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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

■■■■■■

…………

■■■■■■

僕のことは、誰にも語るな

なぜ、彼は突然通話を止めたのかというと。

トロツキー

逃げろグルッペ――

突然、横に居たトロツキーの姿が鎌を残して掻き消える。

ドガアァァァァァァァン!!

グルッペン

ぇ───

何が起こったのか理解する事は叶わなかった。

それを気にするよりも―――

目の前にそびえるそれに、目を釘付けにされていたので。

嗤う翁面

ケッケッケッケッ

グルッペン

ぁ……

笑 ている

嗤っ  テいる

ゲヒゲヒと

キ ヒキヒ と ォ?

わ ラ  ア ッ  て  ィ  る ウ ?

グルッペン

あ、アぁ、

グルッペン

ヒヒヒヒヒヒ、ヒひヒヒひ、ひ 

面白くもないのに壊れたスピーカーのような笑い声が口から垂れ流される

ひりつくようなひずみ声。おれの声はこんな地の底から響くようなものだったっけ。

ちがう ちがう ちがう

ちがうちがうちがうちがうそうだちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがう!!!!

俺の声はこんなのではなかった!!!!!

こんな。この世のものでないようなおどろおどろしい声ではなかったはずだ!!!!!!

本当に?

嗤う翁面

キキキキキキキキキキ

黒板を引っかくような耳に痛い声だった

口からは腐りきった肉のように酸っぱくて生ぬるいにおいがした

いやらしく細められた眼窩は蛆のように気味悪く蠢いて

長いひげはヒルの様に俺の首に突き刺さる

グルッペン

あ、ああ、あああああああ……

ああ、俺の熱が、命が、意思が

吸い取られて、いく…

嗤う翁面

オン ジリチエイ ソワカ

目の前が、真っ暗になった。

グルッペン

……ここは

気づけばどこかの林の中に置いていかれていた。

体は麻縄で簀巻きにされており、身動きが取れない。

むりやり縛ったようで、折れた腕が酷く痛む。

グルッペン

く…トロツキーはいなさそうやな。

どうやらトロツキーは居ないらしい。あそこを放置されたのだろうか

あいつは生霊だから死ぬ事はないだろうが……

グルッペン

無事だとええんやけど…

それにしても……熱いわ。外も、体も。

日の落ちた森の外に茜色が見える。そこからの熱気であたまが茹だってくらくらする。

そういえば、ここに来てから一切何も口にしていない。食物どころか水辺すら見かけていないが……

あれほどの猛暑を数時間探索し、それから日が暮れるほど時間が経っている。となると

グルッペン

脱水症状になっていてもおかしくないな…

グルッペン

……あーなんかそうおもったら体がどっと重くなった気がしますねぇ……

グルッペン

というか、いい年した現代社会人がどうしてこんなわけ分からん目に合わなきゃならないといかんのや…

グルッペン

クソ、知らん間に神様に無礼でもしたんか?そもそも神なんざ信じちゃいないってのに。

グルッペン

あれは所詮、弱者が精神的安定を図るために産み出したに過ぎない虚像の筈やぞ……

……そもそもそんなことを言い出したらトロツキーの生霊というのにも疑問が湧くわけだが。

グルッペン

…何故、俺は自分を生霊とかのたまう奴をあんな簡単に信じたんや?

グルッペン

助けられたとはいえ、俺はアイツが生霊だという言葉を何も疑わずに信じた

グルッペン

まるで、それが何らおかしくない事実だとでもいうように。

グルッペン

俺としたことが、生霊とかいう信じがたい存在を思考停止して鵜呑みにした。…なにしとんねん…

グルッペン

……あの時から既に、この奇妙な世界の影響でも受けていたってのか?

どんなに疲れていても、考えることだけはやめなかったはずなのに。

何故?

グルッペン

グルッペン

足音が近づいてくる……

グルッペン

…おまえは!?

その女は、かつてトロツキーが切り捨てた筈の能面の女だった。

能面の女

なんとしぶとい。翁の血吸いをうけて尚、気を保つか

グルッペン

お前…話せたのか

能面の女

……強き人の子よ。

能面の女は俺の傍でかがんで、縄を解く。

能面の女

立て。おまえの番である。

グルッペン

……分かった

朗々と読み上げるように言われる。能面という皮を被るものらしく無機質だった。

この後をなんとなく察しながら女の後ろを、俺はついていく。

グルッペン

……トロツキーは…俺の同行者はどうなったんだ?

能面の女

なぜそれを私がお前に教えねばならぬ

グルッペン

はは、どうせこの後どこかの神様の供物にでもされるんだろう?

グルッペン

お前たちにとっては名誉あることなのかもしれないが、俺にとってはとてつもなく恐ろしいことでね

グルッペン

勿論、恐ろしいというのは、未練を沢山残して死ぬことだとも

グルッペン

だからせめて、残さないで済むものは残さずに死にたい

グルッペン

それに冥土の土産くらい、持たせてくれてもいいじゃないか

グルッペン

キリスト教の神々に比べて圧倒的に寛大な日本の神々であれば、それくらいの慈悲は見せてくれると思うんだがなァ

能面の女

……

能面の女

あのまざりものは、小屋に置いていった

グルッペン

(よかった、捕まってはいないようだな)

グルッペン

まざりもの?どういうことだ。アレは単なる生霊じゃなかったのか?

能面の女

ただの生霊が我らが主尊の治める領域に入れるわけがなかろう

能面の女

アレは数多の怨嗟の声が篭った残骸を以ってこの領域の楔としているのだ

グルッペン

怨嗟の…残骸?

能面の女

…世にはこことはまた違う、数多の異界がある

能面の女

その異界の一つの歴史には、かつて一つの國を滅ぼした死神の存在があった

能面の女

その國の生き残りの一人の名を『繧ク繧ァ繝ゥ繝ォ繝?ぅ繝サ繝槭じ繧、繝ウ繧エ』といった

グルッペン

…待ってくれ。よく、聞こえなかった

能面の女

異なる世界の言葉を理解できないのは当然のことである。

能面の女

長く話すつもりはない故、簡潔に話してやろう。

能面の女

その男は死神に復讐するために、古代兵器を模したものを作り出し、世界を滅ぼそうとした。

能面の女

しかし、その企みは死神により潰され、海の藻屑へと還ったのだ

グルッペン

随分壮大な話じゃないか

能面の女

母なる海に還る前に、その男の復讐心は決着がついた。その魂はようやっと安らぎを得た。

能面の女

しかし男は人生のほとんどをその復讐に費やした

能面の女

故にその恨み辛みは全て救われはしなかった。遺された怨嗟は、海の底よりも深く墜ちていったのだ。

能面の女

それは、何の因果かあの生霊の手元に流れ着いた。無理やりこの領域に入ろうとして消滅しかかっていた時にな

能面の女

そして理屈や常識の通じぬその憎悪の残骸を、どうやってかあの生霊は掬い上げた。

能面の女

そして残骸は、礼として生霊と同化し、存在するための力を与えたのだ。

能面の女

その証拠にあの生霊の片目はその男の緑目と同一であるし、男の遺品も持っている。

能面の女

……これで満足したか?

グルッペン

……今ひとつと言ったところか

能面の女

強欲め

グルッペン

人間は何よりも強欲な生き物だぞ?

能面の女

…フン。他には何が聞きたいのだ

グルッペン

トロツキーの正体だ。あれは、誰の祈りから出来たんだ?

能面の女

ウツシヨのことなど知らぬわ

グルッペン

成程。ではお前のいう主尊は誰の事だ?

能面の女

もう間もなく分かることである。答える必要性は見い出せぬ。

グルッペン

では、お前たち能面たちはなんだ?何故あの時トロツキーが殺した筈のお前が生きている?

能面の女

主尊の使いである。小僧は洞窟の守り人であり、翁は樹海の守り人である。我は主尊の目である。人の身は、幾多の分身の一つである。

グルッペン

…ははあ、つまりダミーだったのか。

グルッペン

なら、質問はこれで最後だ

グルッペン

何故俺を選んだ?

能面の女

それは神のみぞ知ることである

能面の女

…さあついたぞ人の子。我らが主尊の顔、とくと拝むが良い

ああ、来てしまったのか

…そろそろ決意を固めねばなるまい

視界が唐突に開ける。

篝火の道の先に、それは居た。

グルッペン

(鬼の、能面)

色褪せた肌はとろ火の光をてらてらと反射し、黒ずんだ黄金の眼球はじろじろと俺を見ている。

天を穿つような立派な対の角は、目の前の存在がどれほどの恐ろしい存在なのかを知らしめるようだ

血塗られたように赤い口内に見え隠れする、てらてらと光る牙が俺の姿を写し出す。

グルッペン

(…え?)

グルッペン

(俺の姿は、黒髪黒目のはずで…

グルッペン

何故、こんな目が覚めるような金髪に、燃えるような赤い瞳が映っているんだ?)

能面の女

おい、人の子

グルッペン

女は巨大な能面の側に居た。

能面の女

人よ 矮小でしぶとき人よ

能面の女

おそれうやまい

能面の女

そして平伏せよ

能面の女

『羅刹天様』の御前なるぞ

グルッペン

…!

御身に甲冑 右手に刀

其は白獅子に乗り 西南守護せし十二天の御柱に『非ず』

羅刹天とは名ばかりの 人を惑わし食らう悪鬼

地を駆けて空を飛び 闇夜に紛れて暴虐尽くす鬼の夜叉

悪鬼羅刹どもの狂宴が、今、始まろうとしていた。

to be continue…

集団指導者、異界を彷徨う

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