白いカーテン越しに差し込む 午後の光が、ゆっくりと揺れていた。 志歩が倒れてから二週間。 病名が正式に告げられた――「悪性リンパ腫」。 雫は病室の椅子に座り、妹の寝顔を見つめていた。 心電図の音が静かに響く。 その音に合わせて、雫は自分の呼吸を整える。 泣くことも怒ることもできず、 ただ現実を受け入れるしかなかった。
モアモアハウス-レッスン室-
花里みのり
日野森雫
でも、今日はちょっと、話したいことがあって....
愛莉と遥も真剣な顔でうなずく。 雫は少し俯き、手をぎゅっと握りしめた。
日野森雫
空気が止まった。 みのりの瞳が揺れ、愛莉が息をのむ。 遥はすぐに口を開けず、ただ雫を見つめた。
日野森雫
でも……もう、隠せない。
ステージでは笑ってても、家に帰ると、泣きそうになるの。
みのりは静かに立ち上がり、雫の肩に手を置いた。
花里みのり
桐谷遥
桃井愛莉
雫はその言葉に、堪えていた涙をこぼした。
日野森雫
日野森雫
「いつかしぃちゃんとまた音楽を一一」
その願いが、かすかな希望となって胸に残った。
室のドアが静かに開いた。 白い光の中で、志歩はベッドに寄りかかりながら本を読んでいた。 髪は少し短くなり、頬もやや痩せて見える。 けれど、目の奥の光はまだ消えていなかった。
日野森雫
雫の声に、志歩は顔を上げる。 そして、その後ろにいる三人を見て少し驚いた。
日野森志歩
それにみのりに桐谷さん、桃井先輩こんにちは
花里みのり
雫ちゃんから聞いて......心配で来
ちゃった。
桃井愛莉
桐谷遥
でも、どうしても顔を見たくて
志歩は小さく笑う。
日野森志歩
少しだるいけど、元気だよ。
病院のご飯は……味気ないけどね
その言葉に、みのりがふっと笑った。 雫は少しだけ安心したように息をつく。
日野森雫
“また一緒に音を聴ける日を待ってる”って。
志歩は目を伏せ、布団の上で手を握りしめた。
日野森志歩
でも、私……もう、バンドできるのかな。
沈黙が落ちる。 そのとき、遥が静かに口を開いた。
桐谷遥
私たちも、今もステージでそう感じてる。
その言葉に、志歩の瞳が少し揺れた。 やがて、かすかに笑みが戻る。
日野森志歩
まだ、終わってないんだね。
窓の外では、春の光がカーテンを透かして揺れていた。 その温かさの中で、少しだけ 希望が息を吹き返していくようだった。
weekendGarage
夕暮れのオレンジ色が窓ガラスを染めていた。 「weekendGarage」の店内には、いつになく静かな空気が流れている。 テーブルの中央にはLeo/need、 MORE MORE JUMP、Vivid BAD SQUAD、ワンダショ、25時、ナイトコードでーー すべての"セカイ"の仲間たちが顔をそろえていた。
白石杏
天馬司
草薙寧々
て。
鳳えむ
笑いがほんの少しだけ起きたあと、雫が静かに立ち上がった。 その笑みはいつも通り穏やかだったけれど、声にはわずかな震えがあった。
日野森雫
小豆沢こはね
一歌は小さく息をのみ、手を握りしめる。
日野森雫
一瞬で店内の空気が止まった。 彰人の顔が強張り、司は唇を噛んだ
暁山瑞希
天馬司
冬弥は深く息をつき、ゆっくりと頷く。
青柳冬弥
ですが、その分、自分を追い詰めやすいと思います
天馬司
誰よりも努力して、誰にも弱みを見せないタイプだな。
類はテーブルの端で手を組み、目を閉じる。
神代類
奏がぽつりとつぶやく。
宵崎奏
でも、日野森さんには、それでも届く"心の音”があるはず。
その言葉に、一歌が頷いた。
星乃一歌
だから、私たちみんなで"その音"を絶やさないようにしたい。
誰も反対しなかった。 違うセカイのメンバーたちが、 それぞれのやり方で志歩を想い、静かに決意を交わす。
白石杏
白石杏
日野森さんのための"音”を。
テーブルの上に、湯気の立つカップが一つ。 その温もりが、みんなの想いをひとつに溶かしていった。






