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秋風が冷たく吹き付ける学園の校庭で、 ラントはぽっつんとひとり立っていた。 彼の唇は、かつて響いていたあの声を 失っていた。
寺刃ジンペイ
ジンペイは声をかけるが、 返ってくるのは静かな沈黙。 普段はテキパキと指示をし、 周りを支えるラントが、今は声を失い、 世界の中に閉じこもってしまったように見えた。
妖怪絡みの不可解な事件で ラントは声を奪われてしまった。 誰もがそれを不思議がり、距離を置いた。 声がいなくなるということは、 ラントの存在が薄れていくことと同じだった。
しかし、ジンペイだけは違った。 彼は筆談帳を手に取り、 ジェスチャーを交えながら、 必死にラントの心を掴もうとしていた。
寺刃ジンペイ
そう言って何度も傍に寄り添っていた。 ただそれを言うとラントは 呆れたような表情をしていた。
ラントの瞳に、わずかに涙が光る。 それは失った声への哀しみ、孤独、 そして助けて欲しいという無言の叫びだった。
寺刃ジンペイ
ジンペイは拳を強く握りしめて誓った。
寺刃ジンペイ
声なき世界で、ふたりの絆は静かに、 しかし確かに燃え続けていた。
𝙉𝙚𝙭𝙩 ︎ ⇝