語り手
皆様、お世話になっております。
語り手
恐縮至極、
語り手
私どもが本来、このシリーズの主役ではないのは重々承知でありますが、
語り手
先日の話には実はもう少しだけ続きがございますので、
語り手
今回のエピソードも我々の視点からとなること、お許しいただきたく存じます。
語り手
それでは、今しばしのお付き合いを。
裏社会に身を投じた双子の兄に代わり、私がこの家を継ぐと決めて、しばらく経ったある日。
兄上
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通話
09:38
私
兄上、お久しぶりです。どうされました?
兄上
震天動地、だが慌てず聞け。
兄上
今、父上から守れと言われていた娘…
兄上
お前の元許嫁を、繁華街で保護した。
私
なにっ、早百合さんを…!?
兄上
ああ。
兄上
心慌意乱、彼女は酷く怯えている。
兄上
恐らくは、家の者と何かあったに違いない。
兄上
俺はこれから、この娘の家を確かめに行く。
兄上
有事の際には、彼女が警察沙汰に巻き込まれぬよう、早目に策を打たなければならない。
兄上
彗氾画塗…。裏社会にいれば、このようなことは容易い。
私
兄上、感恩戴徳、深く感謝いたします。
兄上
だが、一つ問題がある…
私
といいますと…?
兄上
あの娘をこれから、何処へやればよいのだ?
私
でしたら、飛鳥馬流道場はどうでしょうか。
私
あそこの師匠は、身寄りのない子供たちを積極的に受け入れていらっしゃるとのことですし、
私
これは私が最近調べたことですが、
私
実は早百合さんには、
私
一人、実の兄がいらっしゃいます。
兄上
なにっ、
兄上
そうだったのか…
私
ええ。早百合さんと同じく、正妻の子供ではない上、
私
片腕が故に、北条家からはその存在を否定されていたのですが、
私
その兄というのが、既に飛鳥馬氏の弟子だそうで。
兄上
ならば話が早いな、
兄上
飛鳥馬氏も、この娘を見放すことはあるまい。
兄上
あの娘は、兄と同じ苗字を名乗らせ、
兄上
飛鳥馬流道場へ送ることにする。
私
かしこまりました、兄上。
私
よろしくお願いします。
語り手
もうずっと前の話ですが、
語り手
これが、私の知りうる、早百合さんとの最後の関わりであります。
語り手
兄が彼女の家の問題を片付け、
語り手
私は彼女が飛鳥馬氏のもとへ無事にたどり着いたことを確認したので、
語り手
もう、彼女に関する我々の仕事はなくなりました。
語り手
その後の彼女の人生が、極力平穏であるように、
語り手
我々は、できる限りのことをしたつもりであります…。
語り手
それでは皆様
語り手
一期一会
語り手
浅く短い縁ではありましたが、
語り手
ここまでお付き合い頂けたこと、深く御礼申し上げます。
語り手
またもしもどこかでお会いすることがございましたら、そのときはどうぞ宜しくお願い致します。
語り手
それでは、引き続き小湊様のお話をお楽しみください。
縁談の裏に 終
※今回新しく覚えた言葉集
震天動地(しんてんどうち) 人が驚くほどの事件や騒ぎの際に使用する。
心慌意乱(しんこういらん) 動揺し、心が乱れている様子。
彗氾画塗(すいはんがと) 非常にたやすい物事のたとえ。
感恩戴徳(かんおんたいとく) 深く感謝し、心から敬愛の念を持つこと。






