優真さんに拉致されてから約三ヶ月
あすみさんは優真さんの愛を真に受け止め
とても穏やかな日々を過ごすことができていた
ここにはあすみさんを傷つける母や兄もいない
あすみさんが悪夢にうなされ真夜中に目を覚ますと
優真さんはすぐに気づいて起きてくれて
三村優真
三村優真
優しく抱き締めて頭を撫でてくれる
だから安心して眠ることができた
時には優真さんのために料理をしたり
優真さんに求められれば必ずそれに応じていた
全身で感じる優真さんの温もり
三村優真
優しい声で囁かれるといつも以上にドキドキして
優真さんへの想いが溢れてくる
井川あすみ
井川あすみ
だがそんな願いも虚しく
拉致されてから三ヶ月後
二人は離ればなれになってしまう
2010年8月13日(金)
出掛けたいと言ったのはあすみさんの方だった
「今日は何が食べたい?」
「買い物に行きたいな」
優真さんの手当てのおかげですっかり傷の癒えたあすみさんは
その頃には率先して家事をするようになっていて
その日も夕飯の買い出しに行きたいと優真さんを誘った
優真さんのマンションには大きなテレビがあったのだが
二人の時間を大切にしたいと言う優真さんの想いから
テレビを見ることは殆どなく
まさか自分に捜索願いが出されているとは思いもしなかった
行方不明のあすみさんのニュースが全国で報道され
あすみさんを見つけた近隣住民の通報で警察官が駆けつけた
いきなり声をかけられ
一気に不安と恐怖が押し寄せる
優真さんの腕にしがみつくも
駆けつけた応援の警察官によって引き離されてしまった
その時、二人の手は手錠で繋がれていた
それだけの理由であすみさんが拘束されていると思い込み
優真さんを犯人扱いする警察官
違うと反論したくても声が出ない
筆談ボードはマンションに置いたまま
手話もできないあすみさんには為す術もなく
三村優真
三村優真
優真さんは必死に抵抗をして彼女に近づこうとしたが
駆けつけた警察官に取り押さえられてしまった
その時
井川あすみ
これまでどんなに出そうとしても出なかった
井川あすみ
井川あすみ
微かな声が優真さんの鼓膜を揺らす
三村優真
突然、聞こえたあすみさんの声
井川あすみ
優真さんへの想いが言葉となって溢れていく
井川あすみ
三村優真
しかし優真さんは連行されてしまった
あすみさんはもう一台のパトカーに乗せられ
保護と言う形で警察署へ
井川あすみ
井川あすみ
警察署で何度もそう訴えたが
長期間、監禁されたことによる錯乱と判断されてしまった
警察からの連絡で駆けつけた母、かすみさんは
井川かすみ
涙ぐむ仕草をして見せたが
家に戻った直後に態度が一変し
バチンッ!!
井川あすみ
あすみさんの頬を思いっきり叩いた
井川かすみ
井川かすみ
井川かすみ
井川かすみ
優真さんの治療によって綺麗になった腕を見て
鬼の形相であすみさんを見下ろしていた
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