松崎陸
浜松!?
突然腕を掴まれ
イルは驚き戸惑ったが
腕を掴んだのが陸だとわかった途端
安堵の気持ちから大粒の涙がこぼれ落ちた
昼休み
穂波達から逃れるために逃げ込んだトイレで
バケツの水をかけられ
髪の毛まで切られ無残な状態に
そしてそれらは灰色の地面に散らばり
怯えるイルを横目に雄大達は更に穂波を煽る
高尾雄大
もっとやっちゃえば?
吉崎隆
まさか坊主!?
坂井穂波
そうしたいけど
坂井穂波
三島ちゃんにバレたらヤバイしねぇ
穂波はそう言いながらも
ハサミをイルの顔に近づけてチョキチョキと切る振りをして笑う
浜松イル
や……やだ……
イルが少しでも抵抗しようとすれば
掴んだ髪を強引に引っ張り
浜松イル
いっ!!
坂井穂波
だーかーらー!
坂井穂波
あんたに拒否権はないって言ってんでしょ!?
坂井穂波
いい加減理解してよ~!
坂井穂波
バカ松さ~ん!
イルにとっては恐怖でしかなかった
まだ昼休みは始まったばかり
まだまだ続くであろう仕打ちを想像するだけで
イルの心は締め付けられていく
しかしその直後
隣のクラスの女子A
ねぇ、トイレ使いたいんだけど
女子生徒A
あ、えっと
女子生徒B
穂波ちゃん……
坂井穂波
なに!?
坂井穂波
見張ってろって言ったじゃん!
穂波が入り口の方に気を取られた一瞬の隙をついて
イルはトイレから逃げ出した
高尾雄大
逃げた!!
隣のクラスの女子A
やだ!何で男子がいるの!?
坂井穂波
もう出ていくから!
坂井穂波
わざわざチクんないでよね!
隣のクラスの女子A
ちょっと!!
階段を駆け降り
渾身の力を振り絞って走った
靴を履き替える余裕なんてないほどに
ただただ必死で逃げた
浜松イル
(もうやだ!)
浜松イル
(もう無理!!)
だんだんと駅に近づいていく
その時だった
松崎陸
浜松!?
浜松イル
ま……
浜松イル
松崎君……
陸がイルの腕を掴んだ