春奈
話?なんの?
修治
お前、最近例のオンラインVRゲームにはまってんだって?
春奈
――!
修治
その顔…やっぱり本当なんだな
春奈
なによ。本当でも別にいいでしょ。犯罪でもないんだし
修治
確かにな。あれって表向きは部活体験が出来るゲームだし
修治
でも、本当は恋活とか婚活目当てのやつが多いって聞いたぞ
春奈
それは…
修治
お前もそっち目的なわけ?
春奈
…そうだけど。悪い?
修治
いや、悪いっていうかさ…現実的じゃないだろ
修治
婚活ならもっとリアルな世界でした方がいいんじゃね?
春奈
それはわかってるよ。でも、こっちだって色々事情があるの
修治
事情って?
春奈
…現実世界で出会いなんてないし
春奈
だけど、いきなりお見合いとか、なんか怖いし
春奈
だから…
修治
なるほどな…でも、それなら余計にやめとけよ
春奈
え…?
修治
自分でもわかってんだろ?
修治
たとえ男といい感じになったとして、そしたら…
修治
いつかアバターの向こうの男に会わないといけなくなる
修治
その方が怖いだろ
春奈
それは、そうだけど…でも…
春奈
(ウタさんは…ウタさんのことは…)
修治
もしかして、もう好きなやつがいるのか?
春奈
……
修治
やめとけって!現実みろよ!
春奈
わかってるよ!私だってやめておいた方がいいって!
春奈
でも…でも、もう好きになっちゃったんだもん…
修治
――っ
春奈
簡単には、忘れられないよ…
修治
…俺は、心配なんだよ
春奈
え?
修治
お前に傷ついてほしくない
春奈
…どうして、そんなに心配してくれるの?
春奈
私たちってただの同期でしょ?
修治
ああ。ただの同期だよ
修治
でも、だからこそお前のことは他の社員より知ってるつもりだ
修治
誰にでも優しいとことか…傷つきやすいとことか…
修治
簡単に人を信じちまうとことか…心配なんだよ、本当に
春奈
その気持ちはありがたいけど、でも私は…
春奈
(私は…ウタさんが…)
春奈
…もう私のことは放っておいて
修治
春奈…!
春奈
大体、修治には関係ないことでしょ。私がどうなったって――
修治
なんでそんなこと言うんだよ…
修治
お前、俺の話ちゃんと聞いてたか?
修治
俺はお前が心配で放っておけねぇって…
春奈
だから、同期としてそこまで心配してくれる気持ちは嬉しいけど…
修治
ああ、もう…お前って本当に鈍い
春奈
鈍いって…急になによ
修治
…もっとハッキリ言わねぇと伝わらねぇか
春奈
え?
修治
俺はお前に幸せになってほしいし
修治
できれば俺が幸せにしてやりてぇんだよ
春奈
――っ!
修治
お前が好きだ
修治
アバターで偽ったやつより、俺を選んでくれ