【結論】 ~ホームセンター以外のイオンはイオンじゃない~
___いつまでも現実逃避は出来ない。 俺も観念して期末テストの勉強をすることにした。
「テニスの王●様」を頑張って無視して理科の教科書を開いてみたけど………イオン式が全く分からない…
なんでプラスとマイナスが付いてるんだろう…… …………そもそもイオンってホームセンターじゃん
__そんな感じで昨日の夜は思考が宇宙空間をさ迷ったので、絶対に理系コースには進まない、と決意を固くしベッドに入った。
全然自覚無いんだけど、朝起きたら枕元に「テニスの王●様」が数冊散乱していた。 俺ハ何モ知ラナイ。
翌日、つまり今日。昼休みに柚月から「ホームセンターじゃないイオンの いろは」を学びようやく俺の思考は宇宙空間を脱出した。
柚月はついでに「イオン式は基本暗記だよ」の言葉と共に理科のノートも持たせてくれた。
俺は塾の待ち合いロビーで、柚月の所属する「蒼陽高校対策コース」の授業が終わるのを待ちながら理科のノートを眺めていた。
……こんなの全然ホームセンターじゃない。俺は絶対に理系コースには進まない。
俺が再び決意を固くしていると、馬鹿にしたような声が降ってきた。
溝口 圭佑
とりあえずイオン式を見たくないので声のした方を見ると、思いっきり馬鹿にしたような笑みを浮かべた先輩が立っていた。
溝口 圭佑
山崎 孝太
山崎 孝太
溝口 圭佑
___「蒼陽高校対策コース」の教室から喧騒と椅子を引く音が聞こえて来た。
授業が終わったらしく、教室から蒼陽高校を受験する生徒達が ぞろぞろと出て来る。
その中から柚月も出て来た。 俺に気づくとリュックを背負い直して小走りで こっちに来る。
鳴沢 柚月
柚月は にこやかな笑みを浮かべている先輩(仮の姿)に気づくと、視線で「誰?」と聞いて来た。
山崎 孝太
語尾が変なことになったのは、先輩が踵(かかと)で俺の足を思いっきり踏んだからだ。
溝口 圭佑
溝口 圭佑
鳴沢 柚月
溝口 圭佑
柚月が小さく頭を下げた。 にこやかに受験のアドバイスをする先輩。
そこには素敵な先輩後輩関係があった。 足をおさえてる俺を除いて。
とりあえず柚月が悪い男の人に唆されないようにしないといけない。
山崎 孝太
これは嘘じゃない。 今日は澪さんと柚月の彼女さんと柚月と夜ご飯を食べる約束をしている。
溝口 圭佑
先輩は仮の姿のまま俺を手招くと そっと耳打ちした。
溝口 圭佑
山崎 孝太
溝口 圭佑
俺と柚月が玄関から外に出ると先輩もついて来たので質問したら見事な二重人格ぶりを発揮してくれた。
塾の前には既に澪さんと柚月の彼女さんが待っていた。
山川 のぞみ
相原 澪
憤慨している彼女さんと苦笑している澪さんは同時に俺の後ろにいる先輩に気づき、訝しげに目を瞬かせた。
山崎 孝太
溝口 圭佑
溝口 圭佑
わざわざ「偶然」を強調して言ったのに先輩は仮の姿で聞き流し、息を吐くように出鱈目を並べ立てた。
人の良さそうな笑みを浮かべているけど、先輩の視線は澪さんの頭から爪先までを撫でていた。
先輩が俺たちと一緒に玄関を出て(帰るのは本当なんだろうけど)、わざわざ澪さんに挨拶したのは こうやって品定めする為なんだと思う。
仮の姿とは言えその扮装は完璧で、先輩が澪さんに対してどのような評価をつけたのか窺い知ることは出来ない。
溝口 圭佑
相原 澪
澪さんはしばらく先輩を見つめていたけど
ゆっくりと桜色の唇を笑みの形に変えて よく通る声で言った。
相原 澪
____一瞬だけど確かに 先輩の顔がひきつった。
先輩の言葉が本心じゃないことを、澪さんはちゃんと見抜いていた。 __こういう所が本当に魅力的だ。
溝口 圭佑
それでも先輩は笑みを浮かべて仮の姿を貫き通し、会釈して踵を返して行った。
山川 のぞみ
鳴沢 柚月
山川 のぞみ
相原 澪
街頭彩る夜の街を4人が楽しそうに歩いている。
圭佑は離れた所から それを見ていた。
視線は孝太と___一目で自分の本性を見抜いた澪に注がれている。
圭佑の顔に もう笑みは浮かんでいない。
澪の姿が見えなくなるまでその場に立ち続けていた圭佑は 小さく舌打ちした。
相原 澪
山川 のぞみ
山川 のぞみ
相原 澪
相原 澪
相原 澪
相原 澪
山川 のぞみ
相原 澪
山川 のぞみ
相原 澪
大学からの帰りの電車。 澪は怨嗟の言葉を並べながら、私は今日の柚月君との電話に思いを馳せながら満員電車に揺られていた。
6限まで講義があるこの曜日は私は1人で帰ることが多いんだけど、鬼宣告を受けた澪が勉強しながら待ってくれていたので2人で帰っている。
今朝は少し雨が降ったので電車を利用する人はいつもより多く、通勤通学ラッシュの電車内は押しくら饅頭状態になっていた。
「ドア付近に固まらず中までお進みください」と駅員さんが声を張り上げているけど、中まで進める状態じゃない。
身を寄せ合って愚痴を聞いて のろけを聞いて貰っていると、補助席にもたれているサラリーマン風の男が何度目かの舌打ちをした。
……このサラリーマン、さっきからずっとイライラしている。
しきりに腕時計を見ては舌打ちし、カーブで近くにいる人が体勢を崩しては舌打ちしている。 ……誰のせいでもないと思うけどなぁ。
男の物だと思われる黒いリュックサックは通路側にはみ出して置かれていた。 これがかなり場所を取り、通行の妨げになっていた。
___電車は私たちが降りる1つ前の駅に到着した。しばらく他の電車の待ち合わせで停車することになっている。
蒼陽高校の制服を来た男子生徒が「すみません」を繰り出しながらドアに近づく。
その時、男子生徒の足が通路側にはみ出して置かれていたリュックサックに当たった。
よく閉まってなかったリュックサックが倒れて中身が少し散乱した。
溝口 圭佑
山川 のぞみ
相原 澪
男子生徒は昨日塾の前で出会った、孝太君の部活の先輩だった。
ちゃんと謝ったにも関わらず(溝口君に非は無いと思うけど)、サラリーマンは一際大きく舌打ちした。
サラリーマンは「ちゃんと周り見ろ」だの「これだから最近の若い奴は」だのネチネチと罵り始めた。
理不尽すぎる いちゃもんに溝口君も困惑している様子だ。
その様子が更に向こうの火に油を注いだらしい。 サラリーマンは腕を組むと馬鹿にしたように鼻を鳴らした。
溝口君の目に、冷たくて鋭いナイフのような光が走った。 車内は一気に一触即発ムードになる。
__澪がため息を吐いて、足元に転がっている定期入れを拾った。
相原 澪
車内にいる人が全員澪に顔を向けた。 溝口君も澪を見て目を見張った。
相原 澪
したり顔で嘆く素振りを見せたサラリーマンの顔が一気に赤くなり、頭頂部を手で覆った。 ……まぁあれだけ神経質になってたらストレス溜まるよね…
澪は散乱した中身を手早く集めるとサラリーマンに差し出した。
相原 澪
サラリーマンは澪から差し出しされた物をひったくると車内を早足で あとにした。
澪はそのままドア付近の人たちにも声をかける。
相原 澪
人1人通れそうなスペースがドアまで出来る。 溝口君は口を半開きにしたまま澪を見ていた。
澪はそんな溝口君に にっこりと微笑みかける。
相原 澪
___溝口君がすごい勢いで顔を逸らした。無言で会釈すると こちらも早足で電車を出て行った………
……ああ……………あーーー
大波乱ーっっっ!
ドアが閉まり電車は再び動き出した。
山川 のぞみ
相原 澪
山川 のぞみ
山川 のぞみ
山川 のぞみ
鳴沢 柚月
山川 のぞみ
鳴沢 柚月
山川 のぞみ
山川 のぞみ
山川 のぞみ
鳴沢 柚月
翌日、先輩が指導に来てから4日目。
部活を終えて さっさと部室をあとにすると(澪さんのラインが無かった)、なぜか先輩が校門で待ち伏せしていた。
優しそーで爽やかな仮の姿の先輩と校門をくぐり素敵な先輩後輩劇場を展開しながら坂道を下り
最初の曲がり角に差し掛かるとやっと先輩が仮面を剥ぎ取った。
溝口 圭佑
山崎 孝太
溝口 圭佑
溝口 圭佑
溝口 圭佑
溝口 圭佑
山崎 孝太
溝口 圭佑
山崎 孝太
溝口 圭佑
先輩が俺の肩に手を置いた。 完全に仮面を剥ぎ取った、あの馬鹿にしたような顔がすぐ近くに来た。
溝口 圭佑
溝口 圭佑
溝口 圭佑
山崎 孝太
溝口 圭佑
溝口 圭佑
先輩は俺の肩から手を放すと1人でさっさと歩いて行った。
先輩の姿が見えなくなるまで俺はその場に立ち尽くしていた。
とりあえず自分の理解力が追いつかない。 ___しばし先輩の言ったことを整理して
ようやく現状を把握しても 俺はしばらくその場に立ち尽くしていた。
山崎 孝太
コメント
7件
澪さんかっこよ…! え、めちゃくちゃかっこよいですね…!!! あれは女の私まで惚れます かっこよすぎます でも知ってる 澪さんは孝太くんに一途だから、絶対に溝口さんには靡かないことを… というかまだ溝口さん認めてないからな(おい) 裏表直して素直になれ()
なんかすごい展開ですね... 溝口さんは惚れっぽいんですかね... て言うか澪さん人助け(?)するのすっごい上手ですね!!!!!偶然あんなもの見つけてスマートに溝口さんを助けられる澪さん最高ですね!!!!! 溝口さんの気持ち、ちょっと分かっちゃうような...(断然孝太君の方がいいですが、) 次も楽しみにしてます✨✨
読んでくださりありがとうございました❗ 柚月「今週は作者の誕生日らしいです。見た目小学生だけど作者ももう20歳…。 これからも面白いと思って貰えるようなお話を書いていきたいです、って言ってました。あとTwitterでもふざけるって。 ちなみに僕の誕生日は8月26日らしいです」