代理出産クラブ

千里を優しく抱きしめる彰

今年結婚2年目になる 日下部彰（くさかべあきら）と 千里（ちさと）

この夫婦にはとある悩みがあった

それは結婚1年目を 間近に控えた時期に判明した 千里の不妊症である

なかなか子宝に恵まれず 産婦人科で検査をしてみると

千里の月経不順による 排卵障害であると診断された

医師による面談の際、千里は 結婚式前に無理なダイエットをして 短期間に大幅な体重減少が あったと話しており

それが原因で月経不順を きしたのだろうという結論だった

また医師は 結婚1年目間近という事もあり 急な環境変化によって伴う 精神的ストレスも不妊を患った 要因のひとつだろうとも付け加えた

それからは自分を責め続ける千里を 彰が諭す日々が続いた

そして懸命な不妊治療も これといった成果をあげれず 増えていくのは借金ばかり

彰は千里には心配をかけたくないと 借金は１社からしか していないと話しているが

実は１社だけではどうにもならず 今では計３社の消費者金融から 融資を受けており

借金は日に日に雪だるま式に増え続け 合計で250万円をオーバーしている

また、この借金の事が 千里に嘘だとバレれば 千里は間違いなく不妊治療は もう辞めると言いかねない

子供は夫婦にとって悲願であり また、不妊治療をやめれば 千里はさらに精神を病み 今まで以上に自分を責めるだろう

なんとかしなければ！と頭を悩ます彰だが これと言った答えを導き出せずにいる

翌日のオフィス

彰は千里の姿が 脳裏に焼きついて離れない

彰の脳裏に焼きつく千里の姿は常に 自分を責め続け涙を流している姿だった

そんな彰を心配したのか、上司の 御手洗淳弥（みたらいじゅんや） が近づいてくる

昼休憩

彰は千里お手製の 愛妻弁当の蓋を開ける

彰が箸に手を伸ばそうとした時 部下の河上啓一（かわかみけいいち） が声をかけてきた

啓一が座ろうとする

啓一の視界が彰の弁当を捉えた

啓一はコンビニ弁当を見せつける

啓一は深刻な表情で語りかける

啓一は納得したような しないような表情で応える

代理出産

代理出産とは男性の体から「精子」 女性の体から「卵子」を取り出し

体の外で受精 つまり体外受精させてできた「受精卵」を

出産経験のある代理母と呼ばれる 第三者の女性の体に取り入れて 代理で妊娠出産をしてもらう行為だ

彰は啓一の「一般的」という 言い回しに多少の疑問を抱いたが それにあえて触れずに話を進める

そう。代理出産は 日本産婦人科学会により

出産時、代理母が帝王切開によって 死亡するリスクがある事や

女性を出産のための道具として 扱っている点が女性蔑視になるとして 全面的に禁止にされている

また、代理母が「自分がお腹を痛めて 産んだ子供だから」と赤子の受け渡しを 拒否するケースも決して少なくない

そういったトラブルにも発展しかねない デリケートな問題という点も 禁止にされている要因のひとつだろう

彰は思わず大声を出す