~はじめに~ めちゃくちゃ長いです。この話を読み終わってからお花を摘みに行こう、と考えている方は先にお花を摘みに行ってください。 万全の状態で読むことをオススメします。 最後に作者から挨拶があります。
髪を下ろした方が私は似合う。
OL時代はハーフアップが私の正装だった。
今は後ろで1つに束ねてることが多い。
理由は単純。 掃除したり料理したりする時に下ろしてたら非常に鬱陶しいのと、子供の時はよく 束ねてたから。
__メイクも出かける時以外は最小限に抑えるようになったけど、今日は違う。久しぶりに20分くらい時間をかけた。
山川のぞみ
柚月
山川のぞみ
__ラスボス……じゃない、柚月君のお母さんって今いる?
柚月
__遊ぶなら柚月の部屋で遊べと言ったのに さっそくこれだ。 「リビングには来るな」と言う意味なのに あの女には伝わらない。
やっぱりフルメイクしといて正解だった、と思ったと同時にリビングのドアが開いた。
入って来た その人は私の姿を確認すると にっこりと______挑戦的な笑みを浮かべた。
山川のぞみ
山川のぞみ
私も温度の低い笑みを返してやった。
鳴沢真由子
鳴沢真由子
山川のぞみ
山川のぞみ
山川のぞみ
山川のぞみ
鳴沢真由子
この穏やかじゃなく不毛なやり取りを柚月は顔を赤くして聞いていた。
___三流の大学生のくせに どうしてあんな自信たっぷりに宣戦布告が出来るのか。
いやもう理由は分かってる。
私からしたら ただの月でもこの人からしたら特別綺麗に見えるからだ。
この人も夏目漱石くらい知ってるはず。
大学生は未だ顔を赤くしている柚月を伴ってリビングを後にしようとした。
鳴沢真由子
山川のぞみ
鳴沢真由子
山川のぞみ
鳴沢真由子
山川のぞみ
山川のぞみ
柚月
私はこの女が嫌い。
妥協に妥協を重ねた私を真っ向から否定して見せつけて来た。
だから今、似合わないと知りながら髪を束ねている。 無理やり退化させられた。
無理やり進化させられた。
___この人が私を「おかあさん」と呼ぶ日は_____……なんて。荒唐無稽な絵空事だ。
でもそんな日常も悪くないのかもしれない。
澪
澪
澪
だ、だから のぞみと柚月君がデート出来るなって
山崎孝太
澪
山崎孝太
澪
もし4人で遊びたかったら全然…
山崎孝太
澪
山崎孝太
西谷春翔
澪
西谷春翔
話は球技大会まで遡る。
体育館、グラウンド、テニスコートを使用して行われる球技大会。 俺は朝から3つの試合会場を走り回っていた。
テニスのエキシビションイベントの司会を終えると ようやく休憩時間だ。
休憩に入る前に、隠れて良からぬことをしている生徒がいないか見回りをしていると___
良からぬことじゃないけど ただならぬ雰囲気の____のぞみと柚月君がいた。
一時はどうなることか とひやひやしたけど どうやら解決したらしい。あの2人だからなぁ…と思っていると
風邪を患っているのに無理して来たらしい のぞみの症状が悪化したことが見てとれた。
俺はテニスコートに引き返し、関西弁の女性と山崎孝太が 何か良い雰囲気になっているのを承知で頑張って割り込んだのだった。 (関西弁の女性にめっちゃ睨まれた)
山川のぞみ
も''っど柚月君どお''話ずる''~
澪
___じゃあ私のぞみのお守(も)りしなあかんから帰るわ
山崎孝太
山川のぞみ
澪
俺は さめざめと泣いている昔の彼女から視線を外すと、苦笑いしてやり取りを見守っている今の彼氏の隣に並んだ。
西谷春翔
西谷春翔
西谷春翔
西谷春翔
西谷春翔
西谷春翔
柚月
今の彼氏は、この少年にしては珍しい強気な笑みを浮かべて俺を見上げた。
柚月
西谷春翔
西谷春翔
完全敗北。 失恋だ。
本当に魅力的だと思った俺の彼女は、中学生にとられた。
なのに妙に空が高く見えた。
山崎孝太
山崎孝太
山崎孝太
非常にまずい。 何がまずいって1時に予定が入ってる。
駅前のイタリア料理店の割引クーポンを2枚貰ったので一緒に食べないかと澪さんからお誘いがあった。
部活は12時半に終わる予定で、どれだけ遅くなっても1時には終わると言った手前、延長されると非常にまずい。
山崎孝太
__水族館に遊びに行った帰り、格好良く表現すれば いろいろ吹っ切れた俺は今までのことを柚月に謝った。
「気にしないでいい」と言ってくれたけど、なかったことには出来ない。
だけど未来を変えることは出来る。 俺は前を向く。
山崎孝太
山崎孝太
いつまでもその場で足踏みしている人に構ってられない。
俺は走るペースを上げた。
結局部活は延長された。
待ち合わせ時間から実に40分遅れて待ち合わせ場所に着くと、澪さんが不機嫌な顔つきでスマホから顔を上げた。
澪
山崎孝太
澪
澪さんはスマホを鞄に納めるとようやく微笑んだ。
__そして俺の腕に手を絡めた。首筋に吐息が触れた。
山崎孝太
澪
山崎孝太
澪
恥ずかしいだけやん
山崎孝太
なんだこれ。 なんだこれ。
俺の中学生活はテニスと愛想笑いで染まると思ってたのに なんだこれ。
事実は小説より なんとか。 遠い世界の出来事だと思っていたことが今 現実となっている。
本当に何が起こるか分からない。 ____俺みたいに
ほんの少しの勇気で未来は変えられる。
山川のぞみ
柚月
山川のぞみ
山川のぞみ
柚月
山川のぞみ
山川のぞみ
のぞみさんは鼻歌を歌いながら ポッキーを取り出した。
柚月
山川のぞみ
連想ゲーム的に「さかな御殿」を思い出して、もしかしてもしかすると…と思ったけど のぞみさんが あっけらかんとしているので急に恥ずかしくなった。
柚月
山川のぞみ
山川のぞみ
柚月
山川のぞみ
私は「コメツ」さんが一番好きなんだけど、
柚月
山川のぞみ
[うましか]とかヤバいよ
山川のぞみ
のぞみさんは鞄からスマホとイヤホンを取り出すと、イヤホンの片方を僕の耳に はめた。
もう片方をのぞみさんが はめて、身動(じろ)ぎすれば身体が触れてしまいそうな近距離で曲が再生された。
鼻先が触れて呼吸が止まる。 痛みは消えなくてもいい。
僕の耳に優しく流れて来た歌詞は、すとん と胸に落ちて浸透していった。
きっと高校生になっても大学生になっても、その先も お母さんのやったことで嫌な思いをすると思う。
だけど 幸せだと思える瞬間をのぞみさんとこれからも共有出来るなら、別に構わない。
これが「愛」じゃなかったら何と呼べばいいんだろう。
__曲が終わるとのぞみさんが話しかけて来た。
山川のぞみ
柚月
山川のぞみ
柚月
山川のぞみ
曲終わりの余韻に浸っていたから反応が遅れた。 一気に顔が熱くなった。
山川のぞみ
柚月
僕の隣でのぞみさんがイヤホンを外した。 柑橘系のシャンプーの匂いが鼻孔を通った。
先程の歌詞が頭の中で響いたと
唇に柔らかい何かが触れたのは同時だった。
澪
のぞみが昨日「柚月君の家にお呼ばれされた!」「さかな御殿検索してみた!」とかラインで騒いでたから そんな気がする。
__私の向かいでピザにタバスコを垂らしていた孝太君が顔を上げた。
山崎孝太
澪
山崎孝太
澪
山崎孝太
山崎孝太
澪
別に貸し切りじゃなくてもいいで
山崎孝太
孝太君の顔が少し赤くなっているのは、タバスコまみれのピザを完食したからじゃないはずだ。 私も同じような顔をしてるから。
ドリンクを飲むふりをして視線を外すと、通路を挟んで隣の席に座っている小学生数人が私をじっと見ていることに気づいた。
私の関西弁が珍しく感じたんだと思う。 カタコトの日本語を喋る外国人を見る目だ。
生憎 こういうのは中学の時から経験してる。 ___私は目尻を下げて小学生達に微笑みかけた。
澪
澪
山崎孝太
好きだなぁ と思った。
気まずそうに顔を逸らした小学生達も、関西圏じゃないこの街も、 今は嫌いじゃない。
中学の時は嫌いだった物を好きだと思えるのは、幸せなことだと思う。
もちろん目の前の中学生は違う意味で好き。
きっとまだまだ「好き」に出会える。
濡れた瞳がすぐ近くにあった。
柚月君の瞳が濡れているような気がするけど、私の瞳も濡れているからそう見えるだけなのかもしれない。
柚月
山川のぞみ
柚月
山川のぞみ
柚月
___告白はのぞみさんがしてくれたから
柚月
あの時と同じだ。
私が柚月君に告白した時も、私と柚月君の瞳は濡れていた。
ずっと一緒にいたいって思えたから涙が出た。 二度とこんな思いは抱かないと思ってたから。
山川のぞみ
柚月
山川のぞみ
柚月君は涙を拭って大きく頷いた。
柚月
柚月
山川のぞみ
だってさぁ~、キスするのかもって思ったら寸止めされるし
山川のぞみ
山川のぞみ
柚月
山川のぞみ
て言うか 私はいつの間にポッキーゲーム狂になってるの!?
柚月
柚月
柚月君は私の口元にポッキーを1本持って来た。
先端をくわえると、チョコの甘い味が広がった。
___今日は一段とその甘味が強かった。
浮気された経験から恋を捨てた大学生
家でも学校でもストレスの捌け口にされて どこにも居場所が無い少年
周りとの違いに悩み続ける大学生
過ちを犯してしまった真面目な男
保身に走りながらも罪悪感を抱えている少年
運命の悪戯(イタズラ)で「自分」を殺した女
彼ら彼女らが紡いだ長い長い物語の「始まり」は
純粋な1つの思いだった。
この思いは消えない。 これからも自分と周りを幸せで彩ってくれる。
「そんなに僕に来て欲しいの?」 「僕のこと*****?」
「うん」 「***じゃない方で****」
何があっても大丈夫
Like? No. Love.
女子大生と男子中学生が交際している話 ~Fin~
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コメント
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今から第二弾見ますw
大遅刻かましました申し訳ありません!!!😭😭😭 すっっごく、すっっっっごく良かったです!!本当に好きです!!! 非リア弟さんの書かれるキャラたちは、みんな根っからの悪人ではなく、ちゃんと良いところもあって、何処か憎めないところが大好きでした 嫌いだったはずのキャラも、最終回までにはニコニコしながら読んでしまう程大好きになってしまいました そして最後に二人のキスが見られて幸せです…😭
はじめまして、「無料一般投稿」から見つけさせていただきました。今回が丁度いいことに最終話ということなので、一気読みしてしまいました。 どの登場人物もそれぞれがキャラ立ちしていて、会話の流れもスムーズで。全員、好きになりました。本当に好きです。新参者が生意気な、なんて話ですが、最初に見た話がこれでよかったです。 フォロー失礼します、よろしくお願いします!